
漆黒の王子
藍原組の組員が次々と原因不明の死を遂げている。皆、眠ったように死んでいく。
組長代理の紺野と相方の高遠が原因を追究する。
また、下界では、一人の女性が記憶喪失で傷だらけの状態で助けられる。
彼女は一切の記憶を失っていた。助けてくれた<王子>と呼ばれている少年に名前を尋ねられ「ガネーシャ」と名乗った。
読み終えるのにとっても時間がかかりました。
この作品を読んでいる間に何冊読み終わった事か。
上の世界は藍原組の組員の動向。眠ったように死んでいく組員の死因について探る。
それは、暴力団に対する挑戦だった。人が死ぬ度に、見知らぬ人物からメールが届く。
眠ったら死んでしまうかもしれないと言う恐怖と戦うのは恐ろしいだろうな。
段々、組員が人ではなくなってしまうような、怖くなりました。
その中でも水樹は冷静だったのかな。友人にも助けられて、一応良かったのかなと。
そして下の世界。
記憶を失ったガネーシャと<王子><時計師><画家><音楽家><坑夫>など上の世界から拒絶された人たち。
怖い人たちかと思ったけど、最後は暖かさを感じました。
どの人も心に深い傷を抱えていて、辛いという言葉では言い表せないくらい、大変な人生だったんだろうなと思う。
でも、人間の暖かさはまだ持っていて。最後はちょっと感動でした。
その上と下の世界が徐々に一つになっていきます。
紺野と高遠、ガネーシャ。
敵同士だけど、子どものころに受けた傷は、きっと同じもので誰よりも近い存在だったのかもしれない。
最後は本当に救われなかったなぁ…。
切なくて暗いまま終わってしまいましたねぇ。
でも、あの暗号にはびっくりでした。
初野さん、凄いです。
〈角川書店 2004.11〉H21.3.17読了