田村はまだか
田村はまだか
「田村はまだか」バー「チャオ!」には小学校の同窓会で久しぶりに再会した5人が三次会を開いていた。彼らは同級生が来るのをずっと待っている。田村久志という男だ。
5人は小学生の頃を思い出す。田村はいつもお下がりのジャージを着ていた。遠足のお弁当はおにぎりだけ。孤高の小学生だった田村。しかし、いじめられているわけではなかった。クラスには問題児がいた。中村理香という女子生徒だ。彼女が「何もかもつまらない」といった時、田村だけが中村の言葉を受け止める。
「パンダ全速力」池内暁は入社当初、二瓶という人が上司となる。張り切って仕事を行おうとする池内は上司のことが気になる。昔ながらの家の長男だが「特別隠居」したと二瓶はいう。
「グッナイ・ベイビー」加持千夏は男子校の養護教員をしている。千夏は3年前に卒業した男子生徒のことが忘れられずにいる。勝手にキッドと呼んでいた、島村裕樹のことを。
「きみとぼくとかれの」坪田隼雄は女の経験がない。生保で営業所長をしているため、女性の扱いは慣れているのに。である。ある日、ウェブサーフィンをしていて目に止まった「ブルースター」という少女のブログに興味を持つ。
「ミドリ同盟」「チャオ!」のマスターの花輪春彦はかつて証券会社広報部の課長だった。しかし、1度の過ちが、退職と離婚を招く。
伊吹翔子は酔いつぶれて眠っていた。彼女は「いろいろ」あったからと、同級生はそっとしておいている。1年前に夫と離婚した。原因は永田との不倫だった。
「チャオ!」の常連客である永田一太。偶然病院で再会した伊吹と深い仲になる。親と同居する事を許してくれた妻は、不倫に気付いていたのだろうか。
「話は明日にしてくれないか」田村が事故に遭い、生死を彷徨っている。田村を待っていた同級生は、田村と再会すれば、何かが変わるような気がしていた。
田村は死なない。きっと、戻ってくる。「田村はまだか」

前に1度借りたのですが、読めずに返却してしまい、再挑戦。ようやく読めました。
一人ひとりが40歳を迎えて抱える想い。そして、田村に懸ける想い。
何十年も会っていなくても、こうやって覚えていて、待っていてくれる人がいるのって、素敵だね。
でも、読んでいくにつれて田村が何故来ないのか分かった時、どうして田村がこんな酷い目に遭わなきゃいけないのか分からなかった。
誰よりも一生懸命に、堅実に生きていたはずなのに。それが本当に読んでいて辛かった。
怪我の状況も生々しくて怖かったし。
でも、数ヶ月が経ってようやく「チャオ!」でみんなが集まる事が出来た時は、ほっとしました。
私も混ざりたいと思いました^^
田村の小学生の時に言った言葉「どうせ死ぬから、今生きているんじゃないか」はずしっときました。
きっと、理香のようにたくさんのことを抱えて生きていたから、言えた言葉なんだろうなと思う。
そして個人的に。北海道小樽市出身の方なので、地理が本当にわかりやすかった。
すすきの、藻岩山、地下鉄南北線。
藻岩山には私も小学校の時登山遠足で登ったし、南北線は毎日使ってるし。
しかも手稲高校出身なんだ。うわ〜。なじみがありすぎ。
なんだか不思議な感じ。

〈光文社 2008.2〉H21.1.20読了