
僕たちのミシシッピ・リバー―季節風*夏
「親知らず」
実家からの帰り道、親知らずが痛み始めた。こんなに痛みが出るのは久しぶりだった。息子はさっさと抜けばいいのにと簡単に言うが、歯医者には行けない、小さな頃のトラウマがあった。
「あじさい、揺れて」
10歳上の兄、晋哉の妻だった有美が再婚する事になった。兄が死んでから、久しぶりに実家にやってくる。もしかしたら会うのが最後になるかもしれない孫のため、ご馳走をつくり、おめかしをして待っていた。
「その次の雨の日のために」
教師として働くノブさんは学校を終えたあとにボランティア活動をしている。「虹の子」という不登校の生徒を受け入れる施設だ。今は亮平という男の子に手を焼いている。そろそろ引退するかと考えていた。
「ささのは さらさら」
毎年、七夕になると家族で短冊に願い事を書いていた。しかし、父は病気で死んでしまい、その行事もなくなってしまった。3年後、母親は再婚をするといい、近藤さんという男性と会うことになった。
「風鈴」
電車や車の音がうるさいがその分家賃も安い通称「新婚さんハイツ」に越してきた2人。バブルの時期にやってきた大学卒業間もない2人は、いつか結婚するつもりで同棲を始めたのだが…
「僕たちのミシシッピ・リバー」
とても仲のいいトオルとカズヤは海へ行く事になった。2人の好きな冒険を最後にしようとしていたのだ。トオルは明日、遠くへ引っ越す事が決まっていた。
「魔法使いの絵の具」
かつての幼馴染が地元に帰って来ていた。東大を卒業し、東京でバリバリと働いているはずだった。しかし、会ってみると人を見下したような話ばかり。昔はこんな人ではなかったのに…
「終わりの始まりの前に」
高校生活最後の夏。地区予選の1回戦は甲子園の常連校。勝てるはずはなかったのだが、9回、4点差で打順が回ってきた。自分が打てば展開はまたわからない。最後の1球。自分はストライクだと思っていたのに、ボールだった。
「金魚」
かつての幼馴染の三十三回忌があった。ヤマケンは川で溺れて死んだ。その原因は縁日でやった金魚すくい。ヤマケンは川に流した金魚のことが気になっていたのだ。
「べっぴんさん」
おばあちゃんが93歳で亡くなった。大往生だ。お祖母ちゃんの家へ行き、お風呂に入るといつも天花粉を身体にぬり、「ぺっぴんさんになった」と言ってくれた。
「タカシ丸」
雅也の父親は入院しており、身体もどんどん痩せて細くなっていた。誰も言わないが、父がもう助からない事は分かっていた。一時退院が認められ、雅也は父と夏休みの宿題で船を造ることになった。
「虹色メガネ」
夏休み最終日。なっちゃんはめがねを買った。なっちゃんはクラスでただ一人メガネをかけている川野さんにへんなあだ名をつけた。だから、メガネをつけて明日から学校へ行くのがイヤだった。
最近重松さんの作品をよく読んでいます。家族の形がリアルであったかくて、最近また重松さんの作品が好きになってきています。
にしても今回は「死」が多かったです。
夏がテーマなのは分かりますが、切ない話ばかりでした。
どの作品も良かったな。
大きな展開はなくって、どんでん返しもないんだけど、だからリアルで素直に読めるのかなと思います。
わかる〜と思ったのは最後の「虹色メガネ」
私も中学校2年生のときに初めてメガネをかけたのですが、一生これがないと生きていけないのかと思うと煩わしさがありましたね。変なあだなつけられたらどうしようとも思いました。
まぁ、今はレーシックをやって裸眼で過ごしているので、一生じゃなくなっちゃいましたが。
〈文芸春秋 2008.6〉H20.10.11読了
普段本を読んで泣くことはあまりないのですが「べっぴんさん」のおばあちゃんのあたたかい思いやりに涙が出ました。