おそろし 三島屋変調百物語事始

何が白で、何が黒か。娘の心を溶かす不思議な江戸の「百物語」。
17歳のおちかは、川崎宿で旅籠を営む実家で起きたある事件をきっかけに、他人に心を閉ざした。
いまは、江戸・神田三島町に叔父・伊兵衛が構える袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働く日々を過ごしている。
ある日伊兵衛は、いつも碁敵を迎える「黒白の間」におちかを呼ぶと、そこへ訪ねてくる人たちから「変わり百物語」を聞くように言いつけて出かけてしまう。
そして彼らの不思議な話は、おちかの心を少しずつ、溶かし始めていく・・・。
おちかを襲った事件とは? 連作長編時代小説。

王様のブランチでも紹介されていましたね。
怖い作品なのかと身構えていましたが、そうでもなかったです。
曼殊紗華の話、人を惹きよせる屋敷の話、美しい姉弟の話、そして、おちかの過去。
どの話もぞくっとする話です。そして、誰かが不幸になっている。
おちかも辛く悲しい過去を背負って生きている。
読み終えた後に、何ともやりきれない思いに囚われる。
でも、最後の話で、その不可思議な出来事に関わり命を落とした人たちが報われたような気がして安心しました。
ただ、おちかはもやもやした気持ちも残っているんじゃないかなぁと思いました。
それは、生きていく中で、答えを見つけろってことなのかな。
話は深くて引き込まれました。
やっぱり宮部さんは上手いなぁ。

〈角川書店 2008.7〉H20.9.24読了