私の男

オススメ!
腐野花は明日、結婚する。
結婚すれば、今の生活から抜け出せると信じて―――
花は15年前に家族を地震によって亡くし、当時25歳だった腐野淳悟の養女として引き取られた。
8年前に紋別から東京へやってきた。逃げるように。
ずっと離さない、離れない、逃れられない。堕ちていく幸福――
狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。
暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂。

直木賞にノミネートされる前から予約していたのに、今読み終えました^^;
読むととまらないのですが、章ごとに読み終える度にため息をつき、読み終えた後はどっと疲れた感じです。
重かった…2人が抱える大きな闇に飲み込まれるかのようでした。
2008年から、2人の人生の分岐点となる過去へと遡ります。
最初が重くてずしっときて、それから少しずつ軽くなっていくようなイメージでしたね。
淳悟が最初と最後は別人みたい。
だんだん過去になっていくにつれて、淳悟はまだ人間に見えました。
2人の互いに対する愛は、家族愛だとは思います。
それが二人は親に正常な形での愛情を注がれていなかったから、歪んだ形になってしまったのかなと。
互いが子で、互いが親で、慰めあって絡み合って生きて行くのが2人の愛の形なのかな。
いや、でも、言葉で表現するのは難しいです。言葉に出来ないです。
あまりにも凄すぎて、壮絶すぎて・・・。
この作品が受賞するのは納得です。素晴らしいです、桜庭さん。
ちょっと内容がそれますが、
この作品の舞台が北海道だと言う事は知っていたのですが、紋別が舞台だったんですね。
以前「少女七竃と七人の可愛そうな大人」を読んだ時、舞台がもの凄く隔離された町なのに場所が旭川ってことで全然リアリティを感じなかったんですよね。
だから今回もそうだと思っていたのですが。
いや、もの凄くリアルでしたね。
まず拓銀ですよ。北海道拓殖銀行。懐かしい言葉です。拓銀が倒産したときのニュースは今でも覚えてます。97年…かな。
銀行がつぶれるなんて、勤め始めたときは想像もしてなかったんだろうな、皆さん。
それに、花が巻き込まれた地震って北海道南西沖事件だったんだね。
絶対に架空の話だと思っていたから全然気付かなかった。
途中から青苗岬とか奥尻島って名前が出てきて、93年?…ああ〜!!そうだ!って。思いましたよ。
その地震の事も思い出しました。
花の年齢、私と1個違いなんですよね。私は地震の時、小学校3年生でした。
札幌でも震度3で、家の大きな柱にしがみついて揺れに耐えていた思い出が残っています。
奥尻島は津波の高さが20メートルだったといわれていて、本当にたくさんの方が亡くなったんですよね。
ダメですね、あんなに被害が出た地震だったのに。全然頭に浮かんでこないなんて。
かなりのリアルな情景が浮かび上がってきて、本当に現実味を帯びてた作品でしたね、私の中で。

〈文芸春秋 2007.10〉H20.6.26読了