最愛

小児科医の押村悟郎の携帯電話が鳴った。警視庁の刑事からだった。
18年間会っていない姉が、意識不明で救急病院に搬送されたという。
重傷の火傷、頭部にうけた銃創。
しかもそれは、伊吹という男と婚姻届を出した翌日の出来事だった。
姉のアパートで見つけた不審な預金通帳、姿を現さない新婚の夫。
噛み合わない事実、逃げる男と追う男。
「姉さん、あなたはいったい何をしていたんだ…」愛のかたちがここにある―。

切なかった…。本当に切ない。
両親の死亡により、引き裂かれてしまった姉弟。
その引き取られた先で大人に翻弄され、2人の人生が大きく変わってしまった。
もしも2人が一緒に暮らせていたら、違う人生だっただろうと思うと切なくてならない。
姉の千賀子がどう生きてきたのか弟である悟郎は調べていくんだけど、長い間はなれていても、人柄は変わっていなかった。
お姉さんである千賀子は正義感あふれる凄い人だった。
弱いものを助け、強い奴でも立ち向かう。
そして、恋愛は辛い恋を選ぶ。
読んでいて本当に警察に腹が立ったなぁ。
きれいごとばっかりだし、自分の事はかわいいから、警察の内部に関しては甘いし。
悟郎だって、お姉さんと同じように打たれ強くて凄い奴だと思いました。
お姉さんの過去にも、警察に対しても伊吹に対しても、ちゃんと向き合っていたし。
最後は綺麗でした。

〈新潮社 2007.1〉H20.4.27読了