砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

片田舎で13歳の2人の少女が出会った。山田なぎさは父を嵐で亡くし、母と兄との3人暮らし。早く卒業し、社会に出たいと思っているリアリスト。なぎさの通う中学校に、海野藻屑という不思議な少女が転校してくる。
藻屑は自分のことを人魚だと言い張る少し不思議な少女だった。
二人は言葉を交わして、ともに同じ空気を吸い、思いをはせる。
全ては生きるために、生き残っていくために―。
これは、そんな二人の小さな小さな物語。

何て切ない物語なんだろう。
読み終えた後、なんとも切ない感情がこみ上げてきた。
評論家じみた事を言うつもりはないけれど、現代で読むべき作品なんじゃないかなと思う。
大人も。子どもも。
藻屑は嘘ばっかり言う。自分の事を人魚だといい、泡になって消えることができると嘘をつく。
それは、父親がかつて歌手として売れ、お金持ちの娘だから行う一種の遊びのようにみんなが受け止めていた。
でも、そうではなかった。
家がお金持ちだから、父親が有名だから、幸せなんて、何故言えるんだろう。
正直、雅愛は人間のクズだと思う。
藻屑は不思議な少女だったけど、それは愛情を受けて育てられなかったから、人に好かれたくて作り上げた性格なのかもな。
なぎさを睨みつけて「死んじゃえ」っていったのも、本当に愛情表現だったのかもしれないと、読み終えた今だと思える。
藻屑の「こんな人生は全部、嘘だって。嘘だから、平気だって。」という台詞があまりにも痛々しい。
今度こそ、幸せな子どもらしい生活を歩んでいってほしいな。
関係ないが、ヤバイクイズの答えを聞いて「八百屋お七」を思い出しました。違うかな?

〈富士見書房 2004.11
 富士見書房 2007.3〉 H20.3.27読了