
彼は老いず、ただ去りゆくのみ。彼は死なず、ただ別れるのみ。
その寂しさ――あんたにわかるかい?
書き下ろし、700枚! 壮大なスケールで描く命の賛歌。
「主人公は、カイム。永遠の生を生きる――すなわち、死ねない男。物語の舞台はすべて、一千年の旅をしてきたカイムが訪れた「いつか、どこか」の町である。」(本文より)
――『流星ワゴン』重松清、『バガボンド』井上雄彦、『ファイナルファンタジー』坂口博信 3人の絆が生んだ重松文学の新たな試み。
ストーリーをあまり知らず、重松さんの新刊だと思って図書館で予約したのですが、借りて表紙を見てビックリ。
井上雄彦さんの挿絵ではないですか!
そして本の中身はゲームの主人公という・・・。なんとも異色な本だったのですね。
それを知って最初に思ったのは宮部みゆきさんの「ICO 霧の城」見たいな感じなのかな〜と思っていたのですが、それともちょっと違う感じなのかな。
ゲームのストーリーには基づいていなくって、主人公カイムが折々で見る、夢の話。
長く生きるときの中で出会った人々の記憶について書かれている。らしい。
最初に書かれていた前書きを読んだ時はピンと来なかったのだけど、本を読み進めているうちに製作総指揮の坂口さんの言葉を、重松さんは素晴らしい形で書き上げたんだなぁと思った。(ちょっと偉そうですが)
「一千年を生きることの哀しみが感じられるようなものにしてほしい」
私達は限りある命だから、毎日何かに追われながら生きてる。
少しでも充実で幸せな人生を送りたいから、一人ひとり、自分なりに幸せを見つけようとする。
でも、命に限りがなかったらどうかな。
きっと退屈で、人生に絶望を感じてしまうんじゃないかなと思う。
人よりも多くの死を見てきたカイムの辛さは計り知れないよね。
読んでいて、ひしひしと伝わってきました。さすが重松さんですよね。
でも一つ一つの物語が、どんな形であれ少し報われている形なのがまた、いいなと思う。
たまにはこういう作品もいいな、と思いました。
〈講談社 2007.11〉H20.3.2読了
私も、最初はicoみたいなものなのかな、と思いながら読んだのですが、全く違ってましたよね。
心の動きが手に取るように巧く描かれていて、とてもよかったです。
正直、icoは、いまいちな印象だったので、この作品がよけいに良く感じられたのかもしれませんが(苦笑)