ボトルネック

嵯峨野リョウは東尋坊に来ていた。
諏訪ノゾミが、ここの崖から落ちて死んだのだ。
ノゾミの死から2年。ようやく弔う気になり、現場へ足を運んだのである。
ノゾミは中学2年の時、横浜から金沢へ引っ越してきた女の子。
父親が友人の連帯保証人になってしまったがために、多額の借金を抱えてしまい、逃げるようにしてやってきたのだ。
リョウはそんな似たような境遇のノゾミが、気にかかるようになった。
東尋坊にいたリョウに、今度は親から兄が死んだという連絡が入る。
金沢へ戻ろうとした時、不思議な声を聞き、リョウはバランスを崩す。
気付いた場所は、自分の存在しない世界。
そして、生まれてくるはずのなかった姉が存在していた。

・・・イタイ。とっても痛いです。
こんなストーリーだとは思っていませんでした。
「オススメ」をつけたいのですが、あまりにも痛いのでちょっとやめておきます^^;
面白くって、止められなかったんですけど、リョウには辛い事実が次々と浮上してきます。
子どもは2人だけしかいらない。その両親の考えから、姉が生まれてこなかったための生まれてきたリョウ。
そして、こちらの世界には、ちゃんと姉、サキが生まれている。
自分との世界の違いはただこれだけ。でも、自分の生きている世界とは、大きな違いがある。
両親は仲が良く、行きつけだった食堂の爺さんも元気で、死んでいるはずの人も生きている。
次第に、リョウは自分の人生、人の人生の岐路の時が大きく異なっている事に気づく。
それがとても残酷で、悲しい。
リョウが悪いわけじゃないのに。どうしてこんなに辛い思いをしなくてはいけないんだろう。読んでいてずっとそう感じてました。
自分じゃなくて、サキが生まれていれば・・・。あの時こうしていれば・・・。と、リョウは悩みますが、人だったら誰でもそういう現実があると思います。
ただリョウに突きつけられているものは、余りにも酷すぎる。
でも、引き込まれたのもまた事実であって・・・。
気になって気になって、あっという間に読んでしまいました。
本当の最後がなぁ・・・
可哀相で可哀相で。

〈新潮社 2006.8〉H18.11.2読了