苗坊の徒然日記

読書とV6とSnowManをこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

彩瀬まる

川のほとりで羽化するぼくら 綾瀬まる4

川のほとりで羽化するぼくら
彩瀬 まる
KADOKAWA
2021-08-30


仕事を辞め、慣れない育児に奮闘する暁彦は、“ママじゃない”ことに限界を感じていた。そんなとき拠り所になったのが、ある育児ブログだった。育児テクニックをそこから次々取り入れる暁彦だが、妻はそれがつらいと言い……(「わたれない」)。私たちに降りかかる「らしさ」の呪いを断ち切り、先へと進む勇気をくれる珠玉の四篇。

幻想的な物語でした。
初めのお話は現代のもので父親がメインで育児をしている家族の話。父親が育児をすることも当たり前になってきているかと思っていたけど、細々とした偏りはまだまだあるんだろうなと読んでいて思いました。とてもリアル。育児ブログを書かれているペンギンさんとランチをするシーンがとても好きでした。夫婦の関係もなんだかすごく好きだったなぁ。
そして1年に1度しか会えない織女と羊飼いの世界の話に、ウイルスによって生殖機能が失われた近未来の世界の話と幻想的なお話があり、最後は80歳のおばあさんの話。こちらは最初のお話と真逆で夫は仕事人間で家のことは全くやったことがなくて妻にまかせっきり。退職して家にずっといて威張り散らしている。いやだこんな男マジで。おばあちゃんがこれから心穏やかに暮らせると良いなぁと願っています。

<KADOKAWA 2021.8>2021.9.14読了

草原のサーカス 彩瀬まる5

草原のサーカス
彩瀬 まる
新潮社
2021-02-25


製薬業界で研究者として働く姉と、アクセサリー作家として活動する妹。二人は仕事で名声を得るも、いつしか道を踏み外していく。世間の非難を浴びた転落の末に、彼女たちの目に映る景色とは。政治、経済、感染症の拡大……移り変わりゆく社会の中で、もがきながら再生の道を探る姉妹の姿を描く、注目作家の新たなる代表作。

あらすじを読んで少し予感はしていましたけど、2人に待ち受けることが重たすぎて途中読んでいて切なくなりました。
仁胡瑠に関しては自業自得な部分もあるけど、でも焚きつけたのは相手だしなーとか言ってしまう私も少しおかしいのかな。でも100%仁胡瑠が悪いという気持ちにはなれなかったです。
依千佳に関しては途中からきっとこういう展開になるんだろうなーという予想がつきましたよね。企業に利用されるだけ利用されて捨てられる。厳密に言うと捨てられてはいないのだけど。依千佳に関しても身から出た錆だとは思えませんでした。
でも何よりも私が1番嫌だったのは夫の気持ちだったかもしれません。長く一緒にいて同棲までしていたのにどうして依千佳の想いを汲んであげられなかったのか。
結婚した後にどうして関係性を変えなければならないのか。結婚したらその後は女性は仕事をセーブして子どもを産むことが「普通」なのか。自分の事は棚上げ。ただ結婚して子供がいる家庭を持っているというのを周りに見せつけたいだけなんじゃないかな。本当に子どもが欲しいと思っているんだったら、将来子どもが出来ても送り迎えはしないとか、自分は仕事が忙しいから加味してほしいなんてバカみたいなことは言わないですよね。それで「普通」を叶えてくれない妻には見切りをつけて若い可愛い言いなりになる女の方へ走るんですよ。バカバカしい。あーバカバカしい。
・・・取り乱しましたすみません。
2人はある意味転落してしまったのかもしれない。でも、何もかもを失ったわけではない。
2人が一緒にワークショップに行って過ごした時間がその答えだったのだと思います。
良いラストだったと思います。依千佳が下した決断を私は支持したいです。

<新潮社 2021.2>2021.3.31読了

まだ温かい鍋を抱いておやすみ 彩瀬まる5

まだ温かい鍋を抱いておやすみ
彩瀬まる
祥伝社
2020-05-14


スポーツ用品販売会社に勤める素子は、同じく保育園に通う子供を持つ珠理を誘って、日帰り温泉旅行に出かけることに。ずらりと食卓に並ぶのは、薬味をたっぷり添えた鰹のたたき、きのこと鮭の茶碗蒸し、栗のポタージュスープ。季節の味を堪能するうち、素子は家族を優先して「自分が食べたいもの」を忘れていたこと、母親の好物を知らないまま亡くしてしまったことに思いを巡らせ…(「ポタージュスープの海を越えて」)。彼女が大好きな枝豆パンは、“初恋の彼”との思い出の品。病に倒れた父の友人が、かつて作ってくれた鶏とカブのシチュー。―“あのひと口”の記憶が紡ぐ6つの物語。

様々な境遇の人たちが紡ぐ6つの物語。食べ物が出てくるお話だけどどれもヒリヒリと痛くなるようなお話ばかり。でも嫌な気持ちになるわけではなく、惹き付けられて読む手が止まりませんでした。
彩瀬さんが書く文章がとても温かくて優しくて好きです。読んでいるだけで癒されています。
読んでいると「食べることは生きること」という当たり前のことを再認識させられました。
特に「シュークリームタワーで待ち合わせ」が印象的でした。私は完全に夜子と同じ気持ちだから。幸の心の傷が少しでも癒えて手作りのシュークリームタワーを、二人で食べる時が来ると良いなと思いました。

<祥伝社 2020.5>2020.6.25読了

さいはての家 彩瀬まる5

さいはての家
彩瀬 まる
集英社
2020-01-24


駆け落ち、逃亡、雲隠れ。
行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。
家族を捨てて逃げてきた不倫カップル――「はねつき」
逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生――「ゆすらうめ」
新興宗教の元教祖だった老齢の婦人――「ひかり」
親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹――「ままごと」
子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男――「かざあな」

築年数が古くてガタついている家なのに、なぜか契約者が絶えない一軒家。
そこを住みかとする人たちはどこかワケあり。
それでも人と全く関わらないで生きていくことは無理で、隣の介護施設から毎日漏れ聞こえる歌声や、過去の住人が植えていった植物が育つ庭、逃げてきた前の住民達のお話。
何かが住民の琴線に触れ、人はまた前を見て歩き出す。
この5編で言うと住んでいた順番は「はねつき」「ひかり」「ゆすらうめ」「ままごと」「かざあな」なのかな。
大家さんが胡散臭そうに見えたり、ときには良い事を言ったり、なかなかのキーパーソンでした。
印象的だったのは「ままごと」かな。家族って自分が育った1家族しかほとんど分からないから。子供の頃は親の意見が絶対だったりするから、子どものうちは仕方がない。でも、大人になるにつれ自我が芽生えて自分がやりたいことも分かってくる。満は家を出て正解でしたね。朔も気づいたみたいで良かった。生き生きと生きる2人の今後はみてみたいです。
全然関係が無いんですけど「ゆすらうめ」という言葉を聞いて懐かしくなりました。漢字で書くと「梅桃」。1997年の朝ドラ「あぐり」の原作が「梅桃が実るとき」というタイトルだったので^^私が生まれて初めて最初から最後まで見た朝ドラで、主人公のモデルとなった吉行あぐりさんの原作も読んだなーとふと思い出しました。真っ赤で可愛い実が生りますよね。実物を見たことは多分ないんですけど。

<集英社 2020.1>2020.3.7読了

森があふれる 彩瀬まる4

森があふれる
彩瀬 まる
河出書房新社
2019-08-08


作家の夫に小説の題材にされ続けた主婦の琉生はある日、植物の種を飲み発芽、広大な森と化す。夫婦の犠牲と呪いに立ち向かった傑作。

凄く難しい内容でした。ファンタジーのようであり、夫婦の問題はとても現実的であり…
小説家の埜渡徹也と妻の琉生を取り巻く人たち目線で書かれた連作短編のようなのですが軸にあるのはこの2人。琉生自身が発芽して部屋の中は森になっていく。周りは琉生が出ていったと噂するけど、実際は森の中で生きている。
私は結婚してないから夫婦というものは分かりません。でも、この作品で登場する夫婦たちはみんな夫婦である事に対してあきらめのようなものを感じました。惰性というかなんというか。若い白崎夫婦はまだ希望がある気がしたけど、他はどうだろう・・・。
徹也は琉生を好きではあると思う。でも、その好きというのは何だか他の人より薄っぺらい。プライドは誰よりも高くてどこかみんなを見下してる。私は決して好きになれる人種ではなかったけど。でも、琉生は好きなんですよね。そんな男だけど、好きなんですよね。
互いに寄り添い合うこと、互いに言葉を交わし合うこと。言わなくても分かるじゃなくて、言わなければ伝わらないということを言葉にして紡いでいったらまた変わっていくんじゃないかな。
白崎夫婦はまさにちゃんと話して希望が見えた気がしますし。
犠牲と呪いという言葉がぴったりな気がします。
最後は衝撃というか唐突というかびっくり。この夫婦が変わることはあるのでしょうか。

<河出書房新社 2019.8>2019.9.24読了

珠玉 彩瀬まる5

珠玉
彩瀬 まる
双葉社
2018-12-19


ファッションデザイナーの歩が経営するブランドは地味と皮肉られ人気が無く、さらには相棒に見限られて経営困難な状況だった。
歩自身も、「ファムファタル」と称され没後も語り継がれる歌姫だった祖母とは似ても似つかない容姿で、そのことから他人の美貌に辟易し、なるべく目立たぬように生きていた。そんなある日、ハーフのモデル・ジョージと出会う。自分が常に悩まされてきた外見を武器として使う彼の生き方をずるいと感じ、信用できずにいた。しかし、仕事を失ったジョージは歩の仕事を強引に手伝うようになり……。
自らの弱さに目を瞑ってきた登場人物たちが一歩ずつ成長する姿を丁寧に描いた物語。

読み始めはどこか幻想的で、誰が誰でなんの話をしているのか分からず^^;読み進んでいくのに時間がかかりましたが、分かってからは一気読みでした。
真砂リズというかつての大スターを祖母に持つ歩。祖母の事が大好きなのに、何をするにも祖母の影が立ちふさがる。祖母が気に入ってくれるような、祖母が好きになってくれるようなそんな服を作らなければと固執している。
最初の歩は何かに縛られているような感じがして読んでいても地味な女性の印象でした。それでも改めて真砂リズという女性を知っていくことで何かが弾け、開眼していく姿は見ていて素敵でした。サナギが蝶になったような美しさを感じました。
始めは歩の境遇を利用としたであろうジョージも、最後まで読めない奴でしたが、歩にとっては必要な存在だったんですね。2人は恋愛に発展するのかな…しなそうだな(笑)
そしてキシとカリンの存在が大きかったですね。この2人(?)の会話のお陰で最初、話の展開が分からなくて困りました^m^祖母が大切にしていたテディベアの両目にはめ込まれた黒真珠と樹脂パール。最初はクズ石とカリンの事を言っていたキシでしたけど、カリンが後半どんどん語彙力が増して輝いていくような感じが歩と重なっていきました。
自分を知る事、自分を好きになる事。そして強い芯を持つ事。私もそうなりたい。
最後の歩の姿は私の理想でした。

<双葉社 2018.12>H31.2.7読了

不在 彩瀬まる4

不在不在
著者:彩瀬 まる
KADOKAWA(2018-06-29)
販売元:Amazon.co.jp

長らく疎遠だった父が、死んだ。「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」。不可解な遺言に、娘の明日香は戸惑いを覚えたが、医師であった父が最期まで守っていた洋館を、兄に代わり受け継ぐことを決めた。25年ぶりに足を踏み入れた錦野医院には、自分の知らない父の痕跡が鏤められていた。恋人の冬馬と共に家財道具の処分を始めた明日香だったが、整理が進むに連れ、漫画家の仕事がぎくしゃくし始め、さらに俳優である冬馬との間にもすれ違いが生じるようになる。次々現れる奇妙な遺物に翻弄される明日香の目の前に、父と自分の娘と暮らしていたという女・妃美子が現れて――。愛情のなくなった家族や恋人、その次に訪れる関係性とは。気鋭の著者が、愛による呪縛と、愛に囚われない生き方とを探る。喪失と再生、野心的長篇小説!

あらすじから、平穏だった生活に父の死と、父と暮らしていたという女性が現れたことでドロドロする展開なのかなと思ったら違いました^^;安易すぎる。
明日香は屋敷を引き継ぐことになり、屋敷の掃除をしつつ回想していきます。
始めは特に不穏さを感じなかったけど、だんだん明日香が何かにイラついているような感じが伝わってきました。誰に対してもイライラしていて自分の思い通りにいかないと気が済まないような。
若い編集者に対しての態度も何だかなぁ。売れっ子なんだとは思うけど上からな感じが嫌だし。冬馬との関係も最初は普通に可愛いカップルだなと思っていたけど、だんだん私が養ってやっているんだぞ感が露骨になってきていて、嫌になってきたし。冬馬の方が大人でしたね。
それでも屋敷を片付けていくことで情緒不安定になりつつも自分と向き合えたのかなぁ。
妃美子や佳蓮との関係も良い意味で意外な展開でした。
明日香と冬馬はもう恋人としては戻らないかもしれないけど良い同志としてなら、良い関係をこれから築いていけるんじゃないかなと思いました。
それにしても死んだ父親が何を考えていたのか、結局のところは分からなかった気がするなぁ。

<KADOKAWA 2018.6>H30.7.18読了

くちなし 彩瀬まる4

くちなしくちなし
著者:彩瀬 まる
文藝春秋(2017-10-26)
販売元:Amazon.co.jp

別れた愛人の左腕と暮らす。運命の相手の身体には、自分にだけ見える花が咲く。獣になった女は、愛する者を頭から食らう。繊細に紡がれる、七編の傑作短編集。

「くちなし」「花虫」「愛のスカート」「けだものたち」「薄布」「茄子とゴーヤ」「山の同窓会」の7作からなる短編集。
身体の一部を取ることが出来たり、人間の身体に羽虫が侵食していたり、SF要素のある作品でした。作品によってはあまり好きになれないものもありましたが^^;
私はそういうSF要素が(多分)ない、かつての同級生と再会し、再び関わり合うことになる「愛のスカート」と不愛想な床屋の店主と未亡人となった女性との関わりが描かれている「茄子とゴーヤ」が好きでした。茄子色の髪の毛か…気になるな。
私は少し苦手でしたけど、こういう不思議な世界観が好きな人は楽しめると思います。
お話は面白かったです。

<文芸春秋 2017.10>H29.11.27読了

眠れない夜は体を脱いで 彩瀬まる5

眠れない夜は体を脱いで (文芸書)眠れない夜は体を脱いで (文芸書)
著者:彩瀬 まる
徳間書店(2017-02-08)
販売元:Amazon.co.jp

手が好きなので、あなたの手を見せてください!――不思議なノリで盛り上がる、深夜の掲示板。そこに集う人々は、日々積み重なっていく小さな違和感に、窮屈さを覚えていた。ほんとの俺ってなんだ――「小鳥の爪先」女という性になじめない――「あざが薄れるころ」不安や醜さが免除されている子はずるい――「マリアを愛する」社会の約束事を無視するなんて――「鮮やかな熱病」俺はいつも取り繕ってばかりだな――「真夜中のストーリー」連作短篇集。

彩瀬さんの書かれる連作短編集、堪能しました。どの作品も温かくて優しくて、でもとげがあるような作品。一つ一つの作品は異なりますが、深夜の掲示板「手が好きなので、あなたの手を見せてください!」というスレッドが目に留まるというところが共通点。そのスレッドを挙げた人に対する考え方は人それぞれ。それも面白かったです。
「小鳥の爪先」和海はイケメンで女性からはよく声をかけられ同性からは相手にされない。そして自分の顔が嫌いだった。和海君は上手く立ち回るのが苦手なんですかね。人が持っていないものを持っているというのは純粋に羨ましいのだけど、本人にとっては辛いものなのかもしれないですね。ゆかり先生と出会って良かったです。にしても梓という人は自分勝手ですね。横にかっこいい人を連れて周りに見せびらかしたいだけなんですよね。そして自分が別に欲しい人が出来たらあっさり手放す。同じ女性として最低だなと思いました^^;
「あざが薄れるころ」真知子は50歳を過ぎてから合気道を始めた。黒帯目指して数か月間組む相手は瀬尾という名の大学生だった。この2人が試行錯誤して上を目指そうとしているところ、可愛らしかったです。瀬尾は最初、真知子と組むことにもしかしたら多少違和感を感じていたのかもしれないけど、きっと最後は組んでよかったと思っているんじゃないかな。真知子は素敵な人でした。最後に母親に言った台詞がとても好きです。
「マリアを愛する」可愛くて優しくて切ない物語でした。マリアと香葉子の短い間の友情関係のようなものがとても良かったです。また、香葉子の誤解も解けてよかった。
「鮮やかな熱病」主人公の男性のことが不愉快でずっと嫌いだと思って読んでました。確かに見下すのは世間じゃなくて自分、おかしいと決めつけているのも自分。何でも自分の意見が正しいと思うなよと思いながら読んでいましたが、どうやら多少は気づいたようでほっとしました。
めぐみが言った言葉がとても印象的で。きっと私もこういう相手を求めていて、こういう人と一緒になりたいと思っているのかもと思いました。
「男の人が要らないんじゃなくて、男女という役割を脱いで、ただの対等な大人同士として尊重しあえる関係を作りたい」
「もしも結婚するなら世界一の親友だって思える人が良いです。その上で恋をしたい。
女として必要とされるだけなら、その人は別に私じゃなくても、そこそこ好みの女なら誰でもいいんですよ」
うまく言えないんですけど、私は結婚願望が無いんです。夫を欲しいと子供を欲しいと思わない。でも、パートナーなら欲しいかも…。どう違うのかと言われると困るのですが。
「真夜中のストーリー」アバターを作ったことで出会った人。深夜の掲示板のスレッドが出来た理由が分かります。なるほど。こちらも面白かったです。

<徳間書店 2017.2>H29.7.8読了

朝が来るまでそばにいる 彩瀬まる4

朝が来るまでそばにいる朝が来るまでそばにいる
著者:彩瀬 まる
新潮社(2016-09-21)
販売元:Amazon.co.jp

弱ったとき、逃げたいとき、見たくないものが見えてくる。高校の廊下にうずくまる、かつての少女だったものの影。疲れた女の部屋でせっせと料理を作る黒い鳥。母が亡くなってから毎夜現れる白い手……。何気ない暮らしの中に不意に現れる、この世の外から来たものたち。傷ついた人間を甘く優しくゆさぶり、心の闇を広げていく――新鋭が描く、幻想から再生へと続く連作短編集。

読みました。今までの作風とは少し違う感じでした。
現実のものではない少し不思議なものたちが出てきます。それでも、それが出てくるのは人間の弱い部分が出てきているからこそ。
弱みに付け込むじゃないけど、縋りたくなるようなものたち。
縋る瞬間があってもいいのだと思うけど、それでもそれに頼ってしまってはいけないんですよね。自分は生きていて、これからも生きていかなきゃいけないんだから。
最初のお話が読んでいて少し辛かったな。私ではないけど、身内で似たようなことがあったから。
心に傷を負った人たちが何かに縋ったとしてもそこに留まらず、少しでも前を向いて歩いていくことができますように。そんなことを思って読み終えました。

<新潮社 2016.9>H28.11.11読了

やがて海へと届く 彩瀬まる5

やがて海へと届くやがて海へと届く
著者:彩瀬 まる
講談社(2016-02-03)
販売元:Amazon.co.jp

すみれが消息を絶ったあの日から三年。真奈の働くホテルのダイニングバーに現れた、親友のかつての恋人、遠野敦。彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。地震の前日、すみれは遠野くんに「最近忙しかったから、ちょっと息抜きに出かけてくるね」と伝えたらしい。そして、そのまま行方がわからなくなった―親友を亡き人として扱う遠野を許せず反発する真奈は、どれだけ時が経っても自分だけは暗い死の淵を彷徨う彼女と繋がっていたいと、悼み悲しみ続けるが―。死者の不在を祈るように埋めていく、喪失と再生の物語。

あの日から東日本大震災が思い浮かぶのですが、「死」についてを考えさせられた気がします。亡くなった者、残された者。亡くなった人はもちろん無念だと思う。でも残された人もきっと辛い。だから、遠野君の考え方も、すみれのお母さんの考え方も、もちろん真奈の考え方も間違いではないのだと思う。人それぞれ捉え方があると思うので。
ただ、真奈のように残されてしまったからとすみれに申し訳なく思って生きていくのはなくなってしまったすみれに対しても失礼じゃないかななんて思いました。真奈は生きているのだから、前を向いていかないと。なんて思ったりしました。それも、私のエゴなのかもしれませんが。
以前も書いたことがありますが、私は大学生の時に友人を亡くしました。事故でも病気でもなくて心不全で突然の死。準備なんかしていませんでした。
事故などではなかったので、私は生きていて悪いと思ったことはないですが、ただ、生きていてつらい時に、いつも友人の姿が思い浮かびます。
私は生きているのに、いつもつらいと思っていてごめん。死にたいなんて思ってごめん。って。
だから、私はちゃんと生きているのだから、幸せだと思うような生き方をしなければ、なんて思ったりもします。「死」のとらえ方は人それぞれですよね。
真奈が少しずつ変わっていく姿が見ていて素敵でした。ちゃんと前を向き始めている姿を応援したくなりました。
私も友人のことを思い出すことは昔より少なくなりました。でも、つらい時に思い出します。ただ、つらい時にばかり思い出すのは申し訳ないとも思っていて。
いつか自分は幸せだと思うときに、友人に私は今幸せだと報告できるようになりたいとも思っています。

<講談社 2016.2>H28.4.7読了

桜の下で待っている 彩瀬まる5

桜の下で待っている桜の下で待っている
著者:彩瀬 まる
実業之日本社(2015-03-12)
販売元:Amazon.co.jp

面倒だけれど愛おしい――「ふるさと」をめぐる5つの物語
桜前線が日本列島を北上する4月、新幹線で北へ向かう男女5人それぞれの行先で待つものは――。婚約者の実家を訪ねて郡山へ。亡くなった母の七回忌に出席するため仙台へ。
下級生を事故で亡くした小学4年生の女の子は新花巻へ。
実家との確執、地元への愛着、生をつなぐこと、喪うこと……
複雑にからまり揺れる想いと、ふるさとでの出会いをあざやかな筆致で描く「はじまり」の物語。
ふるさとから離れて暮らす方も、ふるさとなんて自分にはない、という方も、心のひだの奥底まで沁みこむような感動作。

彩瀬さんの小説は本当に心が温かくなる作品です。彩瀬さん自身が素敵な方なんだろうなと思います。今回の作品も桜の咲く季節に読みたいなと思ったのですが、こんな時期になっちゃいました^^;
そして舞台は徐々に北上して東北へ。それは彩瀬さん自身が、偶然東北へ旅行に行ったときに東日本大震災に遭い、たくさんの人と関わったこともきっとこの作品に反映されているのだろうなと思いました。
「モッコウバラのワンピース」智也がとってもいい子ですねー。彼女の心美への心配の仕方とか、おばあちゃんと家族との関係の心配の仕方とか、優しい子なんだなと思いました。おばあちゃんの生き方はとても素敵だし、その生き方を尊重した智也のお母さんも素敵だなと思いました。
「からたち香る」律子が放射線の事を詳しく話すくだりは地元の人にはあんまり言っちゃいけないんじゃないかなぁなんて思いましたけども。でも律子がちゃんと勉強して知ろうとしている姿が良かったんですかね。なんて。私も福島へ行きたいと言いつつ、まだ行ってないんだから何も言えませんが。由樹人も友人たちも素敵でした。
「菜の花の家」私も三人兄弟で私、弟、妹の順。私と弟は独身で妹は既婚。弟はそろそろ結婚の話が出てきそうな感じ。多分、うちの両親は孫の顔は見れるかな、なんて思っていますけど(でも他人事)ここまでキツイ性格の家族じゃないけどみんな結構頑固だから分かる部分はありました^^;
「ハクモクレンが砕けるとき」知里が出会った女の子は、どの人だったんだろうな。舞台が花巻で、知里たちが行った宮沢賢治にまつわる場所は観光で行ったのに、私はそんな見方をしなかったなぁと読んでいて思いました。トシが死んで悲しんでいるにも関わらず、賢治はちゃんと綺麗なものは綺麗だと思って見てる。本当に、目のいい人だったんだなぁと永訣の朝の一部を読んで改めて感じました。ちゃんと賢治の作品を読もう。
「桜の下で待っている」多分全部の作品に登場した販売員のお姉さんのお話。お姉さんの家族に考え方がとても好きでした。私にもそんな大切な人が、現れるかなぁ。

<実業之日本社 2015.3>H27.6.24読了

神様のケーキを頬ばるまで 彩瀬まる5

神様のケーキを頬ばるまで神様のケーキを頬ばるまで
著者:彩瀬 まる
光文社(2014-02-19)
販売元:Amazon.co.jp

私は他人に語れることを何一つ持っていない―むつみ(マッサージ店店主)。
やっぱりここは、俺にふさわしい七位の場所なのかもしれない―橋場(カフェバー店長)。
私から、こんな風に頭を下げてでも、離れたいのだ、この人は―朝海(古書店バイト)。
どうすればあの人は私を好きになってくれるのだろう―十和子(IT企業OL)。
私は、真夜中の散らかった1DKの部屋で、びっくりするほど一人だった―天音(元カフェ経営者)。
きっと、新しい一歩を踏み出せる。ありふれた雑居ビルを舞台に、つまずき転んで、それでも立ち上がる人の姿を描いた感動作!

彩瀬さんの文章、やっぱり凄く凄く好きだなぁ。文章との相性ってあると思う。
どの人も何かしらの悩みを抱えていて、それでもじぶんなりに答えを出して歩いていこうとしている。その姿がみんな凛々しかったです。
最初のむつみの結婚生活は読んでいてとても辛かったです。別れて正解ですよ、そんな男。私、女の人を卑下する男の人が大嫌い。男だからっていう理由で上から目線な男の人が大嫌い。だからむつみは大変かもしれないけど逃れて良かったのだと思う。息子君とも少しずつ何とかなりそうで良かった。
胸を突かれた言葉もあった。十和子の同僚の澄子がかつての彼氏に言われた言葉。「あったこともない年下の男、しかも未成年にそんな夢を見て興奮してるの、おかしい」って。
いや、私が好きな人たちは年下でも未成年でも無くておっさんだけど←でも言われていることは一緒。
澄子はだから自分が年下アイドルの追っかけをしていることを隠して男の人と付き合っている。その気持ちも分かるけど、私はどんなに好きな人が出来てもそこを否定されたら私は生きていけなくなるから隠したくないなぁと思う。だって私の全てなんだもの。そのすべてを否定されてまでその人と一緒にいたいと思えないもん。あぁ…なんかしをんさんの作品でもそういうのあったなー。同じ作品に出てきたしおりもいい味出してて好きだったな。
そんな感じで共感できるところも多々あり^^;面白いという表現とは少し違うけど、夢中になって読みました。
最後の天音と晴彦のかかわりも好きでした。こういう再生の形っていいなと。
微妙に短編がリンクしていたり、すべての作品にウツミマコトという監督の「深海魚」が絡んでました。
残念ながら私はその映画に惹かれなかったのだけど。こういうリンクも好きです。

〈光文社 2014.2〉H26.7.23読了

暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出 彩瀬まる5

暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出
著者:彩瀬 まる
新潮社(2012-02-24)
販売元:Amazon.co.jp

3月11日、恐ろしいほどの暗闇の中で25歳の小説家が見たものは。衝撃の手記。ひとりで東北を旅行中、私は常磐線の新地駅で被災した。命からがら津波を逃れ、見知らぬ人の家で夜を明かした次の日、原発事故を知らせる防災無線が飛び込んできた――情報も食べ物も東京へ帰るすべもないまま、死を覚悟して福島をさまよった五日間。若き女性作家があの日からの被災地をつぶさに見つめた胸つまるルポルタージュ。

この作品は3部作に分かれています。
1作目はご自身が体験された3月11日から関東の自宅に帰宅するまでのルポ。
2作目は3か月後、3作目は更に4か月後の事が描かれています。
福島へ旅行中だった著者が東日本大震災に遭った1作目のお話は雑誌の中で読んでいました。この方の名前を始めに拝見したのはその時でした。
実際にテレビで地震が起きた時の映像や津波の映像は幾度となく見ましたが、やはりご自身が経験された事を文字で追っていくとそのすさまじさが分かります。津波が迫ってくる恐怖、余震の恐怖、ひたすら恐怖を感じました。でもその中での地元の方の温かさを強く強く感じました。旅行者で、失礼ですがよそ者である著者に一人じゃ寂しいでしょうと声をかけてくれる人々、ここにいつまでもいていいんだよと手を差し伸べてくれた方々。凄く凄く温かい。著者は始め、私がこのようなことを書いていいのだろうかと思いためらいもあったそうですが、書いてくださってありがとうと言いたいです。
以前テレビで渡辺謙さんもおっしゃっていました。まだ震災は終わっていない。被災地へボランティアとしてではなくても良い、ただ行くだけで良いから、行って下さい。と。
ちゃんと行って自分の眼で見なければだめなのだと改めて感じました。
ちゃんと見ていないのに、知識を得ていないのに、そんなに優しい福島の方々へ投げかけた酷い言葉の数々。ただでさえつらいのに、どうしてそんなことを言われなければならないのか。それでもただ福島の方々は耐えている。それが申し訳ないです。
沢山の方に読んでほしい作品です。

〈新潮社 2012.2〉H26.3.22読了

骨を彩る 彩瀬まる5

骨を彩る骨を彩る
著者:彩瀬 まる
幻冬舎(2013-11-27)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
見て見ぬふりをして、喪ったと思っていた、あの人、あの記憶、あの言葉が今、降り注ぐ――。
何も喪わず、傷つかず生きている人なんていない――。
「指のたより」不動産会社を営む津村は10年前に妻を亡くしていた。最近妻の夢を見る。妻はなぜか指が1本ずつなくなっていった。
「古生代のバームロール」相沢光恵は離婚して実家へ戻り、稼業のお弁当屋さんを手伝っている。恩師の葬儀でかつての同級生たちと顔を合わせる。
「バラバラ」玲子は子どもがいじめられているのではないかと悩んでいた。しかし息子に拒絶され、夫の勧めで旅行へ行くことに。玲子は父の墓参りのため仙台へ向かう。
「ハライソ」浩太郎はネットでヨシノという女性と何年もチャットをしている。浩太郎は実生活では人づきあいが苦手だが、ヨシノには気さくに話すことが出来た。
「やわらかい骨」小春は幼いころに母を失ったことで気遣う大人がわずらわしかった。ある日転校生がやってくる。その少女はある行動をしたことで同級生から敬遠されるようになった。

彩瀬さんの作品は2冊目です。どちらも大好きです。
彩瀬さんの書かれる文章が本当に好きです。言葉の運び方が凄く好き。相性が良いのかな。同世代なのもあるのかな。
この作品のテーマは喪失です。
ほとんどが人の喪失について。特に最初の作品は重たかった。
主人公たちが人の死と向き合っているのを読んでいて、私も死について考えていました。
ふと思い出したのがオカダが10周年の時に言った言葉。
「死ぬ時に自分の名前を5人覚えてくれていたらそれだけで生きてきた価値がある」
私が死ぬ時に家族以外でそれだけ覚えていてくれる人がいるかな…なんて思ってしまった。
私も大事な人を失ったことがあるから、どうしてもその人のことを考えてしまったりして。思い出す度に、そんなに時は流れたんだなとどうしようもない想いに駆られたりもします。まだ顔も声も覚えているけど、もしも思い出せなくなったら。そう思ったらものすごく悲しい。
喪失という部分では読んでいて悲しくなる時もあったけど、短編集はそれぞれ繋がっていて、そのリンクが見事でした。ちょっと雰囲気が違うのもあってよかったかも。
「ハライソ」がちょうど一段落つけるような感じでそれもよかった。
「指のたより」が1番好きだけど、だからこそ「やわらかい骨」の最後が凄くよかったです。
小春が好きだといった「ラ・カンパネラ」私も大好きです。
上手く言葉で表せないのが本当に残念。本当に本当に素晴らしい作品でした。

〈幻冬舎 2013.11〉H26.3.9読了

あのひとは蜘蛛を潰せない 彩瀬まる5

あのひとは蜘蛛を潰せないあのひとは蜘蛛を潰せない
著者:彩瀬 まる
新潮社(2013-03-22)
販売元:Amazon.co.jp

私って「かわいそう」だったの? 「女による女のためのR‐ 18文学賞」受賞第一作! ずっと穏やかに暮らしてきた28歳の梨枝が、勤務先のアルバイト大学生・三葉と恋に落ちた。初めて自分で買ったカーテン、彼と食べるささやかな晩ごはん。なのに思いはすぐに溢れ、一人暮らしの小さな部屋をむしばんでいく。ひとりぼっちを抱えた人々の揺れ動きを繊細に描きだし、ひとすじの光を見せてくれる長編小説。

初読み作家さんです。厳密にいうと初じゃないのですが…。
以前雑誌に書かれていた東日本大震災が起きた時、ちょうど旅行で東北に行かれていたそうでそのルポを読んだことがありました。
それで名前は覚えていたということと「女による女のためのR‐18文学賞」は確か大好きな作家さんの宮木さんも受賞された賞だからきっと私が好きな文章なはず!と思い、手に取りました。
思った通りでした。するすると文章がしみ込んでいきました。彩瀬さんの作品好きです。
でも、始めは読むのを止めたくなるくらい辛かったです。それは自分に当てはまるところがたくさんあったからということと、同じ年齢の主人公で周りの環境が似ていたから。
父親がおらず、兄は出ていき、28歳になった今でも実家で母と2人で暮らしている。母のいう事は絶対で逆らうことが出来ず、結局言い返せないから喧嘩にならない。
私の母親はここまでではないし、私は喧嘩にならないまでも言い返すからこの2人でもないけど、でも分かる部分がたくさんありました。母親を悲しませることはしないし、言われたことは大体守る。何かあったら母親に相談して母親がそう言ったから安心してそうしたりして。
だから、今はそこまでではないけど、自分の意見を言うっていうのがなかなか出来なかったり、人の意見を聞いて一緒だったり確認してもらって一緒だったら安心するっていう気持ちが凄くよく分かりました。
梨枝が自分と葛藤している姿は自分を見ているようでした。彼氏や同僚に対して嫌われないようにとりあえず謝ったり羽目を外さないようにしたり、良い子を演じていると言われたら言い返せない、そんな感じが。上手く甘えることが出来なくて変な形での愛情表現しかできないとか。第三者から見ればそんなに難しく考えなくていいのにって思うのだけど、本人にとっては必死で。で、空回りして自分が想像する自分の姿と相手が見る自分の姿が違ったり。自分なりに頑張っていると思ってるからショックですよね。
だから梨枝が少しずつ変わっていく姿は読んでいて微笑ましく感じました。28歳だろうと何だろうと、変わろうと思ったらいくらでも変われるんですよね。この作品でも書かれているし、私もなるべくそう考えようと思っているのだけどどうしようどうしようと思っている事って大抵は何とかなるんですよね。そうやって少しでもいろんな物事を軽く優しく考えられたら良いなと思いました。三葉君との関係は最初痛々しくも感じましたが、最後は良いカップルにちゃんと見えましたし、バファリン女ともちゃんと仲良くなれるような気がして安心しました。
読んでよかったです。また彩瀬さんの作品を読みたいと思います。

〈新潮社 2013.3〉H25.4.30読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6とSnowManを愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
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