苗坊の徒然日記

読書とV6をこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

伊吹有喜

風待ちのひと 伊吹有喜5

風待ちのひと (ポプラ文庫)
吉實恵
ポプラ社
2018-03-02


“心の風邪”で休職中の39歳のエリートサラリーマン・哲司は、亡くなった母が最後に住んでいた美しい港町、美鷲を訪れる。哲司はそこで偶然知り合った喜美子に、母親の遺品の整理を手伝ってもらうことに。疲れ果てていた哲司は、彼女の優しさや町の人たちの温かさに触れるにつれ、徐々に心を癒していく。
喜美子は哲司と同い年で、かつて息子と夫を相次いで亡くしていた。癒えぬ悲しみを抱えたまま明るく振舞う喜美子だったが、哲司と接することで、次第に自分の思いや諦めていたことに気づいていく。少しずつ距離を縮め、次第にふたりはひかれ合うが、哲司には東京に残してきた妻子がいた――。

伊吹さんのデビュー作、ようやく読めました。
いつか読もうとずっと思っていて今になったわけだけど、今読んで良かったです。
私は今年誕生日を迎えたら39歳になるので、主人公である2人と同い年です。
だから、2人の境遇を読み続けていて、親と死別していたり夫や息子を亡くしていたり、家族とのわだかまりを感じていたりしているのを見て、私は何にも経験してねぇなって思いました(笑)ほぼ同い年の人たちの話なのに、10も20も上の人の話みたいに感じて。親が不仲の中育つと子供は大人びるみたいなことが書かれていましたけど、私は逆なのかもしれないと思いました。良いんだか悪いんだか。
哲司と喜美子の関係は恋が芽生える前も、芽生えた後も素敵だと思いました。境遇が違い過ぎるからこそお互いを尊敬している感じが好きです。お互いが出来ることを尊敬している感じが。
喜美子は夫と息子の亡くなり方から自分が幸せになってはいけないと思っていて、いつも2人に申し訳ないとどこかで思っていて。でも、美鷲に住む知り合いたちはみんな、喜美子に幸せになってほしいと思っている。マダムや舜や舞との関係性がとても好きでした。舜、めちゃくちゃいい子じゃないの。バスでの見送りのシーンは泣きそうになりました。
哲司の妻は「心の風邪」の原因が自分にもあるのだと、きっとわかっていないのでしょうね。正直妻は気持ち悪かったです。哲司が東京に帰ってからの執着は、きっと美鷲のあの女に自分が負けるはずがないというプライドだったんじゃないかなと思います。あんなにいがみ合った後に子供が欲しいと言ったり、デパートへ行った時にあの人にお中元を贈ろうって言ったり、正直どれも気持ち悪かった。娘さんが変に成長しなくて良かったですよ本当に…母親を反面教師にしたのかな。
哲司と喜美子のその後は読んでいるこちらがもどかしくて仕方がなかったけど、最後はほっとしました。お互いのことはまだまだ分からないことがたくさんある。それを知るために一緒になるのでもいいと思います。2人が今度こそ幸せになれることを、願ってやみません。

<ポプラ社 2009.6、2011.4>2023.6.26読了

犬がいた季節 伊吹有喜5

犬がいた季節
伊吹 有喜
双葉社
2020-10-14


オススメ!
ある日、高校に迷い込んだ子犬。生徒と学校生活を送ってゆくなかで、その瞳に映ったものとは―。最後の共通一次。自分の全力をぶつけようと決心する。18の本気。鈴鹿でアイルトン・セナの激走に心通わせる二人。18の友情。阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件を通し、進路の舵を切る。18の決意。スピッツ「スカーレット」を胸に、新たな世界へ。18の出発。ノストラダムスの大予言。世界が滅亡するなら、先生はどうする?18の恋…12年間、高校で暮らした犬、コーシローが触れた18歳の想い―。昭和から平成、そして令和へ。いつの時代も変わらぬ青春のきらめきや切なさを描いた、著者最高傑作!

高校で暮らすことになったコーシローとその高校の生徒たちの物語です。
始めの章は昭和63年。最初に登場した優花と光司郎の物語が1番印象に残っています。親は戦争を知っている世代で祖父母は明治生まれ。男女雇用機会均等法が施行されたけど男尊女卑の感じが残る優花の家庭は読んでいても息が詰まる感じがしました。でも時代だからしょうがないのかな…そう考えたらお父さんはかなり柔軟な考えを持っていて良かったです。この2人が一緒にいる時の雰囲気がとてもよくて、最後が切なかったな…。この時代は私は一応生まれていますけどこんな時代だったんだな…と思いながら読んでいました。
次の章の五月と相羽も面白かったですね〜おバカで^^私はセナの現役を知らないので、当時の男の子はきっとこんな感じで夢中だったんだろうなーと思いながら読んでいました。
第3章からは自分がその時どうしていたかを回想しながら読んでいました。特に1995年は年の初めに色々ありましたから…。テレビを見ていて天災も事件もどちらも怖かったです。
私の高校時代とは被っていなかったのですが、平成の時代を回想できて良かったです。それに、歴代の高校生たちは時代が違えど皆色々悩みは抱えているし、でもまっすぐで眩しかった。
更に現代になっての最後なんですかー!!優花も光司郎もたまに登場していたのでやきもきしていたんですよ。なんですかもう!←
完璧に忘れ物を見つけ出せてよかったね!最後はこちらまで笑顔になりました。
優しい物語でした。読めて良かったです。ありがとうございました。

<双葉社 2020.10>2020.11.21読了

天の花 なでし子物語 伊吹有喜4

天の花 なでし子物語天の花 なでし子物語
著者:伊吹 有喜
ポプラ社(2018-02-09)
販売元:Amazon.co.jp

遠州峰生の名家・遠藤家の邸宅として親しまれた常夏荘。幼少期にこの屋敷に引き取られた耀子は寂しい境遇にあっても、周囲の人々の優しさに支えられて子ども時代を生き抜いてきた。18歳になった耀子は、誰にも告げずに常夏荘をあとにした。バスの中、4年前のあの夏を思い出す。久しぶりに常夏荘を訪れた立海と過ごした日々―。

シリーズ3作目。
前回が今回の作品の10年以上先の話だったので、未来が分かるから物足りなさもありましたが、それでも思春期の耀子や立海を見ることが出来て良かったです。と言ってもメインはその更に4年前なので思春期には早いかな。
どうして耀子と龍治が結婚したのか。その過程が分かったのは良かったのですが、龍治がなぜ峰生をそこまで嫌っているのか分からないままでしたね。
そして立海が可哀想すぎる…。
分かった部分もありもやもやが残った部分もあり。
現在連載中の最終章ですべてが明らかになるのでしょうか。
いつ単行本化されるか分かりませんが楽しみにしています。

<ポプラ社 2017.2>H30.4.25読了

彼方の友へ 伊吹有喜5

彼方の友へ彼方の友へ
著者:伊吹 有喜
実業之日本社(2017-11-17)
販売元:Amazon.co.jp

「友よ、最上のものを」
戦中の東京、雑誌づくりに夢と情熱を抱いて――
平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。
「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。
そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――
戦前、戦中、戦後という激動の時代に、情熱を胸に生きる波津子とそのまわりの人々を、あたたかく、生き生きとした筆致で描く、著者の圧倒的飛躍作。

この作品、直木賞ノミネート作だったんですね(今更気づいた人)
伊吹さんの作品の中では少しテイストが違う印象がありましたが、伊吹さんの良さは変わらなかったです。素晴らしかった。
現代を生きる90を過ぎた佐倉波津子が過去を振り返る形で物語は進んでいきます。
20代で終戦を迎えている人はもう90代なんですよね…
小学生の時に戦後50年と言っていて、遠いけどまだそこまで遠くないような印象だったんですけど(言い方があれですが)戦後70年を過ぎて、今の子供たちの祖父母はきっと戦争を知らない人たちで、時代が流れるのが良いような悪いような何だかその複雑な気持ちから読み始めていました。
長谷川純司の作風、読んでいて中原淳一みたいな感じなのかなぁと思ったら「少女の友」がモデルになっていたんですね。しかも実業之日本社で作られていて創業120年。なるほどー…って読んだ後に気づいてすみません。私以前弥生美術館にも行ったんだけどな…気づかなかった…。
波津子の成長物語でしたね。始めはオドオドしていて自分に自信がなくて、よくみんなイライラしないで見守っていたななんて思ったりもしたのですが(ひどい)素敵な女性へ成長していました。男性に囲まれて会議をする場面もありましたが、この時代に女性が働くというのはなかなか大変だったと思いますが、辛さを抱えつつもあしらい方も知っていたりしてかっこよかったです。
有賀主筆との関係が切なかったです。電話で交わした約束が切なかった…。
もしも…もしも…そう思わずにはいられなかったです。
時間がかかったけど、想いが伝わって良かったです。

<実業之日本社 2017.11>H30.2.9読了

地の星 なでし子物語 伊吹有喜4

地の星 なでし子物語地の星 なでし子物語
著者:伊吹 有喜
ポプラ社(2017-09-21)
販売元:Amazon.co.jp

今のわたしは、あの頃なりたいと望んだ自分になれているのだろうか。
遠州峰生の名家・遠藤家の邸宅として親しまれた常夏荘。幼少期にこの屋敷に引き取られた耀子は、寂しい境遇にあっても、屋敷の大人たちや、自分を導いてくれる言葉、小さな友情に支えられて子ども時代を生き抜いてきた。
時が経ち、時代の流れの中で凋落した遠藤家。常夏荘はもはや見る影もなくなってしまったが、耀子はそのさびれた常夏荘の女主人となり―。
ベストセラー『なでし子物語』待望の続編。

『なでし子物語』の続編です。前作から18年後、1998年が舞台です。
耀子は遠藤家の長男龍治と結婚し、瀬里という10歳の娘と暮らしています。
前作を読んだのが5年前で、もうほとんど覚えていないのですが、この2人は多分結構歳が離れていると思うのですが、どうして結婚に至ったのか…そう言った経過は一切かかれていません。
1998年は不景気で遠藤林業も窮地に追い込まれていました。常夏荘も売りに出すという噂が立ちます。
常夏荘で照子の後を継ぎ「おあんさん」として管理している耀子ですが、自分も働きに出たいと思いスーパーでパートの仕事を始めます。
いやー…最初は読んでいて辛かったです。働き慣れていないのもあるけど男性職員の差別というかいじめというか、あからさまで嫌でしたね。そして自分勝手。
店長が変わったことでスーパーも大きく変わっていきましたね。
そしてまさかまさかの展開にびっくりでした。
洋子は将来大学を出て海外でバリバリ働くのを目標としていたようなので、働く素質があったんでしょうね。これからどうなっていくのか気になります。
来年更なる新刊が出るみたいですがそれは10年前にさかのぼってしまうそうなので未来のことは読めないんですね、残念。
でも、どうして龍治と結婚するに至ったのかは気になるので新刊がとても楽しみです。

<ポプラ社 2017.9>H29.12.5読了

カンパニー 伊吹有喜5

カンパニーカンパニー
著者:伊吹 有喜
新潮社(2017-05-22)
販売元:Amazon.co.jp

合併、社名変更、グローバル化。老舗製薬会社の改革路線から取り残された47歳の総務課長・青柳と、選手に電撃引退された若手トレーナーの由衣。二人に下された業務命令は、世界的プリンシパル・高野が踊る冠公演「白鳥の湖」を成功させること。主役交代、高野の叛乱、売れ残ったチケット。数々の困難を乗り越えて、本当に幕は開くのか―?人生を取り戻す情熱と再生の物語。

あらすじを読んで過程が辛いことばかり起きるのかなと思ってドキドキしながら読んだのですが^^;確かに大変なことがたくさんありましたけど、人間関係はとても良くて、もちろん内容も面白くて一気読みでした。一気読みがもったいないくらい。
総務課長の青柳が配属された先はバレエ団の出向。青柳はどう対応するのだろうと思いましたけど、言われたことはきちんとやるいい意味で素直で真面目な人なんだろうなというのが伺える人でしたね。私は嫌いではなかったです。それにしても縁故採用ってめんどくさいっすね…夫婦仲が上司に筒抜けって嫌すぎる…そして夫婦仲の良しあしで自分の評価が決まってしまうとか虫唾が走る。青柳は上司に酷評でしたけど、それは上の頭が固すぎるんじゃないかなぁ。それは由衣に対してもそうだけど。由衣に対する言い方、今だとセクハラって言われますよ。読んでいて不快感しかなったです。私も割と大女だからこういうこと言われたらへこむしさっさとこんな会社辞めたいと思って読みました^^;
そんな二人が深くかかわっていくことになるバレエ団との関係がとても良かったです。
バレエ団に所属する人たちはみんなバレエのことが大好きで、だからか情熱的でまっすぐで、眩しかったです。
青柳と美波、高野と由衣、なんだかだんだんニヤニヤしてしまいそうな展開になって読んでいて楽しかったです。公演についてもドキドキしましたが、良かった…。
そして公演後の話が大好きです。特に高野と由衣。2人とも素直になればいいのに。
読んでいてこちらも元気づけられました。
やっぱり伊吹さんの作品大好きです。

<新潮社 2017.5>H29.7.6読了

情熱のナポリタン BAR追分 伊吹有喜5

情熱のナポリタン―BAR追分 (ハルキ文庫)情熱のナポリタン―BAR追分 (ハルキ文庫)
著者:伊吹 有喜
角川春樹事務所(2017-02-14)
販売元:Amazon.co.jp

かつて新宿追分と呼ばれた街の、“ねこみち横丁”という路地の奥に「BAR追分」はある。“ねこみち横丁”振興会の管理人をしながら脚本家を目指す宇藤輝良は、コンクールに応募するためのシナリオを書き上げたものの、悩んでいることがあって…。両親の離婚で離れて暮らす兄弟、一人息子を育てるシングルマザー、劇団仲間に才能の差を感じ始めた男―人生の分岐点に立った人々が集う「BAR追分」。客たちの心も胃袋もぐっと掴んで離さない癒しの酒場に、あなたも立ち寄ってみませんか?大人気シリーズ第三弾。

また逢えました〜。嬉しい。このシリーズ大好きです。
ただ、宇藤君に関しては良くも悪くもイマドキの青年で好きではない部分もあるんですけど^^;でも夢を追い続けている姿は私も見習いたいなと思っています。今回書き上げた脚本に関しては私もたぶん主人公の女の子は嫌いだと思うけど←
今回BAR追分にやってきたお客さんの話もそれぞれ色々ありましたね。両親の離婚で東京と山梨それぞれで暮らすことになった兄弟。兄は東京で暮らして働いていて、もしここにいたのが弟だったら。そう考えているのが切なかったですね。でも弟の明るさがとても良かったです。多分この形が良かったんじゃないかな。兄弟を離れ離れにさせるのはちょっとどうかと思ったけど。
シングルマザーの話も良い話でした。町内会長さんの遠藤がいい味出していましたね。そうそう、良くしていただいて自分は何もできないって思っていたら、それは他の同じように困っている人に返せばいい、私も似たようなことを言われたことが何度もありました。私はまだもらってばかりで返せてないなーと思って、返せる人間になりたいなーと思います。そしてとにかく柊君が可愛かった^^
最後の話が私にとって1番グッときました。自分も少しは似たようなことがあるのかもしれないです。空開さんの言葉が私にもグサグサ突き刺さりました。
タイトルの「情熱のナポリタン」最後まで読んだら空開さんの強い想いがさらに伝わってきます。私も好きなことへの情熱を持ち続けて生きていきたいなと思いました。
エンドロールも良かったです。桃子ちゃんはいつも美味しそうな料理を作って優しい素敵な人だけど、きっと桃子ちゃんも過去に色々大変なことがあったんだろうなと思います。宇藤君とどうにかなるのかなぁ。そこも気になるところ。
何だか終わりそうな雰囲気だけどこのシリーズはずっと続いていってほしいです。

<角川春樹事務所 2017.2>H29.4.8読了

今はちょっと、ついてないだけ 伊吹有喜5

今はちょっと、ついてないだけ今はちょっと、ついてないだけ
著者:伊吹 有喜
光文社(2016-03-17)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
かつて、世界の秘境を旅するテレビ番組で一躍脚光を浴びた、「ネイチャリング・フォトグラファー」の立花浩樹。バブル崩壊で全てを失ってから15年、事務所の社長に負わされた借金を返すためだけに生きてきた。必死に完済し、気付けば四十代。夢も恋人もなく、母親の家からパチンコに通う日々。ある日、母親の友人・静枝に写真を撮ってほしいと頼まれた立花は、ずっと忘れていたカメラを構える喜びを思い出す。もう一度やり直そうと上京して住み始めたシェアハウスには、同じように人生に敗れた者たちが集まり…。一度は人生に敗れた男女の再び歩み出す姿が胸を打つ、感動の物語。

この本を予約した頃、私もタイトルのようなことを思っていて。
絶対に自分の心に響く作品だろうなと思いました^^;そして実際にそうでした。
主人公はちょっとどころじゃないです。20代半ばで成功をおさめたものの、人の借金を背負い、10数年借金を返し続けて完済し、気づけば40代。
この作品は連作短編集になっているのですが最初のお話は読んでいて辛かったです。
主人公の立花は決して過去に縋っているわけではなく、むしろ過去をさらけ出すのを怖がっている。それでも諦めかけていた自分の夢をまた少しずつ追い始める姿に応援したくなりました。元々才能はある人なんですよね。確かに20代の頃は持て囃されて登りつめた部分もあったのかもしれないけど。
そして最初のお話で散々立花の事をバカにした宮川が、まさかバディみたいな感じになるとは思わなかったなぁ。ひどい奴だと思ったけど、だんだん良い人に見えてきて困りました^^;
瀬戸さんも自分の夢に向かって歩み始めたし、佐山さんはちょっと心配だけどでもちゃんと自分の足で歩いているし。
いい年した大人が自分のやりたいことを楽しそうにやっている姿にいいなーと思って読み終えました。
伊吹さんの作品は文章が優しいです。どんな人にも温かい手を差し伸べてくれているようで。私もこの物語の主人公たちのように前を向いて歩いていけるんじゃないかと思わせてくれます。
私も多分ついていない時期は抜けてきたかな。
でも更に前を向いていけるように精進していかなければとも思わせてくれた作品でした。

<光文社 2016.3>H28.6.11読了

オムライス日和 BAR追分 伊吹有喜5

オムライス日和 BAR追分 (ハルキ文庫)オムライス日和 BAR追分 (ハルキ文庫)
著者:伊吹有喜
角川春樹事務所(2016-02-12)
販売元:Amazon.co.jp

有名電機メーカーに勤める菊池沙里は、大学時代にゼミで同期だった宇藤輝良と再会する。卒業して五年、宇藤は「ねこみち横丁振興会」の管理人をしながら、脚本家になる夢を追い続けているという。数日後、友人の結婚式の二次会後に、宇藤がよくいるというねこみち横丁のBAR追分に顔を出した沙里だったが…(「オムライス日和」より)。昼はバールで夜はバー―二つの顔を持つBAR追分で繰り広げられる人間ドラマが温かく胸に沁みる人気シリーズ、書き下ろしで贈る待望の第二弾。

昨日と今日と1泊2日で東京へ行ってきました。私はいつも旅行の際は文庫本を3冊持っていくのですけどこの作品はその中の1冊。1日目JRで新千歳空港へ向かい、飛行機を待ち、乗り込んで離陸…くらいで読み終わってしまい^^;あと2冊も読み終わっちゃうんじゃないかという変な心配から始まりました。結果3冊目の半分くらいまででした。良かった←
ということで感想。
ついこの間読んだのに、宇藤君がどうしてこの商店街で住み込みで働き始めたのかきっかけをすっかり忘れていました^^;
「猫の恩返し」某映画を思い出しましたけどまあ、全く関係はありません。地域猫デビィが太ってきたと心配する桃子さん。宇藤君が尾行するもいつも同じところで見失う。そこで桃子さんは首輪にメッセージを付けることを思いつきます。デビィの謎から最後あんな展開になるとは思いませんでした。フッコさんが元気になって本当に良かった。
「オムライス日和」沙里の気持ちは分かったけどあんまり好きな子じゃなかったな。お友達同様。宇藤君、酷い言われようでしたね^^;それにしてはの展開がそれはないんじゃないの?と同性ながらちょっとイラっとしてしまいました。最後はよかったですけどね。
「ようこそ、餃子パーティへ」宇藤君、桃子さん、伊藤君が作った餃子が凄くおいしそうでしたー。食べたい。にしても伊藤君の謎が出てきて気になる感じでしたね。
「森の隠れ家」伊藤君の過去が明らかになりましたね。お店に来た女の子たち不躾でマナーがなっていないけど根底にある気持ちはわかるから切なくなりましたねぇ。でも、どうにもならないこともありますからね…。桃子さんが悩んでいる事、分かるけど、でも桃子さんはとても大人で料理も出来て素敵な女性だなと思うので今のままでいてほしいななんて思いました。宇藤君も仕事がちょっとだけど来て良かったね。また続編が出てほしいです。

<角川書店 2016.2>H28.5.4読了

BAR追分 伊吹有喜5

BAR追分 (ハルキ文庫 い 20-1)BAR追分 (ハルキ文庫 い 20-1)
著者:伊吹 有喜
角川春樹事務所(2015-07-11)
販売元:Amazon.co.jp

新宿三丁目の交差点近く――かつて新宿追分と呼ばれた街の「ねこみち横丁」の奥に、その店はある。そこは、道が左右に分かれる、まさに追分だ。BAR追分。昼は「バール追分」でコーヒーやカレーなどの定食を、夜は「バー追分」で本格的なカクテル、ハンバーグサンドなど魅力的なおつまみを供する。人生の分岐点で、人々が立ち止まる場所。昼は笑顔がかわいらしい女店主が、夜は白髪のバーテンダーがもてなす新店、二つの名前と顔でいよいよオープン!

伊吹さんの作品は暖かくて好きです。
今回もやっぱり元気づけられる素敵な作品でした。まず少し長めのプロローグから良かったです。人生の分岐点に自分が何を選ぼうと後悔しないようなきっかけを与えてくれるって素敵です。
この物語の主な主人公の宇藤君。
このままでいいのかと色々うじうじしてましたけど、商店街の人たちのおせっかいがまたよくて徐々に馴染んでいく感じも良かったです。
私はあそこまで人と人との距離が近いところで生活はしたことがないんですけど、でも私はかまってちゃんだから人と関われるのが嬉しくて楽しいなぁと思う気がします。
江口くんは他人とは思えず^^;私はそこまで熱を上げていないけどそこまで尽くしていた人のしたこと、そりゃ呆然となるわ…。江口君が次なる生きがいを見つけてくれたら嬉しいなと思いました。まあ、私が言う権利は今のところないんですけど^^;
最後のお話、梵さんと綺里花の話が凄く好きでした。オチにはびっくりしたけどそんなことはこの二人の間では何の問題でもないのだろうなと思います。最後がとても綺麗で眩しくて。読んでいて涙が出てきました。一人で生きていると思っていても周りはちゃんと見ていてくれているんですよね。2人とも愛おしかったです。
読んでよかった。元気をもらいました。

<角川春樹事務所 2015.7>H27.10.21読了

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ミッドナイト・バス 伊吹有喜5

ミッドナイト・バスミッドナイト・バス
著者:伊吹 有喜
文藝春秋(2014-01-24)
販売元:Amazon.co.jp

東京での過酷な仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている利一。
ある夜、彼が運転するバスに乗ってきたのは、十六年前に別れた妻だった――。
父親と同じく、東京での仕事を辞めて実家に戻ってきた長男の怜司。
実現しそうな夢と、結婚の間で揺れる長女の彩菜。
そして、再婚した夫の浮気と身体の不調に悩む元妻、美雪。
突然の離婚で一度ばらばらになった家族は、今、それぞれが問題を抱えて故郷に集まってくる。全員がもう一度前に進むために、利一はどうすればいいのか。
家族の再生と再出発をおだやかな筆致で描く、伊吹有喜の新たな代表作!

先日、王様のブランチに伊吹さんが出演されていました。出演されているのを見ているといつも思うのですが、伊吹さんって凄く雰囲気の素敵な方なんですよね。言葉の一つ一つをとても丁寧に話されている感じ。お話されている姿を見るだけで癒されるような、そんな方で、私大好きなんです。
ということで新刊を読みました。
いやー長かったです←
主人公の利一がかつて妻だった美雪と再会し、2人の間に生まれた怜司と彩菜との関係や2人自身の今やこの家族と関わった方々のお話も書かれているので長い長い。
でも、16年全く会わなかった、ましてや別れ方が良くなかったからなおさら関係性が変わるのは難しいですよね。歩み寄ったような堂々巡りのようなそんな関係がずっと続いていてもどかしくてもどかしくて。そして出てくる人みんな間が悪い^^;なんで今ここで出てくるの!?っていうことが何度かあったので。
利一と美雪の想いも伝わってきましたが、それよりも私は怜司や彩菜の方が感情移入したかな。特に怜司。怜司はきっと昔から頭が良くて人にちゃんと気遣える子だったんだろうなと思う。だからちょっとした、でも怜司にとっては大きなことが怜司を縛り付けていたんだろうなと思う。怜司の背中の傷の理由を知ったとき、悲しくて悲しくて。そんなに悩まないでって叫びたくなりました。美雪の怜司にかけた言葉にうるっとしました。
怜司も彩菜も、そして利一も美雪も、だいぶ遠回りしてしまったけど、これで前を向いていけるかなとほっとして読み終えました。
そして最後。志穂にとっては本当に身勝手でわがままな男だと思うけど。待っていてくれたら良いなと思います。きっと大丈夫ですよね。

〈文芸春秋 2014.1〉H26.4.22読了

なでし子物語 伊吹有喜5

なでし子物語 (一般書)なでし子物語 (一般書)
著者:伊吹 有喜
ポプラ社(2012-11-07)
販売元:Amazon.co.jp

父を亡くし母に捨てられ、祖父に引き取られたものの、学校ではいじめに遭っている耀子。夫を若くして亡くした後、舅や息子と心が添わず、過去の思い出の中にだけ生きている照子。そして、照子の舅が愛人に生ませた男の子、立海。彼もまた、生い立ちゆえの重圧やいじめに苦しんでいる。時は一九八〇年、撫子の咲く地での三人の出会いが、それぞれの人生を少しずつ動かしはじめる―『四十九日のレシピ』の著者が放つ、あたたかな感動に満ちた物語。

読みました。
代々林業で栄えてきた遠藤家の跡取りである立海と山の管理人の孫娘耀子、そして遠藤家の跡継ぎだった夫龍一郎を亡くし、遠藤家の敷地を管理することになった『おあんさん』こと照子の主に三人が、常夏荘で過ごす日々について語られています。
ゆったりとした時間が流れている常夏荘。でも、ここに住む立海も耀子もいじめに遭っていて心にフィルターをかけている部分がありますし、照子も夫を亡くして夫の残り香を感じながら生きています。照子と夫龍一郎の関係がとても素敵でした。新婚旅行での会話も龍一郎の晩年の2人も。2人にはもっと長く幸せに暮らしてほしかったなと思いました。
立海と耀子も身分は違えど悩んでいる根底は同じで、二人とも自分の殻の中に閉じこもる傾向がありました。でも、二人で過ごしていくうちにその殻が破られていきます。家庭教師の青井という女性も大きく関わっていました。登校拒否をする耀子を何とかしようと頑張る青井。照子はどうしてそこまであの子に尽くすのかと疑問を抱きますが、その理由も読んでいくうちに分かっていきます。
最終的に大人に翻弄されて立海も耀子も可愛そうでした。でも、2人ともちゃんと前を向いていたので良かったです。
素敵な物語でした。伊吹さんの描かれる作品好きです。「風待ちのひと」も読みたいと思っているのですが・・・来年は読めるかな?

〈ポプラ社 2012.11〉H24.12.20読了

四十九日のレシピ 伊吹有喜5

四十九日のレシピ
四十九日のレシピ
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オススメ!
熱田家の母・乙美が亡くなった。
気力を失った父・良平のもとを訪れたのは、真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。
乙美の教え子だったという彼女は、生前の母に頼まれて、
四十九日までのあいだ家事などを請け負うと言う。
彼女は、乙美が作っていた、ある「レシピ」の存在を、良平に伝えにきたのだった。

ネタバレあります

今日、読み終えたらちょうど「王様のブランチ」で紹介されていて嬉しくなった。
勤めている図書館で、たくさん予約者がついていて、この本はなんだろうと思ったのがきっかけで手に取りました。図書館に勤めていると、今まで以上に読む本が増えて嬉しいやら大変やら。
借りたのは家の近くの図書館だったのだけど、借りた時は予約者がいなかったのに、今見てみたら14人も予約者がいてテレビの力って凄いなーと思った。
良かったです。凄く感動して、涙しました。
って、言うコメントがブランチでたくさん紹介されていてちょっと悔しいのだけど^^;
亡くなった乙美は良平の後妻で、娘の百合子とは血がつながっていない。
でも、明るさと笑顔が印象的の、素敵な母親。
そして亡くなったのは突然で、良平も百合子も気落ちして生きる気力を失っていた。
良平が、乙美の亡くなる直前にこしらえたお弁当を持っていかなかった事で、激しく自分を責めているのが本当に切なかった。
百合子は乙美の死もそうだけど、自分の家庭の問題があって、人生の岐路に立たされていた。
百合子の問題は、100%百合子が悪くないとは言えない。
でも、夫浩之のした事は許される事ではないし、うだうだうじうじしているところが大っ嫌いだった。お義母さんが、かわいそうだった。
良平の姉珠子も嫌い。
自分の意見が正しいと思っているから、ものすごく相手を傷つける事を言っていても気付いていない。
夫婦になったら、子どもを持つのが当たり前って言う概念で凝り固まっていて、子どもを持たない夫婦を変だというのはおかしい。
いろんな考えを持っている夫婦がいて、産みたくても産めない人だってきっとたくさんいるのに。
井本はとってもいい子だった。井本って名前だけであの芸人さんがコギャルの格好をしてる感じを想像してしまうのだけど。もしくは「オヤジぃ。」の矢沢心さんの役。
良平が、井本やハルミと関わる事でだんだん若々しく、優しいオジさんになっていくのが読んでいて分かりました。もともときっと、良い人なんだろうけど、上手く言葉で伝えられるようになったと言うか。
百合子も、強い人になれたような気がする。何だかんだで上手く収まって良かったね。私は微妙に納得していないけど。納得していないと言う事はまだ恋愛については浅いと言う事なのだろうか・・・
良平の1人で川にいるシーンが本当に切なくて悲しくて。涙が出てきました。
この作品好きです。読んでよかったです。

〈ポプラ社 2010.2〉H22.5.29読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6を愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
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