苗坊の徒然日記

読書とV6をこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

柚木麻子

オール・ノット 柚木麻子5

オール・ノット
柚木麻子
講談社
2023-04-18


友達もいない、恋人もいない、将来の希望なんてもっとない。
貧困にあえぐ苦学生の真央が出会ったのは、かつて栄華を誇った山戸家の生き残り・四葉。
「ちゃんとした人にはたった一回の失敗も許されないなんて、そんなのおかしい」
彼女に託された一つの宝石箱が、真央の人生を変えていく。
今度の柚木麻子は何か違う。
これがシスターフッドの新しい現在地!

苦学生の真央がアルバイト先で出会った山戸家の生き残りである四葉。
年齢も境遇も違うのになぜか気になる存在となり、四葉と話をすることで、今まで知らなかった世界が広がっていく。
真央がみるみる変わっていったので良かったなぁと思いつつ、でもページ数はまだあるな…と思ったら四葉と関わった女性たちに順番に主人公が変わっていき四葉との出会いを話していく展開でした。真央以外は回想で真央が話を聞いているような感じでしたが。
舞と同様に私もミャーコのことは好きになれなかったなぁ…ちょっと…自由奔放過ぎるしガサツすぎるし人のこと気を使わな過ぎじゃない?なぜそんなにモテるの?←
山戸家に何があったのか、読んでいくうちに分かっていきますが、一葉と四葉が決断したことは素晴らしいと思います。今ならちゃんと戦える気がするけど、10年前だったら確かにそんな感じだったかもなぁ…と虚しくもなりました。
「ちゃんとした人にはたった一回の失敗も許されないなんて、そんなのおかしい」この台詞が胸に突き刺さります。
でも、四葉の今の凛とした佇まいは素敵で、私も近くにいたら一緒にいて色々知りたいと思うかもしれません。
途中から四葉自身は登場しなくなるのにずっと存在が残っているのが凄いですね。
真央が歳を重ね、生きるのが大変になっていく世の中で同じような境遇の女性に出逢い、四葉と同じことを返していく。それも良い展開だなと思いましたけど、最後の四葉が最高すぎました。元お嬢様なのにやってることがロック過ぎましたよね。面白かったです。

<講談社 2023.4>2023.6.22読了

とりあえずお湯わかせ 柚木麻子5

とりあえずお湯わかせ
柚木 麻子
NHK出版
2022-10-19


このエッセイもまた、公開の日記帳だ。前向きで後ろ向きで、頑張り屋で怠け者で、かしこく浅はか、独特な人物の日々の記録だ(前書きより)――はじめての育児に奮闘し、新しい食べ物に出会い、友人を招いたり、出かけたり――。そんな日々はコロナによって一転、自粛生活に。閉じこもる中で徐々に気が付く、世の中の理不尽や分断。それぞれの立場でNOを言っていくことの大切さ、声を上げることで確実に変わっていく、世の中の空気。食と料理を通して、2018年から2022年の4年間を記録した、人気作家・柚木麻子のエッセイ集。各章終わりには書下ろしエッセイも収載。

先に謝っておきますが、私、柚木さんがご結婚されていることもお子さんがいることも知りませんでした^^;すみません。そしてなぜか中盤までお子さんは娘さんだと思っていました…途中息子って出てきて自分の誤りに気付きました…。
柚木さんが持病によりコロナ禍の今大変だということはどこかで読んだ気がしましたが、特に2020年は怖かったですよね…。外で働く旦那さんと生活を分けないといけないし、お子さんが通う保育園は休園になるしで心も体も大変だっただろうなと思います。でも、ご本人も後日談でよくやってるなとおっしゃっていましたが、コロナ禍だからこそ今までやっていなかったことをやってみようとお子さんと色々挑戦している姿は本当に凄いなと思いました。
お子さんとの暮らしについても面白く読みましたが、政治的な発言をしているエッセイもとても興味深かったです。確かに今まで性別や職業等関係なく政治的な発言をしている人ってあまりいなかった気がするんですけど、コロナ禍になってから特に増えてきている気がします。海外に比べてこういう発言って日本は少ないと思うんですよね。だから行き過ぎやり過ぎは良くないけど意見を出し合うのは良いことだと思います。
評判が良かったという「ママは武器なんていらない」が好きでした。
あと政治の話じゃないけど、島本さんが直木賞を獲った時にそんなあほな質問をした記者がいたんですか…?受賞作「ファースト・ラヴ」ですよね…?どこに食べ物の要素が?なんで旦那さんのことを聞くの?バカじゃないの?←
柚木さんが直木賞を受賞されたときにぜひともサクラでもいいから←記者がこの質問をして柚木さんが考えた35パターンの中から会心の一撃を放ってほしいなと思います。もしくは島本さんとのやつでもいい!むしろ見たい!←柚木さんの作品は食べ物が出てくる作品が多いから尚更あほな質問をしてくる人がいそう。
私は結婚してないし子供もいないけど、元気をもらいました。面白かった!

<NHK出版 2022.10>2022.11.29読了

ついでにジェントルメン 柚木麻子5

ついでにジェントルメン
柚木 麻子
文藝春秋
2022-04-08


編集者にダメ出しをされ続ける新人作家、女性専用車両に乗り込んでしまったびっくりするほど老けた四十五歳男性、男たちの意地悪にさらされないために美容整形をしようとする十九歳女性……などなど、なぜか微妙に社会と歯車の噛み合わない人々のもどかしさを、しなやかな筆致とユーモアで軽やかに飛び越えていく短編集。

「ComeComeKan!」新人の小説家と文藝春秋に置かれている銅像の菊池寛さんとのお話(笑)菊池寛さんは失礼ながら著作も読んだことがないですし人となりもあまり知らなかったのですが、こんな感じだったんすか…?こんな感じだったら面白いなー。でもきっと手広くいろんなことをされていたみたいだから、柔軟な方だったんだろうなとは思いますよね。斬新で面白かったー
「渚ホテルであいましょう」毛利は典型的な昭和の男でしたね―考え方が。ダサ!めっちゃダサ!やることも古い!若い女性にそんなことしたら怖がるに決まってるじゃないの!(ひどいいいよう)とある家族と出会って、多少視野が広くなって良かったね←
「勇者タケルと魔法の国のプリンセス」この作品が1番良くわからなかったな…現代の主人公がちょっと気持ち悪かった…ごめん。
「エルゴと不倫鮨」この作品、どこで読んだか忘れたのですが既読でした。読み終えた後にスカッとしますよね。いい気味!って言いたくなりました^m^女の子たちの目が覚めて皆が仲良くなって良かった。
「立っている者は舅でも使え」面白かったなー。夫の浮気が原因で地元へ帰ってきて、まさか舅までも家を出てくるとは思わないですよね(笑)でも、何やかやで良いコンビになっている感じが読んでいる側は楽しかったです。舅さんは最終的には地位を手に入れたわけだけど、昔は貧乏で苦労もあったからか順応性があっていい人だなぁという印象でした。まあ、それを奥さんが生きている間にもすればよかったんですよね(と厳しいことも言ってみる)
「あしみじおじさん」この作品好きでした!主人公の女の子が整形しようと待合室でたまたまとった世界名作全集を読み、自分自身が変わらないまま幸せになっていく世界の名作の少女たちを知って自分もそうなりたいと思っているのが斬新で面白かったです。なぜ美容整形に世界名作集があったのか、それも後々分かって行くし、人が繋がっていくのも面白かった。特に昌美が好きでしたね。自分のことを分かっていて周りも俯瞰して見られる聡明さを感じました。亜子もちゃんと自分で自分の道を切り開けそうで何よりです。
「アパート一階はカフェ―」大塚女子アパートメントの存在を知りませんでした。昔だったらこうした女性専用のアパートとか矢面に立たされるだろうけど、それにしても出てくる男性陣が虫唾が走る人たちばかりで気持ち悪かったです…不躾で偉そうで…。菊池寛さんがこちらにも登場。気持ち悪い男性ばかり登場したので菊池さんがすんごい紳士に見えましたね。紳士なんですけど^^

<文藝春秋 2022.4>2022.5.25読了

らんたん 柚木麻子5

らんたん
柚木麻子
小学館
2021-10-27


大正最後の年。かの天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児は、渡辺ゆりにプロポーズした。
彼女からの受諾の条件は、シスターフッドの契りを結ぶ河井道と3人で暮らす、という前代未聞のものだったーー。

この作品を読むまで河井道という方を知りませんでした…。
津田梅子さんが津田塾大学を設立したことは知っていましたが、同じように女性で学校を創られた方がいらっしゃったんですね…。って他にもいらっしゃるかもしれませんが…。
明治、大正、昭和を生きた女性。この時代には珍しく英語を学び留学をし、自立した女性でした。
だからこそ、津田梅子さんのように苦労したところもたくさんあると思いますが…それでもバイタリティ溢れる方で常に動いて人に関わって前に進んでいく。その姿が素敵だと思いました。
それにしても出てくる方々が知っている名前ばかりで驚きました。新渡戸稲造、有島武郎、野口英世、津田梅子、大山捨松、平塚らいてう、広岡浅子、村岡花子、柳原白蓮…もっと出てきてます。私が覚えていないだけで^^;マッカーサーともお話したことがあるとか凄いし、ロックフェラーが出てきたときは変な声が出ましたよ…凄い…。
道に限らずたくさんの女性たちが自分の中の「自立」を目指して活動していたんですね。どの思想が良い悪いということではないのだと思いました。男性の庇護を受けるしかなかった女性が自分の足で立って生きていけるよう、たくさんの女性たちがこの時代に尽力したのだということが分かって本当に良かったです。
シスターフッドの関係も素敵でした。あらすじだけを読むと一体どういうことだ?としか覚えなかったのですが^^;乕児さんはとても柔軟で優しい方だったんですね。乕児さんの懐の深さも印象的でした。
終盤は感動して泣きそうになるほどでした。ある人が言った「夢は叶うものですよ。でもそれは今すぐではなく、何十年も先かもしれません。私たちは戦うことと同時に、待つことも大切です」という言葉が私の中で1番心に響きました。この言葉を忘れずに生きていきたいです。戦っていきたいです。
私が大学に通えて自立できるくらい稼いで働けるのは、この時代に必死に生きてきた女性のお陰なのかもしれません。この時代の女性たちに恥じないよう、自分も自分をしっかりと持って生きていきたいと思いました。知ることが出来て本当に良かったです。

<小学館 2021.10>2022.2.16読了

マジカルグランマ 柚木麻子4

マジカルグランマ
柚木 麻子
朝日新聞出版
2019-04-05


若い頃に女優になったが結婚してすぐに引退し、主婦となった正子。映画監督である夫とは同じ敷地内の別々の場所で暮らし、もう五年ほど口を利いていない。ところが、75歳を目前に先輩女優の勧めでシニア俳優として再デビューを果たすことに! 大手携帯電話会社のCM出演も決まり、「日本のおばあちゃんの顔」となるのだった。しかし、夫の突然の死によって仮面夫婦であることが世間にバレ、一気に国民は正子に背を向ける。さらに夫には二千万の借金があり、家を売ろうにも解体には一千万の費用がかかと判明する。
亡き夫に憧れ、家に転がり込んできた映画監督志望の杏奈、パートをしながら二歳の真実ちゃんを育てる明美さん、亡くなった妻を想いながらゴミ屋敷に暮らす近所の野口さん、彼氏と住んでいることが分かった一人息子の孝宏。様々な事情を抱えた仲間と共に、メルカリで家の不用品を売り、自宅をお化け屋敷のテーマパークにすることを考えつくが――
「理想のおばあちゃん」から脱皮した、したたかに生きる正子の姿を痛快に描き切る極上エンターテインメント! 「週刊朝日」連載の書籍化。

いやーなんというか…パワフルなおばあちゃんでしたねー…。こんなパワフルでよく50年近くもひっそりと大きな屋敷の中だけで生きていましたね。ひっそりでもないのか。それとも今までの分が爆発されたのか…。
柚木さんが主人公の正子は良い人というわけではないとおっしゃっていましたが、確かにそうで、私は近づきたくないしお友達にはしたくないタイプです^^;
それでもお金を貯めるため、自分が再び注目されて女優に返り咲くためのしたたかさやパワフルさは尊敬に値しますよね。何もかも諦めているようで諦めていない。
それに自我が強いわりに頭は柔軟で息子の事もさらりと理解するし、現代の諸々にもちゃんと順応してる。そこも凄いなと思いました。
でも後半からの諸々はちょっとやり過ぎというか怒涛の展開過ぎてちょっとついていけませんでした^^;パワフルすぎる。それでも確かに正子は泣いたり笑ったり怒ったり、なんだかんだで楽しそうで幸せそうでなによりだと思いました。

<朝日新聞出版 2019.4>2019.5.31読了

デートクレンジング 柚木麻子5

デートクレンジングデートクレンジング
著者:柚木 麻子
祥伝社(2018-04-11)
販売元:Amazon.co.jp

「私にはもう時間がないの」
女を焦らせる見えない時計を壊してしまえたらいいのに。
喫茶店で働く佐知子には、アイドルグループ「デートクレンジング」のマネージャーをする実花という親友がいる。
実花は自身もかつてアイドルを目指していた根っからのアイドルオタク。
何度も二人でライブを観に行ったけれど、佐知子は隣で踊る実花よりも眩しく輝く女の子を見つけることは出来なかった。
ある事件がきっかけで十年間、人生を捧げてきたグループが解散に追い込まれ、実花は突然何かに追い立てられるように“婚活"を始める。
初めて親友が曝け出した脆さを前に、佐知子は大切なことを告げられずにいて……。
自分らしく生きたいと願うあなたに最高のエールを贈る書下ろし長編小説。

あらすじから色々抉られる感満載の作品でしたが^^;楽しく読めました。
アラサー、アラフォー、婚活、妊活…もう良いよ。放っておいてよ…。と個人的には思うんですけど^^;
私も30歳を過ぎて、同じ年の友人と話す内容はやっぱりこういう話題も出てきます。
それでも感じたのはどんな境遇であれ悩みはあるし、隣の芝生は青いって思うこともある。独身、既婚、子どもがいる、いない、働いている、この歳になると本当に色んな境遇の人がいます。でもそれぞれ楽しんでいたり悩んでいたりするんだなぁと話をしていると感じます。専業主婦の人は社会と関わりたいと言っているし、既婚で働いている人はもう止めたいって言ってる人もいるし^^;そんなもんですよね。
私は今まで結婚したいとか子供が欲しいとか思ったことがないし、焦ったこともないのだけど、35歳になったら実花の様に焦って何か行動しようと思ったりするようになるのかなぁ。もうすぐだけど。なさそー。
それでも実花のアイドル感は凄く分かります。はまってしまう理由も分かる。実花が言った「時間を止めることの出来る人は、アイドルだと思ってる」という言葉が分かり過ぎて何だか色々思い出しちゃってその一文だけで泣きそうになりました^^;
現実が辛くても哀しくても、その一瞬だけ何もかも忘れて幸せに浸らせてくれる。そういうことが、この約20年何度もあったなぁ…って。興味のない人にどんなにイタイ人と言われても構わない。アイドルのお陰で私は人生が豊かになったと思っているから。その気持ちはずっと大事にしたいなと思います。じゃないと、自分自身でこの20年を否定してしまうことになってしまうから。
佐知子の実花に対する想いは分からなくはないけど、でもやっぱり私は少し分からない。佐知子の現在が「安住の地」だと思っているわけではなくて、基本的に佐知子はヲタクじゃないから。佐知子は本当に恵まれていると思います。家族はチームだって言ってくれる旦那さんがいて、体調や精神面をちゃんと理解してくれる義母がいて友達がいて。私も少し嫉妬しちゃうかなぁ。どうかなぁ。
境遇が変わったら友人関係が変わってしまうのは仕方がないことだと思います。どんなに仲が良くても、時間が経ったら変わってしまうことがある。それを受け止めることも必要なのかな。それでも関係性の変わらない佐知子と実花の関係は羨ましさも感じました。
読んで良かったです。

<祥伝社 2018.4>4H30.5.16読了

名作なんか、こわくない 柚木麻子5

名作なんか、こわくない名作なんか、こわくない
著者:柚木 麻子
PHP研究所(2017-12-15)
販売元:Amazon.co.jp

アニメ番組「世界名作劇場」のようにゆっくりとした展開で名作を紐解いていきたい……そんな思いに駆られた著者が、古今東西の文学を読み解き、その魅力とそのお話にまつわる思い出を綴ったのが本書。
名作というと敷居が高いと感じている人が多いと思うが、ページをめくってみると、そこにいるのは今の私たちと変わらない悩みやコンプレックスを抱えた人々。友情、恋の駆け引きといったワクワクするようなお話から、裏切り、三角関係といったギラギラしたお話までが、余すところなく描かれている。
ここでは、有吉佐和子の『悪女について』、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』からカズオ・イシグロの『日の名残り』まで、全57冊の読みどころと、柚木氏の視点ならではの新しい魅力を紹介。読んだことがある人、これから読む人、読むつもりがない人も愉しめるブックガイドになっている。
若手人気作家の日常生活も垣間見られる、キラキラした一冊。

柚木さんが今回紹介された小説、1冊も読んでいませんでした^^;内容を知っている本もありましたがちゃんと本を1冊読んだというのはなかったな…。ちょっとショック。
今年掲げている小さな目標として、世界の名作を読むというのがありました。日本でも世界でも名作と言われ読まれ続けている本を読みたいなと思って。改めてそういう本を読んでいないなということが分かりました。
柚木さんが書かれる読書案内はとても分かりやすくて内容を知るとっかかりとしてとても良かったと思います。
特に読んでみたいと思ったのは「愛の妖精」「悪女について」「アップルパイの午後」「午後の踊り子」「ねじの回転」「ジェイン・エア」「大いなる遺産」「春にして君を離れ」「緋文字」かな。1冊は今年中に読みたい←低い目標
柚木さんが「世界名作劇場」のようなことがやりたいとあとがきに書かれていましたが何となくわかりました。私も小さい頃からこの枠のアニメを見ていたので。1番好きなのは「ロミオの青い空」でした。原作は「黒い兄弟」こちらは読みました。こうやって好きになったものを知ろうと調べたり読んだりするのって素敵だなとそういえば思ったんでした。その頃の気持ちに戻ってまた名作を読んでみたいなと思います。

<PHP研究所 2017.12>H30.1.11読了

さらさら流る 柚木麻子4

さらさら流るさらさら流る
著者:柚木 麻子
双葉社(2017-08-17)
販売元:Amazon.co.jp

あの人の内部には、淀んだ流れがあった―。28歳の井出菫は、かつて恋人に撮影を許したヌード写真が、ネットにアップされていることを偶然発見する。その恋人、垂井光晴は菫の家族や仲間の前では見せないが、どこか不安定な危うさを秘めており、ついていけなくなった菫から別れを告げた。しかし、なぜ6年も前の写真が出回るのか。苦しみの中、菫は光晴との付き合いを思い起こす。初めて意識したのは、二人して渋谷から暗渠を辿って帰った夜だった…。菫の懊悩と不安をすくいとりながら、逆境に立ち向かうしなやかな姿に眼差しを注ぐ、清々しい余韻の会心作。

あらすじを読んだだけで読むのが怖いというか読むことに対して怖気づいてしまったのですが読みました。作品の中のテーマであるリベンジポルノは結構ニュースでも取り上げられていますよね。
撮る方も悪いが撮らせる方も悪い。そういう言い方もされていますが、だからと言ってその写真を他人が勝手にばら撒いていいはずがありません。私は撮らせたくないし今だったら嫌だと言えると思うけど、それでももしかしたら大学生の頃に好きな人に頼まれたら、嫌でも断れなかったかもしれないな…と思ったりもしました。その人に嫌われたくないから嫌々でもやってしまう。その心理に付け込んでいるような感じが嫌でしたね。
菫は良い意味で周りに守られて生きてきたんでしょうね。友人の百合も両親も弟も、みんな菫のことが大事で大好きなんだなというのが伝わってきて読んでいるこちらも羨ましいと思うくらいでした。
そんな優しい温かい家庭に入り込んでしまった複雑な家庭環境の中で育った光晴は何とも言えない気持ちになったのは分かりますけど、でもそれと菫の家庭環境は関係ないですからね。
「過去に辛いことがあったのかもしれないけど、そんなの、私のせいでも、まして彼女のせいでもないですよね?」という、同僚の言葉に凄く同意しました。ホント全くその通り。自分の不満を人に最悪の形でぶつけないでほしいです。
にしてもその流出のきっかけとなった現場、最低ですね。光晴の言動も最低だし周りの男たちも最低です。私、大人数の飲み会の場って大嫌いなんです。特に酔っぱらって横柄な人が多くなる場所が。って好きな人はいないか。そういう飲み会に行かざるを得なかった時代があったこともあって、ますます嫌いになりました。絡まれるのも本当に身の毛がよだつほど嫌でした。そんな場所に小学生からいて、そんな大人ばかり見ていたあの少年は本当に可哀相。そんな大人ばかりじゃないと知って良い大人になってほしいなと思いました。
流出した理由というか原因というか、それも本当にひどい話ですね。でも、そう言うことが現代ではあり得るんでしょうね。本当に信じられない。吐き気がします。
菫が少しずつでも前を向いて歩きだしているのが良かったです。百合への提案は突飛だったような気もしますけど、菫にとっては必要なことだったんでしょうね。
でもあの先輩の言動も気に入らなかったなー。おめーがそう言うの本当にダメとか知らねーよ。おめーがきいて来たんだろうが!って暴言も出ましたよね。自分がやってはいけないことをしてしまったという自責の念もあるからずっと悩んで誰にも言えないでいたのに、そういう人に対してあれはないわー。心の中でそう思っていたとしても、もっと言えることがあったと思います。私もそうありたい。

<双葉社 2017.8>H29.11.9読了

BUTTER 柚木麻子4

BUTTERBUTTER
著者:柚木 麻子
新潮社(2017-04-21)
販売元:Amazon.co.jp

結婚詐欺の末、男性3人を殺害したとされる容疑者・梶井真奈子。世間を騒がせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿と、女性としての自信に満ち溢れた言動だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、親友の伶子からのアドバイスでカジマナとの面会を取り付ける。だが、取材を重ねるうち、欲望と快楽に忠実な彼女の言動に、翻弄されるようになっていく―。読み進むほどに濃厚な、圧倒的長編小説。

いやー…濃かったですね。濃厚な長編小説。まさにタイトルのバターのような濃厚さでした。里佳が梶井にインタビューをし、途中梶井の言葉に翻弄されて吸い込まれていくのではないかと心配になりました。私も、梶井の言葉に引き込まれて行きました。
冒頭の、里佳が伶子にバターを買ってきてと頼まれて、なかったからマーガリンを買って言った時、思わず突っ込んでしまいましたよね。バターとマーガリンは違うしバターをちゃんと使う人ならマーガリンは邪道というか使わないんじゃないかなぁとか。
それくらい、料理や食べ物に関心がなかった人が、最後は変わりましたよね。
私も少し高めのバターを買って食べてみたいなーと思いました。それに食べ物に対しての考え方も引き込まれました。健康とか美容とか色々気を付けて食べているのに効果があるんだかないんだかわからなくて、それなら食べたいものを食べたいように食べればいいんだよねー。とか。段々消化不良になっていって同調しなくなっていきましたが^^;
この作品が元になっている事件から、もう8年も経つんですね。当時は確かに衝撃的だったなぁ。失礼ながら容疑者の顔を見たときはあれ?と思いましたよね。ブログの写真も美味いこと撮ってて全然雰囲気が違ったって言うのもあるし…。
梶井の男女の関係の考え方は時代錯誤で今の時代とは逆をいっていますよね。それでもある程度の年代の男は確かにそういう女性を求めているのかも。いや、若者だってそういう想いを持っている人やそれが当たり前だと思っている人もいるかもしれない。
それでも私は里佳のような生き方の方が良いな。あんな激務は無理だけどちゃんと仕事を持って自分が稼いだお金で好きな物を買いたい。
里佳は真摯に梶井に向き合っていたと思うけど、まあ素直に進むとは思わなかったですよね。こうやって梶井は人を信じさせて裏切ってこれからも一人で生きていくんでしょうね。悲しいですね。
この事件を通して里佳をはじめ周りの人たちが自分の生き方と向き合って良い方向へ行ったことは良かったかな。

<新潮社 2017.4>H29.7.16読了

幹事のアッコちゃん 柚木麻子5

幹事のアッコちゃん幹事のアッコちゃん
著者:柚木 麻子
双葉社(2016-02-17)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
背中をバシッと叩いて導いてくれる、アッコさん節、次々とサク裂!妙に冷めている男性新入社員に、忘年会プロデュースの極意を…(「幹事のアッコちゃん」)。敵意をもってやって来た取材記者に、前向きに仕事に取り組む姿を見せ…(「アンチ・アッコちゃん」)。時間の使い方が下手な“永遠の部下”澤田三智子を、平日の習い事に強制参加させて…(「ケイコのアッコちゃん」)。スパイス絶妙のアドバイスで3人は変わるのか?そして「祭りとアッコちゃん」ではアッコ女史にも一大転機が!?突破の大人気シリーズ第3弾。

久しぶりにアッコちゃんに会えました!会いたかったです!
そして今回はオールアッコちゃん!これが初だったので嬉しかったです。
三智子との関わりもたくさんあって嬉しかったです。
「幹事のアッコちゃん」新入社員の男の子はホントさとり世代ってくくっちゃいたくなるような感じの子でしたね。職場であんまり関わりたくない感じ←
それでもアッコさんと出会ったことで変わってよかったですね。幹事は私も嫌だけどこういう考え方をすればいいんだって思いました。なかなか難しいですけどね。
「アンチ・アッコちゃん」アッコさんを嫌っているアッコさんが登場←
ホント自分の性格に難ありって気づいて良かったですよ(ひどい)お互い苦手意識があったけど、会ってちゃんと話せて良かったですね。どんな人でもみんながみんな好きになるわけじゃないですからね…。それにしてもこの回は珍しく弱弱しいアッコさんが登場して新鮮でした。
「ケイコのアッコちゃん」この回は三智子がアッコさんに振り回されてて最初を思い出す感じでしたねー。それにしてもどのお稽古も面白そうでした。アッコさんはどんな相手に対しても見下したりしないし、凄いと思ったら素直に凄いっていうところが素晴らしいなと思います。けん玉のくだりが大好きです。
「祭りのアッコちゃん」アッコさんと三智子が敵対関係になりそうでドキドキしました。
でも、お互いにいろんな想いがあったのが分かって何だか感動しました。
最後まで読み終えたときに何だか涙が出て来そうで。アッコさんは働く女性の味方でいてくれて本当にありがたいなと思います。
日々の生活で疲れちゃうときもあるけど、一食一心。ランチもそうだけど一つ一つの食事を丁寧に美味しく食べるっていうことだけでも私も始めたいなと思いました。自炊でも外食でも美味しいもの食べたいし。
どうにかなりそうなところから充実させて、私も前を向いて生きていきたいと思いました。
アッコさんと三智子の関係が最終的に友人になっていたのがとても素敵でした。何だか終わりそうな感じでとっても寂しいです。またどこかで2人に会えたらいいなと思います。
私もアッコさんにいろんなことを教わりました。私もアッコさんのように何歳になっても新しいことにチャレンジしたいし前向きに生きていきたい。
私も頑張ろうと思って読み終えました。

<双葉社 2016.2>H28.4.30読了

3時のアッコちゃん 柚木麻子5

3時のアッコちゃん3時のアッコちゃん
著者:柚木 麻子
双葉社(2014-10-15)
販売元:Amazon.co.jp

アッコ女史ふたたび! 大人気の「ランチのアッコちゃん」に、待望の続編が登場!!
澤田三智子は高潮物産の契約社員として、シャンパンのキャンペーン企画チームに入っているが、会議は停滞してうまくいかない。
そこに現れたのが黒川敦子女史、懐かしのアッコさんであった。イギリスでティーについて学んできたというアッコさんが、お茶とお菓子で会議の進行を激変させていく。
またもやアッコさんの底知れぬ力をまざまざと見せつけられる三智子であった――
表題作ほか、「メトロのアッコちゃん」「シュシュと猪」「梅田駅アンダーワールド」を含む全4編。

「ランチのアッコちゃん」の続編。わたしもまたアッコさんに逢いたいなと思っていたので嬉しいです。それにしても4編すべて身につまされるというか経験していることもないこともありましたけど、なんだか胸が痛くなる主人公ばかりで^^;
ブラック企業で働く女の子とか就活で苦労している女の子とか。
狭い視野で見ないで、もっと世界は広いよ。って数年前、同じように縛られていたので^^;そんな声を掛けたいなと思いました。
ただスムージーを飲ませているだけ、ただアフタヌーンティーを試飲させているだけ。なのにどうしてこれほど人を変わらせることが出来るんでしょう。アッコさん不思議です。
私の側にもいてほしいです。でも、私はアッコさんには見込まれないかな^^;
またアッコさんに逢いたいのでぜひとも続編を出してほしいです。

〈双葉社 2014.10〉H27.1.5読了

ねじまき片思い〜おもちゃプランナー・宝子の冒険〜 柚木麻子4

ねじまき片想い 〜おもちゃプランナー・宝子の冒険〜ねじまき片想い 〜おもちゃプランナー・宝子の冒険〜
著者:柚木 麻子
東京創元社(2014-08-12)
販売元:Amazon.co.jp

スカイツリーを見上げながら、水上バスで通勤する富田宝子、28歳。
浅草にあるおもちゃ会社の敏腕プランナーとして働く彼女は、
次から次へと災難に見舞われる片想い中の彼のため、
SP気分で密かに彼のトラブルを解決していく……!
やがて、自分の気持ちに向き合ったとき、宝子は──。

なかなか個性的なキャラクターが登場しましたねー。
仕事はバリバリできて、顔も可愛いのに、でも恋には奥手で5年も同じ人に片思いしているという…。もう読めば読むほどもったいない!!と思ってしまいました。
読んでも読んでも西島という男の良さが分かりませんでした。さっさと目黒と一緒になればよかったのにー。
その想い人の西島の周りで起きるトラブルを宝子が解決していくのだけど、いやー凄いですね^^;執念ですね^^;あそこまでいっちゃうとちょっとイタイかなぁと思うけど恋は盲目と言いますからねー。しょうがないのかなー。
宝子と玲奈の関係は良いなと思ったのだけど、ほかのそれぞれの恋愛模様はあまり共感できなかったかなー。え、その人選んじゃうの?とか。宝子の最後の部分も、え―そういう終わり?って思っちゃいましたし^^;
結末はそれでいいけど理由がそれって今更じゃね?と思ったり←
あまりいいことを書いていないんですけど^^;すみません。ストーリーは面白かったんですよ。ありえねーと思いつつも宝子がさまざまな事件?を解決していくのは小気味よかったですし。ただ恋愛部分に関してはどれも納得がいかず残念でした…。
ただ、宝子のように、大好きなことを仕事にしてそしてちゃんと結果もついてくるって幸せなことだなーと思いました。

〈東京創元社 2014.8〉H26.10.18読了

本屋さんのダイアナ 柚木麻子5

本屋さんのダイアナ本屋さんのダイアナ
著者:柚木 麻子
新潮社(2014-04-22)
販売元:Amazon.co.jp

私の呪いを解けるのは、私だけ――。すべての女子を肯定する、現代の『赤毛のアン』。「大穴(ダイアナ)」という名前、金色に染められたバサバサの髪。自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と彩子だけが光を与えてくれた。正反対の二人だけど、私たちは一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に――。自分を受け入れた時、初めて自分を好きになれる! 試練を越えて大人になる二人の少女。最強のダブルヒロイン小説。

ネタバレあります

面白かったー!これは指南書と言ってもいいくらい。ダイアナにも彩子にも共感できるところがたくさんあって、良かった…。もったいないと思いつつ一気読みしてしまいました。柚木さんはコンスタントに新刊を書かれていますよねー。
ただ、残念ながら私は「赤毛のアン」をまーーーったく読んだことがなく^^;世界名作劇場バージョンも見たことはなく(だって生まれてないし)今の朝ドラ「花子とアン」も見てはおらず。ということでアンの親友のダイアナの存在は全く知りませんでした…。そうなんですか。
アンの物語を知っていればもっと深く楽しむことが出来たのかなー。実家には文庫本が全部そろっているのだけど(母が好きなもので)
にしても大穴でダイアナってどんだけどきゅんネームなんだよ。海野藻屑や傷痕並みに酷いな(分かる人は分かってくれるはず←)
ダイアナと彩子、全く異なる環境で生まれ育った2人は小学校3年生の時に同じクラスになったことで打ち解け合い、親友となります。しかし、とあるきっかけから2人は別々の道を歩むことになります。
私の今までの人生を考えるとどちらかというと彩子に近いと思われます。特別裕福なわけではないけど両親が厳しくも大事に育ててくれたという気はしてますから。だからこそ大学生になり、自由の身となった彩子に突如襲ってきた出来事。彩子は親に反発していきます。彩子のセリフを全部書いてしまうとネタバレになってしまうので書きませんが凄くわかりました。私はここまで親に反発はしてこなかった。でも、もっと早く独り立ちをしていればよかったと思うことは多々あります。だから、彩子の身に起きたことは辛いことだったけど、必要なことでもあったのかなとも思いました。推薦で別の大学に行っていたら、彩子は呪いに打ち勝てないままでいたかもしれないし…。
ダイアナの生き方は私、うらやましいなぁと思いました。行きたい学校に行けなかったりお父さんがいなかったりしたけど、でもお母さんはちゃんとダイアナを育てていたと思うし、ちゃんと自分の夢をかなえたし、一応はお父さんに逢えたし、ダイアナの未来も明るいと思いました。ずーーーっと傍で見守ってくれている人もいるし。羨ましすぎるよ。
お父さんはダイアナが自分の娘だって気付いていたと思いますよ。気弱すぎて言えなかったんだよ。「こんなことしかできなくてごめんね」というセリフはマフラーの事だけではなかったと私は思います。
そういえばアンの愛情の解説の話になり、村岡さんの言葉も登場していましたね。「花子とアン」気にはなっていたのですが結局観ないで終わりそうだなー。
『SomeGirl(s)』で健君と共演された村岡希美さんの大叔母様だと知ったときは観ようと思ったのだけど(ゲンキンな奴)そういえば村岡さんも出てますよね。名前だけ見ました。
実家に帰ったら「アンの愛情」の解説を読んでみようと思います。

〈新潮社 2014.4〉H26.5.15読了

その手をにぎりたい 柚木麻子4

その手をにぎりたいその手をにぎりたい
著者:柚木 麻子
小学館(2014-01-24)
販売元:Amazon.co.jp

80年代。都内のOL・青子は、偶然入った鮨店で衝撃を受けた。そのお店「すし静」では、職人が握った鮨を掌から貰い受けて食べる。
青子は、その味に次第にのめり込み、決して安くはないお店に自分が稼いだお金で通い続けたい、と一念発起する。
お店の職人・一ノ瀬への秘めた思いも抱きながら、転職先を不動産会社に決めた青子だったが、到来したバブルの時代の波に翻弄されていく。一ノ瀬との恋は成就するのか?

青子の25歳から10年間が描かれた作品です。時代が1983年から1992年ということでバブルの手前からバブル崩壊後までということですかね。私はこの時代は生まれたばかりから幼少期なので^^;全く持って記憶がないので…
著者さんも1981年生まれだからリアルタイムでは知らない世代ですよね。
読んでいてリアルさというよりもその時代が資料のような印象だったんですけど(失礼ですが)それでもこの時代はこんな感じだったんだなーというのが分かって良かったです。
青子の印象がだんだん悪くなっていったのが印象的^^;
でも、あの時代に女性が働いていくのは本当に大変だったんだろうなぁと思う。だから、ああなるしかなかったのかな。それにしてもいろいろ今じゃ考えられないことも多くて勉強になったような…なっていないような←
一ノ瀬との淡い恋が良いなと思っていたんだけどなぁ。あの駆け引きとかいるのかな…
駆け引きをするくらいなら素直に言っちゃえばよかったのに。
それでも、最後のシーンが切なくて温かくて良かったです。

〈小学館 2014.1〉H26.3.31読了

伊藤くんAtoE 柚木麻子4

伊藤くん  A to E伊藤くん A to E
著者:柚木 麻子
幻冬舎(2013-09-27)
販売元:Amazon.co.jp

こんな男のどこがいいのか。
ほろ苦く痛がゆい、著者会心の成長小説。
それぞれに魅力的な5人の女性を振り回す、伊藤誠二郎、27歳。
見た目はいいが、自己中心的。自分は傷つくくせに、人は平気で傷つける。
彼女たちが伊藤に抱く恋心、苛立ち、嫉妬、執着、優越感―。
A 伊藤に長い間片思いするが、粗末に扱われ続けるデパート勤務の美人
B 伊藤からストーカーまがいの好意を持たれてブチ切れる、バイトに身の入らないフリーター
C 伊藤の童貞を奪う、男が切れたことのないデパ地下ケーキ店の副店長
D 処女を理由に伊藤にふられるも、売れっ子放送作家を初体験の相手に選ぶ大学職員
E 伊藤が熱心に勉強会に通う、すでに売れなくなった33歳の脚本家

柚木さんの作品は大好きなので、新刊が出たら読んでいるのですがこの作品はあらすじを読んで絶対にイライラしそうだなと思って読むのをためらっていました^^;
それでもやはり1度気になったら読んでみたいという欲が止まらず、今回読みました。
予想はしていましたけど、まーーーー伊藤のダメ男ぶりがハンパないですね。口だけの男ですよ。単なるひ弱ですよ。とんでもないクズ男ですよ。
女性たちの個性も全然違いましたが、どうしてそろいもそろってこの男に惹かれるのか、まーーーったくわかりませんでしたよ。
特に最初の智美なんてもったいないにもほどがあるくらいもったいない!あなたは幸せにならなきゃだめよ!って思いましたよ。私が言うのもなんだけど。
だから智美の最後にはほっとしました。そのあとの修子とのリンクもとてもよくてBを読み終えたところまではほんわかした気持ちでいました。
でも聡子と実希の章は何ともはや…女性側もあまり好きになれなくて、でも伊藤側になることは絶対にないけども読み終えた後のもやもや感がハンパなかったです。2人はそれでも伊藤と係わったことで本性をさらけ出して、元通りにはいかなくてもまた戻ることはできるのかなぁなんて思いました。
そして最後。最後だけちょっと雰囲気が違いましたね。伊藤の根本というかまとめというか。伊藤の主張もありましたけどまーーー薄っぺらい!お金持ちのボンボンだからそういうこと言えるのよ、せいぜい一生そうやって生きてとっとと死ねばいい!と思いました。
…すみません、暴言吐きました。
伊藤の言動全てが吐気がしそうなくらい気持ち悪くて^^;いやーここまで人の事を嫌いになりながら小説を読んだのは思い出せないくらい久しぶりです。
周りの女性たちは変わっていったけど、伊藤はきっと一生変わらないんだろうな。それでもういいから、みんな関わっちゃだめだーー!!と思って読み終えました。

〈幻冬舎 2013.9〉H26.3.6読了

以下、小説と関係あるんだかないんだかの話。

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ランチのアッコちゃん 柚木麻子5

ランチのアッコちゃんランチのアッコちゃん
著者:柚木 麻子
双葉社(2013-04-17)
販売元:Amazon.co.jp

屈託を抱えるOLの三智子。彼女のランチタイムは一週間、有能な上司「アッコ女史」の指令のもとに置かれた。大手町までジョギングで行き、移動販売車の弁当を買ったり、美味しいカレー屋を急遽手伝うことになったり。
そのうち、なんだか元気が湧いている自分に気付いて……。
表題作ほか、前向きで軽妙洒脱、料理の描写でヨダレが出そうになる、読んでおいしい短編集。
「第1話ランチのアッコちゃん」三智子は「Yesしかいえない」と言われ彼氏と別れたばかり。落ち込んでいる時に上司である黒川敦子が自分のランチと一週間交換しないかと持ちかけられる。黒川女史ことアッコさんは曜日ごとにランチをする場所を変えていた。
「第2話夜食のアッコちゃん」三智子はアッコさんと久々に再会。アッコさんは移動販売の仕事をしていた。三智子はまたアッコさんと仕事がしたいと告げるとアッコは取引を持ちかける。
「第3話夜の大捜査先生」満島野百合は30歳。毎週合コンに勤しみ相手を探していた。思い出話をしている時にかつて校則がとても厳しかった高校の先生を思い出す。すると本当にその先生が目の前に現れた。あの頃と同じように問題児を探しているのだという。
「第4話ゆとりのビアガーデン」センターヴィレッジにかつて勤めていた佐々木玲実は今までで一番出来ない社員だった。社長である豊田は毎日残業しており社員にもそれを求めていた。無駄口を叩く人間は一人もいない。ある日、辞めたはずの佐々木が再び会社へやってきた。ビルの屋上でビアガーデンを始めるのだという。

面白かったー。素敵なお話でした。
柚木さんの作品は何冊か読んでいますが読んだ作品は全て年頃の女性たちの話でなかなか黒い悩みを抱えていたりするのですが^^;周りに支えられたり自分で変わったりして女性たちが輝いて行くというイメージです。読んでいないのはもっと心を抉られそうな気がして読めずにいますが←勝手な予想です。
アッコさんが何よりかっこいいです。働く女性。頭がよくてでもそれをひけらかさないで周りの人たちに還元している。厳しそうだけど一緒に働いたら、生きてるって実感できそうな気がするなと思いました。
三智子もオドオドしてる割に結構大胆なんですよね。本性をアッコさんに引き出してもらったかのような。きっと年を重ねるごとにもっともっと素敵になってくんだろうなと思いました。
3話と4話はアッコさんが堂々と出てくるわけではないんですけど、それでもいいお話でした。野百合は同世代だけど全く持って共感できないのはなんでだろう^^;私高校の頃は地味ーだったからなぁ。何にも校則破るようなことをしてなかったし。ちっ。もったいなかった←
玲実は近くにいたらイラッとしそうですけど、でも言ってることは物凄く的を得ていて凄いですね。ゆとり世代って私もよく分からないと思うけど、就活とかは本当に大変だと思うんですよね。それで諦めないで玲実のように前向きに出来たら良いんだろうなと思いました。
何だか元気になる作品です。読んでよかったです^^

〈双葉社 2013.4〉H25.5.21読了

早稲女、女、男 柚木麻子4

早稲女、女、男早稲女、女、男
著者:柚木麻子
祥伝社(2012-07-24)
販売元:Amazon.co.jp
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面倒臭くて痛々しいけど、憎めないワセジョと5人の女子の等身大の物語。
男勝りでプライドが高くて酒豪。だけど本当は誰よりも純粋で不器用。
そんな早稲女の中の早稲女、早乙女香夏子は就職活動を終えたばかりの早稲田大学教育学部の四年生。演劇サークルの幹事長で七年生の長津田との腐れ縁はなんだかんだでもう4年目だが、このところ口げんかが絶えない。
そんなとき、香夏子は内定先の先輩・吉沢から告白される。
女の子扱いされることに慣れていない香夏子は吉沢の丁重な態度に戸惑ってしまう。
過剰な自意識ゆえに素直に甘えることができず、些細な事にいちいち傷つき、悩み、つまづく……。そんな彼女を、周囲で取り巻く他大学の女子たちはさまざまな思いを抱えながら見つめていた――
それぞれが抱える葛藤、迷い、恋の行方は?

読みました。早乙女香夏子と香夏子を取り巻く?人たちからなる連作短編集です。
私は東京の人間ではないので分からないんですけど、早稲田大学の女性はみんなそんな感じなの?^^;日本女子大学の人たちはポン女なんて呼ばれてるの?
大学ごとで特色は違えどこんなに断定できるものだろうかと私は根本的な部分で疑問を持ってしまった。
確かに香夏子は男よりも男らしくてしっかりしてるし頼りになる人だと思う。
そして、やっぱり男の人の事が怖いのかなとも思う。友達の関係じゃなくて恋愛関係になると。
私はよっぽど長津田なんかより(失礼)吉沢さんの方が良いと思うんだけどな〜。
もったいないなぁ。
恋の行方はきっとそうなるんだろうなと思った。でも、そうじゃないときっとダメだったんだろうな。そういう恋愛もじれったいけど、羨ましいなとも思う。

〈祥伝社 2012.7〉H24.8.20読了

あまからカルテット 柚木麻子5

あまからカルテットあまからカルテット
著者:柚木 麻子
文藝春秋(2011-10)
販売元:Amazon.co.jp
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「終点のあの子」作者の誰もが待ち焦がれた新作は、仲良し四人組の探偵小説。ピアノ講師の咲子、編集者の薫子、美容部員の満里子、料理上手な由香子。恋愛の荒波も、仕事の浮き沈みも、四人の絆で乗り越えてみせる。
「恋する稲荷寿司」いつもは4人で集まると聞く側の咲子が珍しく自分発信で話を始めた。ピアノ教室の方々と一緒に行った花火大会で隣にいた男性に一目ぼれしたのだという。しかし、その男性の手がかりは稲荷寿司だけだった。
「はにかむ甘食」主婦の由香子は薫子の担当している雑誌に料理を載せたことでブログも話題になった。その反面、ネット・バッシングに合い、家に閉じこもるようになってしまった。
「胸さわぎのハイボール」満里子は彼氏の高須君が酔っているときに呼んだ「雪子」という女性が気になっていた。その人は居酒屋で店主として働いていた。誤解だと2人は言うが、満里子の気持ちは収まらない。
「てんてこ舞いにラー油」薫子は部署が変わり忙しい毎日を送っていた。引っ越して段ボールが散乱しているのに片づけもできていない。まともに料理もできない中、玄関のドアノブにかかっていた手作りのラー油に救われる。
「おせちでカルテット」外は猛吹雪。薫子の家でおせちを作ろうとしていた4人だったがそれぞれ災難に見舞われる。

初読みの作家さんでした。面白かったです!
また年齢設定が絶妙なんですよね。28歳。お話の中で少し時間は経過しますが。
もう、ちょうど結婚するかしないか、仕事にいそしんでいていいのかみたいなそんなことを考えるお年頃ですよね。付き合っている人がいたら、いつプロポーズしてくれるのかなとか。
出てくる4人はちょっと日常よりも突出している気はしたけど、それでも気持ちが分かるところはたくさんあって、共感できました。
4人それぞれ全く違うのだけど、違うからお互い惹かれ合うっていうことがありますよね。私はそういう人はいないけど^^;うまくはまる人っているんだろうな。そういう人がいるほうが、それこそ自分が壁にぶつかっているときに違う感性を持っている人のほうが良いアドバイスをしてくれたりするのかなとも思う。
4人それぞれが素敵でした。
満里子だけ共感できない部分が多かったけど、仕事に対する熱意とか愛情とか、そういうのを感じて印象がまた変わってきました。
この4人だったらどんなことがあってもまた乗り越えられる気がします。
柚木さんの作品、他のも読んでみようと思います。
あらすじ書いておいて「終点のあの子」は未読なので^^;

〈文芸春秋 2011.10〉H23.11.28読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6を愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
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