苗坊の徒然日記

読書とV6をこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

初野晴

ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外編 初野晴5

ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇 (角川文庫)ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇 (角川文庫)
著者:初野 晴
KADOKAWA(2017-02-25)
販売元:Amazon.co.jp

〈ハルチカ〉シリーズ番外篇が文庫書き下ろしで登場!
捨て犬をめぐり後藤朱里とカイユが奮闘する「ポチ犯科帳」。芹澤直子と片桐が駄菓子屋でお婆さんの消失に遭遇する「風変わりな再会の集い」。謎のアルバイトをしている名越をマレンが危惧する「巡るピクトグラム」。そして副部長になった成島美代子がかつての吹奏楽部の活動日誌に思いを馳せる「ひとり吹奏楽部」。運命的に集まった、個性豊かな吹奏楽部メンバーたちの知られざる青春と謎を描く、贅沢な番外篇!

前作が出たのが2年前ですか…トオイメ。
そして今回は番外編。なんとハルチカが出てきません!←草薙先生も出てきません^^;
ハルチカの暴走を生温かい目で見守る同志たちの物語です。
もうさー、正直うろおぼえになっちゃってるんですよ、なぜなら刊行ペースが遅いから!(怒)誰が誰かもう全然覚えてなくてショックでしたよ!
でもまあ、読んでいるうちにじわじわ思い出してきたから良しとします←
どの組み合わせも新鮮で面白くて可愛くて読んでいて楽しかったです。
それぞれの生徒たちが色んな境遇を抱えているのだけど、それでも吹奏楽を通して学んで成長している姿に、一読者は何だか感慨深さを感じます。
私は学生時代に部活動には入っていなかったので…。羨ましさも感じます。
皆が後悔することなく精いっぱい学生生活を送ることが出来たらなと思います。
ということで!続きが早く読みたいんで!!早く新刊を!お願いしますよ!(脅迫)

<角川書店 2017.2>H29.11.1読了

惑星カロン 初野晴5

惑星カロン惑星カロン
著者:初野 晴
KADOKAWA/角川書店(2015-09-30)
販売元:Amazon.co.jp

コンクールと文化祭を経て、ちょっぴり成長した清水南高吹奏楽部。さらなる練習に励むハルタとチカのもとに、またもや難題が持ち込まれて―!?チカが手に入れた“呪いのフルート”や、あやしい人物からメールで届く音楽暗号、旧校舎で起きた“鍵全開事件”、謎の楽曲「惑星カロン」との出会い…。頭脳明晰な美少年ハルタと、元気少女チカの名コンビがおくる珠玉の青春ミステリ!


毎度のことながら…本当にじらすシリーズですよねー。
このシリーズ最初に出たの7年前ですよ?当時高校生だった人だって大学も卒業してますよ←
ということでいつもまだかなまだかなと待っているハルチカシリーズ。
今回も吹奏楽の大会等直接関係のあるシリーズではなかったですがどれも面白かったです。初野さんの観点が素晴らしいですし幅広い知識をお持ちなんだろうなぁということがわかります。そしてほんの少しですけど草薙先生の秘密が明らかになりましたね。ホント分かるかわからないかくらいの感じでしたけど^^;次回もう少し明らかになるんでしょうか。次回がまた何年待つことになるのか分かりませんけど←
では順番に感想をば。
『チェリーニの祝宴―呪いの正体―』
チカちゃんも面白いけどお母さんも面白いなぁ。チカママ知恵袋面白すぎます。この親にしてこの子ありなんですね。呪いの内容がちっちゃ!と思いましたけど^^;
フルートのからくりがとても面白かったです。
『ヴァルプルギスの夜―音楽暗号―』
暗号の事もそうですけど、部活動の現状という部分が闇っぽくてずしっときましたねぇ。
部活動には限らないと思いますけどある程度の制約は必要で、でもそれが厳しすぎると反感を買うし緩めるとまた問題が起きるし…学校っていう世界は本当に難しいなぁと思います。
それにしても暗号に関してはもう全く意味が分かりませんでした^^;これは音楽を専門的にやっていないとわからないですよね。やってても分からないかも…。この問題を作った人たちの正体も気になるし全貌もよく分からないし、内容は面白かったけど結末はちょっと腑に落ちなかったかもしれません。
『理由ありの旧校舎―学園密室?―』
朝学校へ来たら旧校舎の窓が全て開いていた。しかし盗まれたものは何もない。その真相とは。
ということで、もう全然覚えていなかったんですけど元生徒会長が登場←
携帯電話の予測変換のカラクリは面白かったなー。
事件?の真相もなるほどと思いました。
生物部の生徒たちの涙は一体なんだろうと思ったら…かなり意外なことで。この斜め上をよく真実が流石だなと思いました^^最後もほっとしました。良かったね。
『惑星カロン―人物消失―』
呪いのフルートで関わった楽器店の娘あゆみと出会ったチカとハルタ。
そして怪しげな講義に出席する草薙先生。
最後にこんな形でつながるとは思いませんでした。
冥王星に衛星があることはなんとなく聞いたことがありましたが、カロンっていう名前でしたっけねぇ…
(太陽系の知識は大体セーラームーンで培われている)
人工知能のデジタルツインは近い将来本当に現れそうですよね。
でも、鉄腕アトム然りクローン然り、物体として存在しなくなった人間をそっくりそのまま造り上げるというのはやっぱり無理なんじゃないかななんてことも思いました。まあ、目的はそうではないということが明らかになりましたけども。
あゆみちゃんの恋の行方は途中で予想が付きましたけど、切なかったですね。中学生が知る真実としてはあまりにも重いです。それでもきっとあゆみちゃんは『惑星カロン』を吹きこなせると思いますし、これからの糧になると思います。
そして草薙先生の事。ハルチカは意味が分からないでしょうが読者は少しだけ分かりましたね。やっぱり謎は気になりますから、早く明らかになってほしいものです。
次はいつかなー(トオイメ)

<角川書店 2015.9>H27.11.28読了

1/2の騎士 初野晴



母を亡くし、心に傷を抱える女子高生・マドカが恋に落ちた相手―それは最強の騎士『サファイア』。ふたりの出会いは、忍び寄る狂気―社会の片隅でひっそりと息づく異常犯罪者たちから大切な人、そして愛する街を守るための戦いのはじまりだった。大人への道程にいる、いまだ“不完全”な彼女たちを待ち受ける、過酷な運命とは…。透明感ある文章で紡ぎ出すファンタジックミステリー。

この本、出たばかりの時に買ったはずなんですけど、どうして7年も放置していたのか…。
ということで読みました。初野さんの割と初期の作品ですね。
図書館になかったから確か購入したはずなんですけど、もう文庫も出ていますよね^^;
内容も知らないで買ったので、ファンタジーなのかと思ったらそうでもなかったですね。
ファンタジーな部分もあるんですけど、思っていたものと違いました。
主人公のマドカはアーチェリー部に所属する女子高校生。才色兼備なマドカが好きになったのは誰も見たことがない不思議な存在。名前も知らないその人のことをマドカはサファイアと名付けた。
そんなマドカとサファイアが、異常犯罪者達に挑みます。
もりのさる、ドッグキラー、インベイジョン、ラフレシア、グレイマン…
どの人物も一筋縄ではいかない凶器に満ちた犯罪者でした。
マドカとサファイヤもよかったけど、脇を固めるマドカの友人の加奈子や鈴、直先輩、梢も個性的でいいし、ゴリラやサイやキリンもかっこよかった。出てくる人たちが皆さんかっこよかったです。
一番衝撃で気持ち悪かったのは「インベイジョン」かなぁ。
一人暮らしをしている女性が家の中で誰かがいるような何かしらの違和感を感じていて、その正体がすごく恐ろしかった。
どの人物も今の社会の世相を表してもいてなんとも後味が悪い感じもまた良いです。
内容はとても暗いのだけどマドカたちの会話がコミカルだったりしてそれもいいんですよね。
ハルチカシリーズのノリのいい感じはここから始まったんですね^m^
面白かったです。
積読本を読み終えたときいつも思うんですけど、もっと早く読んでいればよかったな〜

<講談社 2008.10>H27.11.21読了

カマラとアマラの丘 初野晴5

カマラとアマラの丘カマラとアマラの丘
著者:初野 晴
講談社(2012-09-27)
販売元:Amazon.co.jp
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別れの時、動物(ペット)と言葉を交わせたら。
閉鎖された遊園地には、一人の青年が守る秘密の動物霊園があるという。
廃墟となった遊園地、ここは秘密の動物霊園。奇妙な名前の丘にいわくつきのペットが眠る。弔いのためには、依頼者は墓守の青年と交渉し、一番大切なものを差し出さなければならない。ゴールデンレトリーバー、天才インコ、そして…。
彼らの“物語”から、青年が解き明かす真実とは。人と動物のあらゆる絆を描いた、連作ミステリー。
「カマラとアマラの丘 ―ゴールデンレトリーバー―」
金子リサは心理療法士。担当しているおばあさんから廃墟の遊園地の話を聞く。
愛猫を辛い形で喪ってしまったそのおばあさんは、愛猫を探すため夜徘徊するようになり、その時に動物霊園があることを知ったのだという。リサは力を振り絞って、その遊園地にたどり着いた。そこにいたのは一人の青年。
リサの願いはただ一つ。ハナをここに埋葬して欲しい。ということだった。
「ブクウスとツォノクワの丘 ―ビッグフット―」
アメリカ人のブライアン・レイとその妻夕鶴が巨大な何かを連れて廃墟となった遊園地へやってきた。ブライアンは、アメリカから持ち帰ってきた伝説の獣「ビッグフット」をここに埋葬して欲しいという。
青年は主張する。あなたがたの話を最後まで聞いて、一人でも反対に手を挙げる者がいれば、埋葬は諦めてください、と。
ブライアンが席を外すと、ブライアンが言うには流産したことがきっかけで精神を病んでしまった夕鶴が青年にブライアンが語ったのとはまるで違う話を始めた。
「シレネッタの丘 ―天才インコ―」
その日非番だった刑事の市川は、一縷の望みをもって廃墟となった遊園地までやってきた。
市川は、三鷹で起こった殺人事件の捜査をしていた。新聞に大きく取り上げられていた事件だった。
担当から外された市川は、祖父母が殺害された現場で唯一一命を取り留めた、脳性マヒを患う孫の仁紀の記憶を喚起するかもしれない切り札を探していた。
「ヴァルキューリの丘 ―黒い未亡人とクマネズミ―」
弁護士の鷺村は、ある男の後をつけていた。
「おんじい」と呼ばれる、ネズミ取りで有名なその男は、不思議な青年に何かを手渡していた。
鷺村はおんじいのことを、リゾート開発される予定の土地の不法占拠の片棒を担いでいる男だと考えており、裁判で勝つために青年に協力を仰ぐために事情を説明した。
孫が数億の負債を抱えていたため土地を売った売主。しかし、リゾート地になることが決まったにもかかわらずその売主がなぜかその計画一切を止めたいと言い出していた。それと同時期に地元の若者13名が一時行方不明になっていた。
「星々の審判」
ある少年が気が付くと廃墟になった遊園地に来ていた。彼は以前、ライカと名前を付けた犬を飼っていた。殺処分される直前だったその黒のラブラドール。保健所にいた、少年の言葉を聞いてくれた片目だけ二重の青年が、この廃墟にいた。

初野さんの新刊です。
カマラとアマラってなんだろうと思ったら、実際にいた少女の名前だったんですね。少女たちの境遇を読んでいたら「ガラスの仮面」の狼少女ジェーンを思い出しました。きっとこのお話が原作だったんですよね。
ストーリーは森野幸久という廃墟の遊園地を管理する耳の聞こえない青年を通して悲しい境遇となった動物たちの事が描かれています。
初野さんの作品って、ハルチカシリーズ以外は暗いイメージがあります。でも、ただ暗いだけではなくて、どこか現代とは違う世界観があって、救いようがない中にも光があるというか・・・全然うまく説明できないのですが。
この作品もそうです。どの作品に出てくる動物も最後がとても悲しいです。幸せだったのかなと問いたくなるような。
それでも、森野や、この場所が死んでしまった後に癒してくれているのだろうと信じています。
最後の「星々の審判」の少年の正体、何となく気づいていたけど、あの少年の最後が前向きな終わり方だったら良いなと願わずにはいられません。
森野の秘密も驚きました。
本当に、切なくて温かい作品を書くのが上手いなぁと思います。
辛い内容が待っているかもしれないけど、きっと小さな光がどこかに射しているかもしれない。だから、読まずにはいられない。そう思わせてくれる作家さんだと思います。

〈講談社 2012.9〉H24.10.17読了

千年ジュリエット 初野晴5

千年ジュリエット千年ジュリエット
著者:初野 晴
角川書店(角川グループパブリッシング)(2012-03-31)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
惜しくも普門館出場を逃したハルタとチカは、息つく暇もなく文化祭に突入した。だが、吹奏楽部、アメリカ民謡部、演劇部と次々に問題が持ち上がり……。大好評青春ミステリ“ハルチカ”シリーズ最新作!
「イントロダクション」
チカと芹澤さんが文化祭のことを話している。芹澤さんにとっては最初で最後の文化祭。
「エデンの谷」
吹奏楽部で練習中、スナフキンのような恰好をした不思議な女性が入ってきた。彼女の名前は山辺真琴。ピアニカ奏者だという。チカの想い人草薙先生と知り合いらしい。草薙先生の師の孫である真琴は祖父の所蔵するピアノの鍵を探していた。
「失踪ヘビーロッカー」
アメリカ民謡部の部長の甲田は生徒会長の日野原にマークされているため、文化祭でのアメリカ民謡部のライブは時間を取るのが大変だった。後輩の清春が奔走してどうにか出演にこぎつけた。しかし、いくら待っても甲田は姿を現さない。チカは校門でドアが開き、出ようとするもそれを止め、Uターンするタクシーを見た。その中にいたのが甲田だと思われた。
「決闘戯曲」
演劇部に新鋭が洗われた。大塚修司という新入生は「決闘戯曲」という戯曲を書く。しかし、肝心のラストが書かれていないまま大塚は姿をくらました。本番まであと4時間弱。はたして間に合うのか。
「千年ジュリエット」
ある病棟で年齢の異なる5人が集まった。カエラ姉さんが「ジュリエットの秘書」をまねて「ジュリエットの秘書・はごろも支部」を立ち上げた。相談者の5人を五色の虹とカエラ姉さんは名付けた。

待ちました…待ちくたびれました…いつまで待たせるんだ〜!!
・・・失礼。と叫びたくなるくらい待ちまくった作品でした。
なぜなら。初めに刊行されるという情報が入ったのが去年。9月末に発売と知り、待っていたらいつの間にか10月末になり、11月末、12月、1月、2月…
もう出ないんじゃないかと思った頃^^;3月末という情報が。だんだん信じられなくなっていましたが、ついに!本当に3月末に出ました!
という事でずっと待っていたハルチカシリーズ第4弾。
今回の舞台は文化祭。
吹奏楽としての活動が少なくて残念でしたが、相変わらずのハルチカ^^やっと会えたよ〜。そしてなぜかこの2人は面倒事に巻き込まれるんですよね。
今回も巻き込まれていました。でも、どの作品も最後には温かくなる素敵なお話。
やっぱりハルチカシリーズは良いですね。
「エデンの谷」ハルチカに強力なライバル現る?!という事で新キャラの真琴さんが登場。いろいろワケありだろうとは思いましたが、ハルタの言葉にびっくり。全然気づきませんでした。でも、真琴さんがいう詩人のような言葉が心に染み入りました。
「失踪ヘビーロッカー」甲田先輩は普通になったり変な人になったりこの人は一体何がしたいんだろうと思いましたが^^;その理由を知り、心の優しい人なんだなと思いました。だから人望も厚いんですね。清春君が健気でした…この先輩と後輩の名前はやはりミュージシャンから取ったのでしょうか。
「決闘戯曲」面白かった!右目が見えず、左手が動かない状態でどうやって決闘に勝ったのか。私も気になって舞台に見入っていました。真相がまさかまさかだったけど^^;大塚修司君の名前は寺山修司から取ったのかなぁ〜とか、マヤ先輩はガラスの仮面の北島マヤから取ったのかなぁとかそこらへんも面白かった。だって先輩の周りを忘れて親指の爪をかじってブツブツ言ってるってまんまマヤだもん^^;
「千年ジュリエット」感動しました。すごいカラクリ。全然気づきませんでした。あまり多くは言えないですけど、あの人はきっと意志を継いでくれると信じています。

やっぱりハルチカシリーズは良いな。次はまた吹奏楽部メインかな。楽しみです。

<角川書店 2012.3>H24.4.9読了

ノーマジーン 初野晴4

ノーマジーンノーマジーン
著者:初野 晴
ポプラ社(2011-10-15)
販売元:Amazon.co.jp
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世界が終わっても、ずっと一緒にいるよ。
終末論が囁かれる荒廃した世界で、孤独な女性のもとに現れたのは、言葉を話す不思議な赤毛のサルだった――。
ひとつ屋根の下、奇妙で幸せな一人と一匹の“ふたり暮らし”がはじまる。
一日一杯のミルクをわけあい、収穫を待ちわびながらリンゴの木を育て、映画を観る約束をする――。しかし、隠された彼の“秘密”が明かされるとき、物語は終わりとはじまりを迎える……。
赤毛のサルの正体は?そして彼が現れた目的とは?
壊れかけた世界で見える、本当に大切なもの――不条理で切ない絆を描き出す寓話ミステリー。

ハルチカシリーズ以外の初野さんの作品を読むのは久しぶりな気がします。
あの作品はラブコメ?^^;というか明るい作品ですけど、基本初野さんの作品は私は暗いと思っているので、そうそう、こういう感じなんて思いながら読んでました^^;
舞台は現代よりも少し先の未来。
1年後には世界が滅びるといわれている世界でたった一人で生きていた静。
介護ロボットが当選し、来たと思ったらいたのは赤毛の猿。しかも人の言葉を話せる。
一体この猿の正体はなんなのか。不思議なふたりの生活が始まります。
始めはノーマジーンの出来の悪さに読んでいてイラッとしたこともあったのだけど、静を想う気持ちと一生懸命さはとても伝わってきました。切ないくらいに。
そもそも静の出生や境遇についても始めは分からず、読んでいくとそれも分かっていくのですが、本当に人間の汚い部分が凄く見えました。残酷すぎます。静は何も悪くないのに。
それでも、この作品の中で登場した〈見えたひと〉〈見えないひと〉〈見てみぬふりをするひと〉〈見間違えたひと〉〈見えたふりをするひと〉というのは私もどこかしらに該当するのだと思うけど…。
ノーマジーンの境遇は静にとっては残酷で、真実を知ってから心に薄い膜を貼ってしまったというけれど、ノーマジーンは真実を何も知らない。
静は何も悪くないのに静が悪いような対応をしてきた施設の人間、周りの人間、静を助けなかった人間よりもノーマジーンは静に寄り添っている。
だから、最後は本当にほんの少しだけ報われたような気がしました。

〈ポプラ社 2011.10〉H23.11.3読了

空想オルガン 初野晴5

空想オルガン空想オルガン
著者:初野 晴
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2010-09-01
おすすめ度:5.0
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オススメ!
「序奏」
「ジャバウォックの鑑札」
今日はコンクールの地区大会本番。チカは練習に臨もうとしていたが、前日に子どもを助けた影響で腕に怪我をしていた。地区大会のコンクールなのに、やたらとマスコミが多い。自分を追っているのかとチカは思ったがそうではないらしい。草薙先生を追うライターの渡邊という男と出会う。彼は草薙先生の記事を書こうとしている。それを阻止するべく、ハルタとチカは1匹の犬を前に取引をする。
「ヴァナキュラー・モダニズム」
ハルタの住んでいたアパートが取り壊される事になり、ハルタは学校に住んでいた。ハルタの姉の南風が現れ、物件探しをする事に。ある1件が古い建物だが防音設備が整っているようで、行って見る事に。しかしそこは、幽霊騒ぎが後を絶たない物件だった。
「十の秘密」
チカたち清水南高校は、県大会に進んだ。そこで清新女子高の吹奏楽部と出会う。そこはギャルのたまり場だった。全く無名の高校だったが、遠野京香という生徒が入学してから、変わったらしい。
「空想オルガン」
清水南高校は東海地方大会まで進んだ。ここが夏最後の大会。みんなが気を引き締める。また同時期に、オレオレ詐欺で売り上げを立てている会社の男が、かつての友人の親からお金を騙し取ろうとしていた。

ハルチカシリーズ第3弾です。
面白かった!読んでいて手が止まりませんでした。本当に面白いです!
にしても、成長したね!1冊目が嘘のような展開。
普門館へ行く事は出来ない人数構成だけど、大きな第一歩だと思います。
チカの一生懸命さは本当に可愛らしくていいですね。
天然だけど、ちょっとおバカだけど、でも本当に一生懸命だからみんなちゃんとついていくのかなぁと思います。
第1弾、第2弾で登場した人がわんさか出てきましたが、分からない人も多少・・・^^;
あぁ・・・読み返したい。
今回はわりと芹澤さんが大活躍していましたね。
「十の秘密」でも「空想オルガン」でも、キーマンでしたし。
しかも、入部しそうじゃないの!
よかったね、音楽家の夢は、絶対に諦めないでもらいたい。
今作はコンクールが大きなテーマというか、背景にあって、そこで起こる諸々の出来事なので、読みやすかったです。
今回がチカとハルタが高2だから、あと1年ちょっとしかないんですね。
そしててっきり今回で最後かと思っていたのですが、とんでもないですね^^;
こりゃ続くわ。
今回の結果により、受験しようと思う人が増えるかもしれないし、吹奏楽部の人数も増えるかもね!
是非とも、みんなの夢を叶えてほしい。
そして、草薙先生の秘密を知りたい・・・。謎は深まるばかり。
今回も、どの作品も良かったです。
最後の話の人の正体は、何となく途中で気付きましたけど、前向きな終わり方でよかった。
その人が、チカたちを応援している事も分かりましたし。
そしてチカも、悲しい空気にしちゃいけないと明るく振舞っているけど、影では悔しんでいて泣いていて。
本当に一生懸命なんだなぁ・・・青春だなぁ・・・。
いつも思いますが、ハルタやチカのように学生時代に思いっきり打ち込めるものが自分にもあればよかったのになと思います。
次回も楽しみ!

〈角川書店 2010.9〉H22.9.12読了

初恋ソムリエ 初野晴5

初恋ソムリエ
初恋ソムリエ
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オススメ!
ネタバレありです
「スプリングラフィ」
春休みの音楽室に何者かが侵入したらしい。チカが疑われるが、その人物は芹澤直子という女性だった。プロ奏者志望で小さな頃からクラリネットを演奏しているらしい。しかし、最近の彼女の様子がおかしかった。
「周波数は77.4MHz」
FMはごろものラジオにチカははまっている。その頃、吹奏楽部の予算にあえいでいた。生徒会長の日野原が地学研究会の予算を譲ると言う。その条件は地学研究会の部長である麻生美里を生徒会室に連れてくることだった。
「アスモデウスの視線」
吹奏楽部のライバル藤が咲高校の顧問である堺先生が自宅謹慎に陥っていると言う。部長の岩崎と副部長の松田が助けを求めてやってきた。チカ、ハルタ、カイユの3人が高校に忍び込み、教育実習生の大河原先生と共に問題について考える。堺先生は、謹慎の前に1ヶ月の間に3回席替えをしたのだと言う。
「初恋ソムリエ」
芹澤直子が相談にやってきた。それは、3年生の朝霧亨という謎の男についてだ。かれは「初恋ソムリエ」をしているらしく、直子の伯母が餌食になっているのだという。伯母の響子は自分の初恋について語りだす。

おもしろかったー!
「退出ゲーム」の続編。チカとハルタは2年生になりました。
相変わらず、部員集めにあくせく働くチカ。その一生懸命さには敬意を表します。
一生懸命なんだけど何だかバカっぽくて、報われていない感じがあるのだけども。
どの作品も凄いカラクリが潜んでいて、初野さんの頭のよさが伺えます。
特に面白かったのは「初恋ソムリエ」です。
響子の初恋話のカラクリもなるほどと思いましたし、思わず笑ってしまったのがエスペラント語を知った後、暫く名前の最後にオをつけてたこと。
セリザワーオとかハルターオとか^^;
ギャグかと思った。
新しい学生が次々と登場しますが、みなさん波乱万丈で大人びてますよね。
その独特の言い回しや掛け合いが好きです。
2人はまだ2年生だし、草薙先生の謎も分からないし、きっとまだまだ続きますよね。
普門館へ行く事が出来るのか。とても気になります。
ぜひともまた、出してください!

〈角川書店 2009.9〉H21.12.29読了

トワイライト・ミュージアム 初野晴5

トワイライト・ミュージアム (講談社ノベルス)
トワイライト・ミュージアム (講談社ノベルス)
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天涯孤独な少年・勇介は、急逝した大伯父・如月教授が遺してくれた博物館で秘密裏に行われているあるプロジェクトの存在を知る。
それは――脳死患者と時間旅行を研究する極秘実験(トワイライト・ミュージアム)。
過去を彷徨う魂を救うため、勇介は学芸員・枇杷(びわ)とともに、過酷な時の旅へと出発する!
注目の著者が放つ新感覚タイムトラベル・ミステリ!

読みました。お、面白い!
雰囲気は少し「水の時計」に似ているかな。
でも、ストーリーが面白い!
植物人間の人の魂は、数百年前にタイムスリップしているなんて。
凄いです。そしてそのメカニズムまでちゃんと説明されているのです。
世界史は苦手なのですが、魔女狩りが繰り広げられていた時代があったことは知っています。
何だかマインドコントロールされているみたい。ホプキンス卿が言っているんだから間違いない。この人は魔女だ!殺せ!
…実行犯の3人も怖かったけど、それよりもその処刑を呷っている民衆の方が怖かった。
枇杷は凄いです。かつて植物人間になったことがあり、生還した女性。
魂を彷徨っている人を助けるために、自らその時代の人間になり、その人を見つけて現代へ帰還させる。
枇杷を手助けするための命綱。本当に、名前の通りの命綱。
時代が時代だから、痛めつけられてもしかしたら死んでしまうかもしれない。
どうして枇杷がこんな思いをしなければならないんだろうと思いながら読んでいました。
ラストまでドキドキしました。
最後はほっとしたのですが、何だかまだ続きそうですね。
ユウと枇杷の関係もまだ気になるところだし、枇杷の過去も気になるし、ナナのことも気になるし、この美術館の全貌も明らかになっていないし、スタッフの謎も解明されていないし、ユウがこれからどういう生活を送っていくのかも気になるし。
ぜひ、続編が出てほしいです。

〈講談社 2009.5〉H21.10.6読了

漆黒の王子 初野晴3

漆黒の王子
漆黒の王子
藍原組の組員が次々と原因不明の死を遂げている。皆、眠ったように死んでいく。
組長代理の紺野と相方の高遠が原因を追究する。
また、下界では、一人の女性が記憶喪失で傷だらけの状態で助けられる。
彼女は一切の記憶を失っていた。助けてくれた<王子>と呼ばれている少年に名前を尋ねられ「ガネーシャ」と名乗った。

読み終えるのにとっても時間がかかりました。
この作品を読んでいる間に何冊読み終わった事か。
上の世界は藍原組の組員の動向。眠ったように死んでいく組員の死因について探る。
それは、暴力団に対する挑戦だった。人が死ぬ度に、見知らぬ人物からメールが届く。
眠ったら死んでしまうかもしれないと言う恐怖と戦うのは恐ろしいだろうな。
段々、組員が人ではなくなってしまうような、怖くなりました。
その中でも水樹は冷静だったのかな。友人にも助けられて、一応良かったのかなと。
そして下の世界。
記憶を失ったガネーシャと<王子><時計師><画家><音楽家><坑夫>など上の世界から拒絶された人たち。
怖い人たちかと思ったけど、最後は暖かさを感じました。
どの人も心に深い傷を抱えていて、辛いという言葉では言い表せないくらい、大変な人生だったんだろうなと思う。
でも、人間の暖かさはまだ持っていて。最後はちょっと感動でした。
その上と下の世界が徐々に一つになっていきます。
紺野と高遠、ガネーシャ。
敵同士だけど、子どものころに受けた傷は、きっと同じもので誰よりも近い存在だったのかもしれない。
最後は本当に救われなかったなぁ…。
切なくて暗いまま終わってしまいましたねぇ。
でも、あの暗号にはびっくりでした。
初野さん、凄いです。

〈角川書店 2004.11〉H21.3.17読了

退出ゲーム 初野晴5

退出ゲーム
退出ゲーム
オススメ!
穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。
上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。
音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに—。
「結晶泥棒」ハルタが1週間学校に来ない。それは、ハルタの携帯に写っていたハルタの想い人の写真を、クラスのみんなに見られたから。チカは一人暮らしをしているハルタの家に怒鳴り込んだ。戻ってきて欲しい気持ちもなくはないが、頼みたいことがあったのだ。文化祭が近づいており、チカは実行委員をやっている。硫酸銅の結晶が何者かに盗まれたのだ。劇薬で、先生に知られたら文化祭は中止になってしまう。同時期に、コバルトスズメが盗まれた。ハルタはこの2つの事件は関係があると睨む。
「クロスキューブ」廃部寸前の吹奏楽部だが、新入生で中学時代に吹奏楽に入っていた人間が何人もいるという情報を掴み、チカとハルタは勧誘に臨む。同級生の成島という女性が中学時代、23人という人数で普門館で演奏した事があるのだという。しかし、高校に入ってからは吹奏楽部に入部しないだけでなく、人を寄せ付けないオーラがあった。中学時代の友人の西川に事情を聞く。成島には弟がいた。しかし、今はもうこの世にはいない。成島はハルタたちに難問を突きつける。この謎を解いてほしいと差し出したものは、6面全てが白い、ルーピックキューブだった。
「退出ゲーム」吹奏楽の猛特訓の帰り道。同じく吹奏楽部のハルタと成島が何故か演劇部を手伝っている。2人の目的は中国系アメリカ人のマレン・セイを吹奏楽へ誘うためだった。彼は中学時代、オーボエの奏者だったのだが、高校では吹奏楽部へは入部していない。吹奏楽部と演劇部で、対決する事になった。誰かを舞台上から退出させた部の勝利となる。
「エレファンツ・ブレス」チカは生徒会長の日野原に突然呼び出される。発明部の二人が失態をおかし、協力してほしいのだと言う。発明部は「オモイデマクラ」を発明し、1万円で2人に売ってしまったのだと言う。一人は判明したが、もう一人の正体がわからない。そして正体が分かると、何故その枕が欲しくて誰に使いたいのかが分かった。

面白かったです。ビックリ。初野さんってこんな青春ミステリも書かれるんですね!(ちょっと失礼)
初野作品は「水の時計」を読んで以来2冊目です。
いや、実は読みかけの本が1冊あるのですが…。なかなか読み進まなくて^^;長いんです。読んだらアップします。
初野作品好きだ。高校生にしてはみんな博識すぎるけどキャラクターが良いですね。
チカも元気で明るくて一生懸命で可愛いし、ハルタがまた良い。第一印象が間違いなくよくて、女性にもてるけれど、叶わぬ(?)恋をしている。
そして私のお気に入りは、やっぱり草壁先生ですね。草壁信二郎、26歳。学生時代に東京国際音楽コンクール指揮部門で2位の受賞歴があり、国際的な指揮者として将来を嘱望されていた。なのに海外留学直前で全てを捨てて姿を消す。数年後教職についたという異色の人物。
どの作品でもキーマンとなる人です。
隙がなくてとってもカッコイイ。2人が好きになるのもわかるわ。
どの作品も最後にちょっとほろっと来ます。ミステリも。なるほど~と深く納得します。難しかったですが^^;
この作品は、チカたちの高校1年間を書いたものだから、是非とも高校2年生と高校3年生になったバージョンも読みたいなぁ。
草壁先生が、何故教職と言う道を選んだのか、過去も知りたいし。
シリーズ化してほしい。
チカとハルタの夫婦漫才のような掛け合い、好きです。

〈角川書店 2008.10〉H21.3.5読了

水の時計 初野晴5

水の時計

オススメ!
医学的には脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、特殊な装置を使って言葉を話すことのできる少女・葉月。
生きることも死ぬこともできない、残酷すぎる運命に囚われた葉月が望んだのは、自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えることだった―。
その運び人として選ばれたのは、集団暴走族「ルート・ゼロ」の幹部である高村昴という未成年の少年だった。
透明感あふれる筆致で生と死の狭間を描いた、ファンタジックな寓話ミステリ。第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

「文庫の本棚」様のブログで拝見し、読みました。
面白かった!なんて素晴らしい作品。感動しました。
横溝正史ミステリ大賞受賞作。デビュー作だそうです。
「幸福な王子」をモチーフにした作品。
脳死と診断されながら、死ぬ事が出来ない少女・葉月。
そういう設定から、若干ファンタジー系があるのも否定できないからなのかな。
でも、テーマはとても重い。「脳死」「臓器移植」についての問題がリアルに描かれていると思います。
移植を必要としている人たちからなるオムニバスのような連作短編集です。
失明寸前の妹を守ろうとする貴子。
笠原というフリーライターがであった腎不全に苦しむ仲西という女性。
心臓病と闘う元中学教師の森尾。
昴は自分で移植すべき人を見極め、葉月の臓器を運びます。
葉月と昴は何故か関わりがあるようなのですが、昴に心当たりはない。
その理由が最後分かるのですが、本当に切ない。
葉月がこうなる前に出会っていたら、2人の人生はもしかしたらちょっと変わっていたのかもしれない。
昴は暴力団の幹部で、内部分裂も起きていて、警察とかつての仲間にも追われる身。
悪い奴なのかと思いきや、中学生の時まで優等生で卒業と同時に変わってしまったのです。
それは、社会の理不尽な差別。一生懸命やっている人間の努力を踏みにじるような行為。
昴の境遇は本当に切ない。絶対に聡明で、素敵な子だったんだと思う。
それなのに、どうしてこうなってしまったのかと切なくてならない。
重いテーマが根底にありますが、ミステリ要素もあります。
ラストは美しくて綺麗でした。心の中で、いい結末を想像してます。
いい作品に出会えました。他作品はどうやらあと1作らしいのですが、読んでみたいです。

〈角川書店 2002.5
 角川文庫 2005.8〉H20.5.11読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6を愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
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