苗坊の徒然日記

読書とV6をこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

女性作家(な・は行)

野心のすすめ 林真理子4

野心のすすめ (講談社現代新書)野心のすすめ (講談社現代新書)
著者:林 真理子
講談社(2013-04-18)
販売元:Amazon.co.jp

「有名になりたい」「作家になりたい」「結婚したい」「子どもが欲しい」
――無理と言われた願望をすべて叶えてきた人気作家による「夢を実現させるヒント」。
「やってしまったことの後悔は日々小さくなるが、やらなかったことの後悔は日々大きくなる」をモットーとする作家・林真理子。
中学時代はいじめられっ子、その後もずっと怠け者だった自分が、なぜ強い野心を持つ人間になったのか。
全敗した就職試験、電気コタツで震えたどん底時代を経て、『ルンルンを買っておうちに帰ろう』での鮮烈なデビュー、その後のバッシングを振り返り、野心まる出しだった過去の自分に少し赤面しながらも、“低め安定”の世の中にあえて「野心」の必要性を説く。

林さんの作品は初めて読んだと思います。
最近この作品の宣伝で林さんをあさイチを始めいろんなところで見て、つられて読んでみようと思って予約しました。
内容はどぎつかったし、林さんまでの野心は持てないけど、でも私の同世代(ゆとり世代よりちょい上)の人よりは野心は持っているほうだと思います。たぶん。ちょっとだけ。(ゆとり世代は1987年生まれ以降らしい←調べた)
3人兄弟の長女で、下2人は結構奔放でいつも外で遊んで遅くまで帰ってこないアクティブな感じで私はいつも家で本を読んだり絵をかいたり。今は結構図太くなったけど、昔はすんごい内気で人見知りで人に言ってもらわないと自分の言いたいことが言えないようなやつでした。苦情は受け付けません。昔の話です。
でも、自分がこうって決めたことは相談せずに割と自分で決めて行動するので親は結構驚いてました。一人でいろんなところへ旅行することとか(国内だけど)、転職することとか。
そういう部分は野心っていうのかな。
たった1度の人生だからやっぱり幸せになりたい。好きだと思う仕事もしくはやりがいのある仕事に就きたい。でも思っているだけではだめで自分でも努力しなきゃだめよって林さんに怒られたような気がしました。
大丈夫、きっと行動力はあるはず。多分…
もうすぐ20代も終わるけど、この10年は精神面で辛いなぁと思うことが多かった気がします。別にそんなすごい仕事をする気はなかったのに何だか厳しい会社や厳しい人に就くことが多くて。大げさだけど、もっと楽な道も絶対にあったよねーって思う時がたまにあります。私めちゃくちゃ容量悪いんですよね。不器用だし。人によっては甘っちょろいって思うかもしれないですけど。だから内容は言いません。
過去のブログに結構書いてるけど←
それでも幸せだと思ったことはたくさんありますし、生きる糧になるものもありました。
テレビを見てると30代になってラクになったという声をよく聞きます。
私が来年30歳になった時にどう思っているのか、楽しみでもあります。
そのために、私自身が努力しなければいけないんですよね。
やりますよ、やってやります。
私にとっては背中を押してくれる作品でした。

〈講談社 2013.4〉H25.11.1読了

悪魔と私の微妙な関係 平山瑞穂4

悪魔と私の微妙な関係悪魔と私の微妙な関係
著者:平山 瑞穂
文藝春秋(2013-06-20)
販売元:Amazon.co.jp

独立行政法人に勤める事務職の真崎皓乃は、小柄でおとなしい風貌ながらも、シニカルな視点の持ち主で、内心、誰彼とわず毒づきまわっている。そんな皓乃の副業はなんとエクソシスト。女子高生のころに、オカルト好きが高じて胡散臭い神父の米沢ヨセフからスカウトされ、非公式にやっているのだった。ある日、有能なイケメン上司が赴任してきてからというのも、皓乃の生活は一変し……。ちょっとありえない関係の二人によるラブコメ小説登場。

ここ最近気になっている作家さんです。
今回のテーマはオカルト…?ラブコメ?なんでしょう。書いといて疑問形ですみません。
悪魔祓いとか、皓乃と義斗がどうなっちゃうのとか気になるところはあったのですが…そして卿との関係も有耶無耶じゃないんですけどどこまでが本当でどこまでが偽りなのか。
面白かったんだけど、すべてがうまくまとまってよかったね…っていう感じかなぁ。
エクソシストというテーマがあるんだから、そこをもっと全面的に押し出してもよかったんじゃないかなぁと思いました。

〈文芸春秋 2013.6〉H25.9.3読了

なぜ猫は旅をするのか? 永嶋恵美5

なぜ猫は旅をするのか?なぜ猫は旅をするのか?
著者:永嶋 恵美
双葉社(2013-02-20)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
人情と猫で知られる町の大学病院。医師の鳥羽裕太は事務の石倉夏海と、名誉の負傷がきっかけで親しくなった。車にひかれそうになった子どもを助けて事故に遭ったのだが、それが夏海の甥だった。事故の衝撃で失われた記憶を求め、裕太は夏海に引っ張られる形で、いっしょに手掛かりを探し始める。ところが、どうも夏海は「人」と「事件(騒ぎ?)」を呼び寄せる天才のようで…。恋はゆっくり。謎はすっきり。チャキチャキッと明るい連作ミステリー。
「月曜日のヒーロー」生真面目で近寄りがたかった裕ちゃん先生だったが、事故後性格がすっかり変わってしまったようだった。最近猫に関する事件が起きているのだという。マタタビがまかれて酔っぱらう猫が増加。また三毛猫のオスが1匹行方不明になった。
「極秘任務は火曜日に」祐太と夏海は知り合いのライブを見に来ていた。駅に着いたとき、そこでここにいるはずのない近所の中学生を見かける。その中学生は商店街で万引きの濡れ衣を着せられていた。
「油断できない水曜日」いつも行くレストランで日本語の通じないシェフからどうドレッシングを譲ってもらおうか夏海たちが考えている間、夏海の甥春馬が知らない間に誰かからあみぐるみをもらっていた。
「雨の日と木曜日は」商店街の取材に地元出身のアイドルがやってきた。商店街を1軒1軒丁寧に回っていたが、しかし途中で姿が見えなくなる。一体どこへ行ってしまったのか。
「花咲く金曜日」老人ホームで盆踊りの練習中に老人の1人が消えてしまったらしい。とても素敵な男性だったらしい。
「ウィークエンドはお祭り騒ぎ!」最近裕太の周りで見かける男性の正体が明らかになる。裕太には事件直後の記憶がなかった。その男安田はその事故にとある不信感を抱いていた。

永嶋さんの作品はこれで3作目です。まだ3冊ですが小説の内容も雰囲気も文章も私好みで、少しずつ読み進めていきたいと思っている作家さんです。
今回の作品も装丁の通りとても可愛らしい作品でした。裕ちゃん先生と夏海の雰囲気がちょっと「猫弁」に似てるなぁと思いました。作家さん違うんですけどね。
きっと裕ちゃん先生が事故に遭わなければ付き合わなかっただろう2人。
裕ちゃん先生が車に轢かれそうになっていた子供を助け、代わりに重傷を負う。そして目を覚ました時、裕ちゃん先生は事故直前の記憶がなく、高次脳機能障害となってしまいます。でもなぜか性格が変わって人づきあいが良くなった部分もあり、夏海とも関わるようになったんですよね。この2人のほんわかした雰囲気がとても好きです。
そして夏海のキャラクターが良いですね。なぜかお年寄りに話しかけられ、引き寄せられるオーラを持っていて、大が付くお人好しで、大体それがトラブルにつながるという^^;一緒にいたら大変そうですけどそれでも飽きなそうでいいですね。
どの作品も他の作品と同じように人が死んだりしないミステリではあるのですが、真実は結構どれも納得で面白かったです。
「雨の日と木曜日は」のアイドルが個性的で面白かったかな。タイトルが惜しい!と思ってしまったVファンの悲しい性。…いえ、なんでもありません。
あ、それから私はきっと夏美よりちょっと上くらいかなと思いましたが、上原謙さんは私、バッチリ知ってました^m^おばあちゃんたちと気が合いそうです。
2人の恋愛模様はこんな感じでまーったりゆーったり続いて行くんだろうな。とても素敵なお話でした。

〈双葉社 2013.2〉H25.5.18読了

ルドヴィカがいる 平山瑞穂3

ルドヴィカがいるルドヴィカがいる
著者:平山 瑞穂
小学館(2013-03-13)
販売元:Amazon.co.jp

この5年間ヒット作もなく、書き下ろし作品を執筆しても出版の見通しが微妙な小説家・伊豆浜亮平は、女性誌でライター稼業をして食いつないでいた。ライターとして天才ピアニスト荻須晶に取材したのをきっかけに、小説家は軽井沢にある晶の別荘に招かれたが、別荘近くを散策中にこの世の者とは思えない女性と遭遇する。彼女は言った。「社宅にヒきに行っている人とその恋人の方ですね。ラクゴはミています」。社宅にヒく? ラクゴは落語か落伍か? だめだ、まるで意味がわからない――。森の中を一人でさまよい、独特の話法で言葉を操る彼女との出会いから、やがて小説家は執筆中の作品にも似た“もうひとつの世界”に迷い込んでゆく。言葉の迷宮に読者の世界も歪む超感覚ミステリ。

平山さんの作品は何冊か読んでいて、どれもお気に入りなので今回も読んでみました。
あらすじを読んでみたのですがよく分からず、ちゃんと理解できるかな、挫折しやしないかと思いましたが、読む手が止まらず読み切りました。ほっ。
ということで今作。小説家の伊豆原、しかし小説は売れないためライター家業を今は生業としている。今回は萩須晶というピアニストの取材をし、なぜか気に入られ、別荘へお邪魔することからとある出来事に巻き込まれます。
その頃から伊豆原は小説を少しずつ執筆していくのですが、とある事件に遭遇したあたりから筆がどんどん進み、寝る間を惜しんで書き続けていきます。
伊豆原が実際に巻き込まれる事件と、伊豆原の描いている小説の内容が徐々に交差していきます。そのあと一体どうなるんだろう。と気になってどんどん読み進んで行ったのですが、最後はあれ〜?という感じでした^^;
色々気になる部分があまり解決しなくて根本的な解決にもならずちょっとモヤモヤ感が残りました。申し訳ないです。過程は面白かったです。

〈小学館 2013.3〉H25.4.27読了

海の見える街 畑野智美5

海の見える街海の見える街
著者:畑野 智美
講談社(2012-12-06)
販売元:Amazon.co.jp

この街でなら、明日が変わる。海が見える市立図書館で働く20、30代の4人の男女を、誰も書けない筆致で紡ぐ傑作連作中編集。
「マメルリハ」本田は図書館に勤める32歳。今年で勤めて10年になる。姉と妹がいて、2人には頭が上がらない。同期の和泉さんが産休に入ったため新しい人が入ってきた。鈴木春香は司書資格を持っておらず、いつも派手な格好をしていて図書館にはそぐわない。周りも匙を投げ自分が担当することが増えた。
「ハナビ」日野は図書館に勤めて3年になる。小さなころから本を読むことが好きで一人でいる時間が好きだった。あまりにも詳し過ぎるために「オタクすぎて引く」と言われるほど。だから図書館に勤められたときは嬉しかった。和泉が産休に入ったことで本田の気を引けるかと思ったが新しく入ってきた春香を気にしていることが分かって面白くない。
「金魚すくい」児童館に勤める松田は勤めて10年になる。図書館に勤める本田や和泉と同期だ。18歳で家を出てから1度も家に帰っていない。それは幼少の頃からの異常な厳しい家庭環境と、高校生の時に出会った女子中学生との関係が原因だった。
「肉食うさぎ」春香は派遣社員として図書館に勤めることになった。任期は1年でもう終わりに近づいていた。そんな時、館長から呼び出しを受ける。その内容をいち早く報告しようと本田や日野の元へ向かうがそこには産休中の和泉がいた。

初読み作家さんでした。
図書館に勤める男女4人の物語と知った段階で読まないわけにはいかない!と思い、手に取りました。良かったです。良い本は最初を読んだだけで良いと思えますよね。初読み作家さんは読むときにちょっとドキドキするんですけど、読み始めた段階で畑野さんの文章の相性が良いなと思えました。
図書館に勤める4人。具体的にいうと市民センターの3階に図書館があり、2階に児童館があって、松田のみ児童館に勤めてます。
4人ともとても不器用なのだけど、それでもみんなすごく愛おしい素敵な人達ばかりでした。
本田は地味で家にインコのマメちゃんを飼っていて、マメちゃんの事ばかり考えている人だけど、何だか魅力的なんですよね。日野や春香が好きになるのも何となくわかる気がしました。でも結ばれないと分かると結構傷つけられそうなタイプですね。無意識なところが尚更タチが悪い。まあ、10年好きだった女性に振られちゃったのは同情しますけどねー。
日野が私は登場人物の中で1番好きでした。多分4人の中で1番似ているからだと思います。私は目に見えたいじめを受けたことはないし、日野ほどたくさんの本を読みこんではいないけど、本を擬人化している所とか、小説家や小説の登場人物をこよなく愛する気持ちは凄くよく分かります。それに、春香が来たばかりの時に仕事に対して注意をしたら中年の職員たちは美人の春香をかばい、注意した日野が悪いような言い方をして落ち込む場面があったのですけど、似たようなことが最近私は多々あるので、なおさら共感したのだと思います。でも、日野は段々逞しくなっていきます。両親からも弟からも凄く愛されているのが文章からたくさん伝わってきて、だからこんな素直ないい子なんだろうなともいました。
松田は童女趣味で気持ち悪い奴だと序盤は思っていましたけど、日野をかばうところなんてとっても男らしくて、自分の過去を日野に伝えている場面もとても良かったです。好印象に変わりました。でも、松田の章のラストが私は納得が出来なくて。本当にそれでよかったの?とモヤモヤ感が残ってしまってそれが残念でした。
春香は私は最初大嫌いでした。図書館に勤めているのに短いスカートをはいて司書資格を持っていないことを何とも思わず、本なんて読まないっていう言い方はするし本の扱いは乱雑だし、絶対に一緒に働きたくないと思ったんですけど。変わりましたねー。日野と仲良くなってお互いに良かったんだろうなと思いました。拓海君との関係も可愛かったです。拓海君は本気で春香の事を好きだったんだろうなぁ。パン屋さんとの関係も好きでした。
図書館という舞台で、登場人物たちもとても共感できて、面白く幸せな気持ちになって読むことが出来ました。オススメ!を付けようと思ったのだけど悩んだ末止めました。それは、ちょっと非現実的だなと思ったから。内容はあまり関係ないのだけど春香が1年契約で、切れそうになっている所でさらに1年追加してくれないか、更に後々は司書資格を取って正職員で働いてくれないかっていう話をする場面があったのだけど、そんな夢のような話、今図書館業界ではほぼ皆無ですから。そこが展開が良過ぎてうーんってなってしまったのと、松田の最後の展開がえーって思ってしまったので。
でも、全体的にはとても良かったです。20代30代の大人の青春小説が読めて心地よかったです。

〈講談社 2012.12〉H25.2.4読了

カンパニュラの銀翼 中里友香5

カンパニュラの銀翼カンパニュラの銀翼
著者:中里友香
早川書房(2012-10-24)
販売元:Amazon.co.jp

1920年代後半の英国―エリオットには秘密があった。資産家の子息の替え玉として名門大学で学び、目が見えなくなった「血のつながらない妹」のため、実の兄のふりをして通いつめる日々。そんなエリオットの元に、シグモンド・ヴェルティゴという見目麗しき一人の男が現れる。物憂い眩暈。エレガントな悪徳。高貴な血に潜んでいる病んだ「真実」―精緻な知に彩られた、めくるめく浪漫物語。第2回アガサ・クリスティー賞受賞作。

第1回アガサ・クリスティー賞受賞作がとても私好みだったので、今回も手に取ってみました。面白かったです。浪漫譚、スペクタクルという言葉がぴったりな作品です。
タイトルも素敵ですよね。カンパニュラ、好きなお花です^^
舞台は1920年。アンドリューという男の替え玉として大学生を演じているエリオット。そしてアンドリューの妹で目が不自由なクリスティンのことをいつも気にかけている。そんなエリオットの元へシグモンドという美め麗しい男性が現れます。エリオットの身に大きな転機が訪れた時、彼はシグモンドの元へ向かいます。
この物語はエリオット目線とシグモンド目線で描かれていて、徐々に分かっていますがかなりの長い時代を描いています。エリオットの境遇、シグモンドと「実験心理学者」のオーグストの長きにわたる因縁。それが事細かに描かれています。本当に素晴らしかった。
読みにくくはないのですが、文章が綺麗すぎて表現が難しいところがちょいちょいありました^^;でも、それ以外は気になりません。少し時間がかかりましたけど、SFやファンタジーも入っていたりするので1冊でたくさんの世界が楽しめると思います。
後半は怒涛の展開で様々な事の真実が浮き彫りとなり、実行に移していきます。それが成功するのか否か、ドキドキでした。
ラストは何となく予想していましたけど切ないラスト。それもまた良いんです。
このアガサ・クリスティ―受賞作は相性が良いみたいです。
これからも読んでいきたいと思います。

〈早川書房 2012.10〉H24.11.28読了

泥棒猫ヒナコの事件簿 あなたの恋人、強奪します。 永嶋恵美5

泥棒猫ヒナコの事件簿 あなたの恋人、強奪します。 (徳間文庫)泥棒猫ヒナコの事件簿 あなたの恋人、強奪します。 (徳間文庫)
著者:永嶋 恵美
徳間書店(2010-11-05)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
「あなたの恋人、友達のカレシ、強奪して差し上げます」。こんな広告を見て、半分疑い、半分救いを求めながら、オフィスCATに電話する女性たち。でも、オフィスCATの皆実雛子(みなみ・ひなこ)がもつれた恋愛関係を清算したとき、ふと気付くと皆癒され、つぶやくのです。「雛子がいてくれてよかった」と。 いま人気急上昇中の女流作家が描く、心温まるヒューマン・サスペンス連作集。
「泥棒猫貸します」早川梨紗は彼氏の伊東英之から逃れたくて「オフィスCAT」に電話をかけると、ミナミヒナコという女性が来てくれた。彼女が彼と別れさせてくれるのだという。
「九官鳥にご用心」茜は会社の同僚の清美に愛想を尽かしていた。彼女は何でも茜のマネをする。そして茜よりも垢抜けた真似をするので茜は嫌気がさしていた。隆志という彼氏が出来て清美に隠していたがバレ、ついに隆志は浮気をしてしまったようだった。
「カッコーの巣の中で」竹田緑は父親とママハハを別れさせようと「オフィスCAT」という会社に電話し、依頼をした。相手は電話で緑が小学生であることを見抜き、詳細を聞く。すると離婚依頼は思わぬ方向へ進んで行く。
「カワウソは二度死ぬ」辻堂美咲は姉と姉の彼氏を別れさせてほしいという。姉はとても魅力的で素敵な女性だが男運だけは悪いのだという。その彼氏というのがかつての同級生で、嘘ばかりつくのでカワウソと呼ばれていた男だった。
「マイ・フェア・ハウス」海老根雪緒は彼氏の母親から息子と別れてほしいと言われる。雪緒と彼氏薫とは7つ離れていた。雪緒は彼と別れるため、オフィスCATに連絡をする。
「鳥かごを揺らす手」藤井柚奈は家庭の事情から家出をし、夜行バスで東京までやってきた。住むところがないため泊め男のところに行くことに。初めはとても居心地がよく幸せな気持ちだったが、次第に自分は閉じ込められているのではないかと疑い始める。

ずっと気になっていた作品でした。ようやく読めた〜
タイトルからしてずっと気になっていたんです。どんな話なんだろうって。
でも積読本が多くてなかなか読めずにいました。今年永嶋さんの作品を読んでその作品もとても好きだったのでなおさら読みたい!と思い、今回タイミングが合って読めました。
面白かった〜。大体が別れたい彼氏を別れさせてくれるお話なので気分もすかっとしますし^^雛子の仕事が的確で失敗がないので安心して読めるというのもあります。化粧ひとつでいろんな表情を持つ雛子、素性も気になるところです。
アルバイト?の篠原楓さんもとてもいい方。2人がいるオフィスはきっと無敵だなと思います^^
どのお話も良かったですが私が好きだったのは「マイ・フェア・ハウス」でした。この作品はタイトルから1番かけ離れている作品だと思うのですが、それでも依頼をちゃんとすべて分かったうえで行動していそうな雛子さんが凄いなと思いました。依頼した雪緒も彼氏の薫も素敵な人で、思わず応援したくなりました。
あー面白かった。続編も出ているようなので、いつ読めるか分かりませんが(今年中に読めたら良いな)読めるようになったら^^;読みたいと思います。

〈徳間書店 2010.11〉H24.11.16読了

キオスクのキリオ 東直子4

キオスクのキリオキオスクのキリオ
著者:東 直子
筑摩書房(2012-10-10)
販売元:Amazon.co.jp
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人生のコツは深刻になりすぎへんこと。ノーと言えないおっちゃん、キリオ。彼のもとには次々と、なにかを胸に抱えた人たちがやってくる。なんだかおかしい、なんとも不思議な連作短篇集。

東さんの作品を読むのは初めてでした。
さらっと読める作品でした。東さんの文章は読みやすくて好きかも。
読みやすい作品でしたけど、なかなかキリオが魅力的なオッサンでした。
言っていることも雰囲気も思いっきりおっさんなんですけど、何だか温かみを感じます。
見知らぬ人が変なお願い事をしてもキリオは結果ノーと言いません。
断れない意志の弱いおっちゃんだなとも思うのですが、何だかよく分からないけど悩んでいる人たちの心を癒しているような気がしました。
私も悩んでいる人に対してのキリオのそんなに特別でもないのだけど聞いているだけで癒される言葉に、何だか穏やかな気分になりました。
キリオさん素敵でした^^

〈筑摩書房 2012.10〉H24.10.28読了

私は古書店勤めの退屈な女 中居真麻3

私は古書店勤めの退屈な女 (日本ラブストーリー大賞シリーズ)私は古書店勤めの退屈な女 (日本ラブストーリー大賞シリーズ)
著者:中居 真麻
宝島社(2012-06-07)
販売元:Amazon.co.jp
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ひょんなことから神戸元町の古書店・小松堂で働くことになった波子。彼女は夫の上司、加茂内と不倫中で、それが夫の雅人にばれたことで夫婦仲は最悪の状態にあった。小松堂の店主の“いい感じにゆる〜い"アドバイスを聞きながら、波子は加茂内と夫との関係にある決断を下す……。『恋なんて贅沢が私に落ちてくるのだろうか?』の著者、中居真麻が恋に悩める女性の心を描いた、リアリティーあふれる最新書き下ろし長編小説。

タイトルが物凄く気になったので読んでみました。
主人公は新婚のうちに夫の上司と関係を持ってしまい、夫と冷え切った生活を日々送っている。
色々と波子は思い悩むのだけど、でも自業自得と言えば自業自得。
加茂内の事が好きで忘れられないのは分かるけど、それでも旦那に対する想いがひどすぎる。
お前は最低最悪の女だと言われるのも仕方ないと思う。
でも、多分それを本人も分かっていて。どうしていいかわからないもどかしい気持ちを、ちょっと変な古本屋の店主の小松さんががちょっと・・・?いや、結構変な店主が。結構的を得ることを言ったりするんです。
結構「お」と思うんです。
適当なことを言っているようでちゃんとアドバイスをしているんですよね。結構鋭いし。
波子の態度や考えは最初から最後まで好きになれなかったけど、小松さんの事は結構好きでした。悩んでいるときに軽く相談して軽くアドバイスを返してほしいです。

〈宝島社 2012.6〉H24.8.8読了

大人になりきれない 平山瑞穂5

大人になりきれない大人になりきれない
著者:平山 瑞穂
PHP研究所(2012-06-08)
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もう30歳!? まだ30歳!? 会社で働くちょっぴりイタイ人たち――。
でも、あなたは本当に彼らのことを笑える?
異才がシニカルに描いた“働くアラサーたち"の群像劇。異色のお仕事小説誕生!
◎野方 沙耶(32)デキるビジネス・ウーマンのつもりが、本当に“つもり"の自称美人。
◎末松 徹(30)職場の女性陣に好かれている、モテていると思っている勘違いクン。
◎國枝 奈央子(29)モテなかった青春時代を取り戻すべく悪戦苦闘するBL好きの既婚者。
見た目は立派な大人。でも、未だに戸惑い多き青春を生きる彼らの未来は……。
上司や部下に「子どもかよっ! 」と心の中で叫んだことのある人、必読!
「職場にいるいる! 仕事であるある! 」と共感し、日ごろの溜飲を下げる側となるか、それとも、「ここに描かれているのは、もしかして僕のこと? 私のこと?」と足元を揺さぶられるか。あなたはどちらですか?

うぅ・・・怖い・・・怖いよ〜!
といってもホラーなわけではありません。主人公はイタイアラサー3人の物語です。
この3人は本当に痛々しいですよ。沙耶様は出来るように見せているだけ。自分もできるって勘違いしちゃっているんでしょうね。机に資料をたくさん載せていつも定時に帰ることが出来ず残業ばかりで忙しいという言葉が口癖。それでも結婚しているし趣味も充実しているし、自分はデキる人なんだって思いっきり思っているんだと思います。でも、それは巨大な勘違い。資料をたくさん載せているのは要領が悪いだけ。残業ばかりなのも仕事が出来ないだけ。抱えている仕事が全然終わっていないのにブログを見るとか意味わかんないんだけど。田丸というかなり年下の同僚にいろいろ言われてカチンとしていたみたいだけど、それは自業自得です。あなたの尻拭いをしてきたんだから。
スエマティは気持ち悪かった・・・。自分に自信を持つことは大事だけど、ちょっと自分と関わってきたからって自分に好意を持ってると思っているのが末恐ろしい・・・。13年も遠距離恋愛していたと思っているのも、終わったと思ってサシカラに付き合っている同僚にフリーになったとメールするのも全てにおいて気持ち悪かった・・・
奈央子も自信過剰なのかなぁ・・・わかりません。三輪に固執する意味も分からないし、かわいこぶるのもそこでかよ!?って思うし。旦那さんが可愛そう。BL好きなのはかまわないけど、一緒に住む人の事も考えないと・・・。
3人とも周りが全然見えてない。自分が良いと思った事に突き進む。何度心の中で「ちがーう!」って叫んだことか。自分が可愛くてたまらないんだろうなと思う。
・・・と3人がいかに気持ち悪くてイタかったか書いてみたけど、自分は人にどう思われているんだろうと、考えないようにしていたけどこの本を読んでものすっごく考えてしまった。各章の間に幕間のような形で同僚たちのランチの会話が書かれているのだけど、黒いランチという名の通り陰口のオンパレード。至極もっともな事を言っているのだけど、やっぱり人の悪口をずっと聞くのは良いものではないですよね。
私も30歳を数年後に控えて、自分はどういう立ち振る舞いをすればいいんだろうと分からなくなる時がある。自分の言った言葉に対して物凄く後悔することもある。27歳の人間が言うセリフじゃないよな。とか。他の27歳ってどういう事をしていてどう人と関わっているの?なんて、気になったりもします。
何だか自分が今悩んでいる事の悪いバージョンを見せつけられた気がして怖くてしょうがなかったです^^;私、周りの人たちにエラそうにしてたりしてないかな?仕事が出来ないのに出来るって思ってないかな。テングになっちゃったりしてないかな。
私も大人になりきれてないから。足元は揺さぶられなかったけど、本当に私は大人になりたい。でも、どうしたら大人になれるんだろう。私はずーっと分からないでいます。

〈PHP研究所 2012.6〉H24.7.15読了

廃工場のティンカー★ベル 永嶋恵美5

廃工場のティンカー・ベル廃工場のティンカー・ベル
著者:永嶋 恵美
講談社(2012-05-17)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
廃工場、廃線、廃校……etc.人けなくうち捨てられた廃墟には、何かの気配が残っている。いつまでも消えることなく、時間を経るほどにむしろそれは強く漂う。人生に疲れたら、うら寂しい場所に行ってみよう。その何かが足下を照らし、背中を押してくれる。閉じこもりOL、家出少年、行きづまった事業主──彼ら彼女らの今を劇的に変化させる6つの物語。心に響く短編集。
「廃工場のティンカー・ベル」建築士の片平幸雄は廃工場へ向かった。そこには14〜5歳に見える少女がいた。
「廃線跡と眠る猫」フタバが死んで13年が経った。美野里はかつて線路の側に住んでおり、たまに聞く警笛の音におびえていた。それは今でもどこかに残っていて、深く関わってしまうと不幸にさせてしまうのではないかとどうしても考えてしまう。
「廃校ラビリンス」佐藤拓人はかつて9か月だけ過ごした小学校へ逃げ込んでいた。夜だったため、警備の人に見つかってしまう。その人はイマドキの若いお兄さんで、何だか拓人は調子が狂う。
「廃園に薔薇の花咲く」祥に言われるがまま廃園となった遊園地へ来ていた美緒。祥は死ぬつもりでいた。
「廃村の放課後」牧村勝己は横添遼子と息子の聡ともに学生時代にゼミの人たちと来たことのあった村へ来ていた。
「廃道同窓会」かつての高校山岳部だった3人は山を登っていた。山が好きだった香津美が亡くなったことを知り、散骨するために登っていた。

初読み作家さんでした。私好きです。とても好き。
ちょっとうるっとして、最後には微笑むことが出来るような作品でした。
どの作品も何かしらの想いや悩みを抱えていて、一人ではどうすることもできない状況にあるのだけど、側に人がいてくれることがこれほど大きくて強いものなのかということをしみじみ感じた作品でした。
それは身近な人だったり出会ったばかりの人だったりするのだけど、そんなことは関係ないのかなと。
本当にどのお話も良かった。多分どれも最後に光が見えたからだと思います。
特に好きなのは「廃村の放課後」かな。2人がお互いを強く強く想いあっていて必要と感じているのに、分かってないなぁもう。っていうもどかしさが^^;やきもきさせました。でも、聡君がちゃんと分かっていたんだなと思って嬉しくなりました。
私も、とても幸せな気持ちになれました。
永嶋さんは初めてでしたが、他の作品も絶対に読んでみたいと思います。

〈講談社 2012.5〉H24.6.13読了

ユリゴコロ 沼田まほかる5

ユリゴコロユリゴコロ
著者:沼田 まほかる
双葉社(2011-04-02)
販売元:Amazon.co.jp
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亮介が実家で偶然見つけた「ユリゴコロ」と名付けられたノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。創作なのか、あるいは事実に基づく手記なのか。そして書いたのは誰なのか。謎のノートは亮介の人生を一変させる驚愕の事実を孕んでいた。圧倒的な筆力に身も心も絡めとられてしまう究極の恋愛ミステリー!

通勤途中の本屋でやたらと宣伝していたので気になって予約しました。沼田さんの名前は知っていましたが初読。
あらすじだけでもカナリ気になりましたが、読んでいったらもう始めから心を鷲掴みにされました。たった数ヶ月前までは幸せだった家庭。始めに結婚を約束した彼女、千絵が失踪し、母が死に、父は病に侵される。
あまりの怒涛の展開に心が追いついていない中、亮介は4冊のノートを見つける。
そこからが怒涛の展開。ノートの中身は気持ちが悪くて一体誰のことなんだろうと気になって読む手が止まりませんでした。
でも、気持ち悪く感じたのは最初だけで、だんだんその気持ちはなくなっていきました。
ノートの行く末に千絵の行方に亮介の出生。もう気になることがありすぎてそれどころじゃなくなります^^;
そして最後のまさかのどんでん返し。
後半の展開が、やたらすらすらいくなと思ったら、そういうことだったのかと全てが合致します。それが、えぐい部分もあるのですがとても温かいんです。
上手く表現できないのですが・・・。
ノートの主の犯した罪は決してぬぐえるものではないのですが、それでも許してしまうようなそんな気持ちが生まれてしまいます。
最後の穏やかさが、たまらなく温かかったです。

〈双葉社 2011.4〉H23.9.21読了

エルニーニョ 中島京子4

エルニーニョ (100周年書き下ろし)エルニーニョ (100周年書き下ろし)
著者:中島 京子
講談社(2010-12-10)
販売元:Amazon.co.jp
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二人は、再び会えるのか――!?
東京の女子大生・瑛(てる)は、同居している男・ニシムラのDVから逃れるため、新幹線に飛び乗った。行き着いた先は、行ったこともない南の町。そこで、ニノという男の子と出会った。ニノもまた、何者かから逃げているらしい。南へ南へ、2人の逃避行が始まった――
そして、ついに引き裂かれてしまう瑛(てる)とニノ・・・・・・
二人は再び出会うことができるのか――?

中島さんの作品は2冊目です。
中島さんが何かのインタビューでおっしゃっていましたが、今まで書いた作品のなかで、瑛は最年少の主人公だそうです。本当は20代後半くらいを想定していたそうなのですが、結果21歳と言う若さになったそうで。
う〜ん・・・私の感想としては少しリアリティに欠けるかなと思ってしまいました。
最後は丸く収まって、瑛もニノも自分の居場所を見つけることが出来てよかったなと思ったのですが。
こんなに逃げ回って、途中で出会ったニノと2人、こんなに上手くいくかなとか、こんなに身元が良く分からない二人をみんな受け入れてくれるかなとか、そういう思いしか浮かびませんでした。すみません、夢がない上に荒んでいて^^;
ただ、瑛に共感できるところはありました。
ニシムラのDVが苦しくて、だから逃げているのに、どうして親も、鯨谷も瑛ではなくニシムラの言葉を信じるんだろう。
「話してみたらいい人だったよ。」そんな事を言われても、ずっと2年も一緒に暮らしてきた瑛より理解できたとは思えない。瑛がどうして逃げているのか、どうしてそんなにニシムラを避けているのか、そこをちゃんと考えろよ!って思いました。
両親の事も、突拍子もなく問題が浮上してあっという間に沈下したような感じでしたが。あの父親はなんですか。身勝手で自分の事しか考えてなくて。母親も。結局夫に何も求めずに戻ってくるなら最初から逃げなきゃいいのに。
でもまあ、それぞれに言い分があって、それぞれに抱えているものがあるから、相手の気持ちがちゃんと理解できる事なんて難しいから、こういう人間感情が入り組んでいるのが普通なのかなとも思ったけど。
瑛とニノの関係はとても分かりやすくて純粋で可愛らしかった。
ほっとけないから、一緒にいたいから、側にいる。
2人の人生がこれからどうなっていくのか分からないけど、それでも応援していきたいラストだったなと思います。

〈講談社 2010.12〉H23.4.2読了

不思議な羅針盤 梨木香歩4

不思議な羅針盤不思議な羅針盤
著者:梨木 香歩
文化出版局(2010-12-17)
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憤ったり寂しかったり納得したり、何かを慈しんだり発見したりうれしくなったり。そんな日常にあっては穏やかに南北を指す磁針では物足りず、心の深いところで「不思議な羅針盤」が欲しかったという著者。同じ年代の女性たちとおしゃべりするような心持ちで、同時に07~09年の社会的事象までも映し出した、万華鏡のようなエッセイ集。

梨木さんの作品は久しぶりに読みました。
この本は「ミセス」で連載されていたものなんですね。道理で何だか文章も内容もお上品な感じで。って、梨木さんの文章も雰囲気もお上品っぽいイメージですが。
何だか気品のある生活を送ってらっしゃる感じがひしひしと伝わってきました~。
憧れちゃいますね。たくさん旅行もしてらっしゃるみたいだし。
新聞の集金のおじいさんとの会話が素敵で印象深いです。
おじいさんは自分の仕事に誇りを持っていて、きっと楽しく仕事をされているんだろうな。
あとは「西の魔女が死んだ」の話が多く出ていました。
主人公のまいちゃんと梨木さんが同一人物のようによく見られているようで、「いじめられてたの?」なんて言われるらしい。
私はそう思ったことはないなー。
ちょうど中1の時に初めて読んだので、どちらかというと私とまいちゃんをダブらせていたかも(いじめられていたわけではないけど)。
共感できるところもあったし、おばあちゃんとこういう生活っていいなぁって思ったりしたから。
梨木さんが読まれた本の話もちょっとされていました。
「パウル・ベライター」と「アンのゆりかご」が気になったので早速図書館に予約。
こうやって読みたい本が増えてくるんですよね~。ああ、そんなつもりはなかったのに^^;

〈文化出版局 2010.12〉H23.2.15読了

小さいおうち 中島京子5

小さいおうち小さいおうち
著者:中島 京子
販売元:文藝春秋
発売日:2010-05
おすすめ度:4.5
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オススメ!
赤い三角屋根の家で美しい奥様と過ごした女中奉公の日々を振り返るタキ。そして60年以上の時を超えて、語られなかった想いは現代によみがえる。

直木賞受賞作品。ようやく読みました。
中島さんは名前は存じ上げていましたが、作品を読むのは初めてでした。
私はとても好きです。このゆったりとした時間が流れるような文章が好きです。
現在の世界と過去の世界の交錯の仕方がまた良かったです。
現代のタキは88歳。生涯結婚はせず、妹の子どもの家の近くで1人で暮らしている。
知り合いから勧められて本を出版し、わりと売れた事から第2弾の話が出てきた。
しかし、出版社と本の内容が食い違い、連絡が来なくなる。
でも、タキは自分が生きてきた時代と、自分が本当の家族のように過ごしてきた平井家についてを書き始めるんです。
戦争が終わって65年が経ち、戦争を知っている人たちもどんどん少なくなっている中で、こういう作品を読むことが出来るのはとても貴重だと感じました。
まるでその時代を生きてきたような文章が素晴らしいです。
タキの妹の孫である健史は、おばあちゃんに嘘はつかないようにと諭し、この時代はおばあちゃんの言っているような時代じゃないと、自分が学んだ事をつらつらと説明する部分は、なんて醜いんだろうと思いました。だから、私は健史が出てくる度に、少し嫌な気がしていました。
ただ机に座って教科書を読んで学んだだけの青二才が何をえらそうに言っているんだと思ったんですよね^^;
その時代を生きてきたおばあちゃんに、なんてバカで失礼な事を言っているんだろうと。
その時代は多くの事件があり、時代が変わる瞬間だったのかもしれないけど、意外とその時代を生きた一般国民は、普通に暮らしていたりしていたんじゃないかと思います。
太平洋戦争も、完全な劣勢だったけど、国民は終戦の直前まで日本が不利だと言うことは知らされていなかったと聞きましたし。
健史が「南京では大虐殺が起こっていたのに、日本では戦勝大セールがおこなわれていたんでしょ?」と言い、それは悪夢だ。と言ったところがありました。
私はそこを読んで、9年前の事を思い出しました。
9.11事件。同時多発テロが起きた時、その次の日?だったと思うのですが、私の高校では普通に体育大会が行われていたんです。
翌日の授業である先生が言っていました。「きっと同時多発テロについては君たちの子どもが学ぶ頃には教科書に歴史上の事件として残るだろう。そんな時に呑気に体育大会をやっていたなんていったら、きっと自分の子どもに、そんな大変な事件があったときに何やってんの!?ってきっと言われますよ」って。
言い方は悪いけど、当事者以外はそんな感じで、生きているんですよね。
(修学旅行は海外から国内に変更になりましたけど。ブツブツ)
タキさんは女中として過ごしている間は辛い事も勿論あっただろうけど、幸せなときを過ごしたんだろうと思います。なのに、最後はかわいそうでした。
ずっと読み進んでいって、いきなりプツッと切れたので、どうしたんだと思いましたが、語り手が変わって、あんな展開になろうとは。タキは少しは浮かばれたのではと思います。健史の印象も少し変わりました。
私は、あの出来事に関してタキがしたことは、間違っていないと思います。
にしても読んでいて驚いたのは、1940年代に東京でオリンピックが行われると決まっていた事。戦争で遅れたんですね。しかも、札幌でも行われると決まっていたとは。それがびっくりでした。

〈文芸春秋 2010.5〉H22.8.22読了

お菓子手帖 長野まゆみ3

お菓子手帖
お菓子手帖
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金花糖、動物ヨーチ、クリーム玉、地球モナカ……
時代を彩る駄菓子から、エキゾチックな洋菓子、伝統の和菓子まで、ナガノマユミの自伝小説にもなっている、すべてがお菓子でできた甘く懐かしい物語。

エッセイ本です。長野さんって、素敵な歳のとり方をされてるなぁと、失礼ながら思いました。
本当に、お菓子に囲まれた生活を送られていたんですね。
買い与えられたって言う意味ではないです、念のため。
家系が甘党ということもありますが、長野さんがいろんな世代ごとにいろんなお菓子を食べる食べる。
買い食いしまくっているのです。いいないいな。
そして丁度バブルの頃に20代。それもまたちょっと羨ましい。私が生まれた頃の事だから、私は不況の時代しか知りません。
読み終えた後に、何もお菓子を食べていないのに、口の中が甘ったるくなった気がします。何か甘いものが食べたくなりました。
宮沢賢治の話がちょっと出たのも嬉しかった。
長野さんはバターが苦手らしい。
六花亭のマルセイバターサンドがダメらしい。私は大好きなんだけどな。小さい頃、レーズンが苦手だったけど、これは食べられましたし。詰め合わせがあったらまずこれを取ります。あと霜だたみ。

〈河出書房新社 2009.6〉H22.2.10読了

今日もやっぱり処女でした 夏石鈴子4

今日もやっぱり処女でした
今日もやっぱり処女でした
「人生って、何歳ぐらいまで迷っていていいのかな?」山口あおば、24歳。イラストレーターになる夢を追いかけて、派遣社員をしながらイラストを勉強しているけれど、自分の居場所と将来に自信がもてない…。ほっとして、じんわり元気が出る「あおばの物語」第一弾。

「香桑の読書室」の香桑さんからオススメしていただき、手にとりました。
私が誕生日のめでたい記事にいっぱい愚痴を書いたらこの本を読んでみてとオススメしてくださったんです。
最初のあらすじを読んでいても、何となく主人公に共感できるし。ほぼ同じ年だし(まだ25歳になったと言う実感が持てないので)
でも、あおばは仕事を辞めるっていう決意をしたのだから、それだけでも勇気のあることをしたと思う。
私は、仕事を辞めたいと思っていても、勇気もなくてその場に居座ったままだから。
私はあおばのように大きな夢を持っていないから、辞めてどうするんだっていう未来が全然描けないけど、それでも、今のままじゃダメだなって事は分かってる。

今日、石田衣良さんの講演会に行ってきたんです。講談社100周年企画みたいなので。
そんなに大きな中身のない話が多かったんだけど(すみません)それでも物書きの大変さや楽しさを面白おかしく話してくださいました。
その中で、こんな言葉をおっしゃっていました。
「自分の人生なんだから、棒に振ってもいいじゃない」
…決して悲観的な意味ではありません。
石田さんも小説家になろうと決意し、10年、20年は棒に振ろうと思っていたそうです。アルバイトをして小説を書いて、20年ダメだったらちゃんと働こうと思っていたと。
その生き様が、とてもカッコイイなと思いました。
世間と同じように大学を卒業して企業に正社員として就職して。私が勤めているところは、正直恵まれていると思います。給料も良いと思います。
でも、私がやりたい仕事では決してなくて。今でも苦痛でしか感じていなくて仕事が楽しいとほんの一瞬も思ったことがなくて。
それなら、給料が少なくったって自分がやりたい事を見つけて、たとえ毎日じゃなくても楽しいと思えることが多くなったら良いなぁと思う。
石田さんの言う解釈とは違うけど、私は自分のやりたい事を10年くらいで見つけて、その間の期間を「棒に振っても」いいかな。とか、何だか色々考えちゃいました。
その過程だって、決して自分にとってマイナスじゃないと思うし。もちろん恋愛だって結婚だってしたいけど。望みすぎなのか^^;

話はそれましたけど、あおばは人に恵まれてると思いました。前の会社の上司は意味不明だったけど、同僚の福貴子さんがとっても素敵だし、お父さんもお母さんも私は好きでした。福貴子さんがかつていじめに遭っていたとき、親に言わなかったのか?って質問した時、福貴子さんは言えるわけがないっていってた。でも、あおばは言えばいいのにって素直に感じていて、それはやっぱり親との関係が良いからなのかなとも思って。福貴子さんの家族が悪いって訳じゃもちろんないけど。
あおばがこれからどうなっていくのか分からないけど、きっと先の道は明るい。私も、明るい道を見つけたい。そう思える作品でした。

〈角川学芸出版 2008.10〉H21.8.23読了

f植物園の巣穴 梨木香歩3

f植物園の巣穴
f植物園の巣穴
植物園の園丁は、椋の木の巣穴に落ちた。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、烏帽子を被った鯉、幼きころ漢籍を習った儒者、アイルランドの治水神…。動植物や地理を豊かにえがき、埋もれた記憶を掘り起こす会心の異界譚。

何だかもの凄く久しぶりな更新です。
1週間書かなかった事って、はじめてかも。
でもたくさんの人が見に来てくれて本当に嬉しいです。
ちゃんと本も読まなくちゃ。現実逃避ばっかりしてないで。
久しぶりの梨木さんです。
相変わらず独特の世界観で、私はちょっと着いていけませんでした。
難しいです。
でも、最後に大きなカラクリがあってびっくり。
ずっと騙されていました。
だけどそれも心地いいくらい。
良かったねって思えました。

〈朝日新聞出版 2009.5〉H21.8.7読了

少年アリス 長野まゆみ4

改造版 少年アリス
改造版 少年アリス
アリスは友人の蜜蜂から夜の学校へ行かないかと誘われる。
蜜蜂は兄から借りていた鳥の本を今夜中にとって来いと言われ、飼い犬の耳丸とともにやってきたのだった。
2人と耳丸が学校の中へ入ると、理科室から人の話し声が聞こえる。
覗いてみると、自分達と同じくらいの少年達が授業を受けていた。
授業の内容は、よく聞いても2人は意味がわからない。
アリスは先生に見つかったが、持っていた細工たまごのお陰で少年達とともに授業を受けられる事になった。
授業の内容は、星や月を作る事。
アリスはこれから起こる恐怖を感じながらも、最後まで見届けたいという思いに囚われていた。

再読です。確か7年位前に読みました。でも、忘れていました。
図書館で改造版が出た事を知り、読み返す事にしました。
改造版は、ちょっと分かりにくい言葉が最後のページに解説として載っています。
長野さんの作品には綺麗な言葉がたくさん出てくるから、それがいいんだけど、わからない事も多かったりして、大いに活用して今回は読みました。
アリスが経験した鳥になりそこなった子達との関わり。不可思議で魅力的です。
自分がこの後どうなってしまうのか、考えると怖いけど、経験してみたいとも思う。
月や星を作って、星空に飾るなんて、素敵。
そして行方不明になったアリスを、勝手に一人で帰ったとは思わず一晩かけて探す蜜蜂。
2人の関係がとっても可愛らしかったです。
そして最後の最後が気になりますね。
蜜蜂が銀の実をあげたクロツグミは果たしてアリスだったのか、それとも黒いコートを着た少年だったのか。
気になるところです。

〈河出書房新社 1989.1
 河出書房新書 2008.11〉H21.2.10読了

春になったら苺を摘みに 梨木香歩3

春になったら苺を摘みに (新潮文庫)

「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。
「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。
ウェスト夫人の強靱な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける—物語の生れる場所からの、著者初めてのエッセイ。

梨木さんのエッセイ本です。でも、何だかおとぎ話のようです。
ウェスト夫人の下宿先での人との関わり合いが「村田エフェンディ滞土録」のようでしたし、舞台が英国だからかウェスト夫人は「西の魔女が死んだ」のおばあさんが思い浮かびました。
梨木さんのいろんな体験とたくさんの人との出会いが、あんなに素敵な作品を生み出しているんですね。
出来事の一つ一つが作られた物語のようにあったかくて素敵でした。
異文化だからですかね。私は海外にいった事はありませんが、こんなに素敵な出来事にはめぐり合えないような気がします。
久しぶりに、梨木さんの小説が読みたくなりました。

〈新潮社 2002.2
     2006.3〉H20.7.4読了

ハルさん 藤野恵美4

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(瑠璃子さん…今日はね、ふうちゃんの結婚式なんだよ。まさか、この僕が「花嫁の父」になるなんて…)
ふうちゃんの結婚式の日、お父さんのハルさんは思い出す、娘の成長を柔らかく彩った五つの謎を。
幼稚園児のふうちゃんが遭遇した卵焼き消失事件、小学生のふうちゃんが起こした意外な騒動…。
心底困り果てたハルさんのためにいつも謎を解き明かしてくれるのは、天国にいる奥さんの瑠璃子さんだった。
児童文学の新鋭が、頼りない人形作家の父と、日々成長する娘の姿を優しく綴った快作。

2日で読み終えるなんて、社会人になって初めてだ〜。
児童作家さんなんですね。
何だか文章の雰囲気がそんな気がしました。
ハルさんはとっても優しそうですけど、何だかじれったい感じでしたね〜^^;
「ささらさや」のさやを思い出しました。
旦那さんと奥さんの逆バージョンのような。。。
お父さんがこんな感じだったら、ふうちゃんもそりゃ〜しっかりもするわね^^
でも、ハルさんの家族への愛は素敵です。
瑠璃子さんが上手くフォローをしていて、良い夫婦だったんだろうな〜と思います。
ふうちゃんが、旦那さんを選んだ理由が、ものすっごく分かりました。
私も、お父さんと似た人と結婚したいなぁって思うもん。
ちょっと頑固さがなくなれば尚更いいなぁ^m^

〈東京創元社 2007.2〉H19.7.1読了

参加型猫 野中柊4

参加型猫

表参道の街を、段ボール箱を抱えて歩いてくる女の子。
勘吉の目がその箱に注がれた瞬間、箱から子猫が数匹落っこちた…。
“大変!捕まえて!”これが、勘吉と沙可奈、ひいては彼女の愛猫チビコちゃんとの、運命的な出会いだった―。
居間や寝室、食卓でも積極的に二人の生活に参加する猫と共に、温かく心地よい場所を探し求めて移動を続ける夫婦を描いた、とびきりキュートな物語。

とってもかわいらしい話でしたね^^
チビコちゃんもとっても可愛いし。
勘吉と沙可奈の夫婦も友達のように仲がよくって良いです。
ずっと勘吉目線の話でしたが、勘吉の気持ちに対して、じゃあ何で一緒に住んでるんだ。何で結婚したんだ。ってツッコミを入れたくなるときもありました^^;
沙可奈の意見に反対してたりイライラしてたり、妥協してばっかなんだもん。
でも、一緒に暮らすって言うのは、幸せでいいこともたくさんあるけど、我慢したり合わせたりすることも、もちろんあるんだろうな。
言い方が悪いかもしれませんが、他人同士が一緒に暮らしていくんだもんね。
このお話は、引越しに始まり引越しに終わる、時間の流れはゆっくりしている物語です。
でも、2人の過去の話になったり、気持ちがずしっと入ってきたり、結構内容はあると思います。
すらっと読める作品なので、気が向いたら読んでみるのもいいかもです。

〈マガジンハウス 2003.10
 角川書店 2006.9〉    H19.3.1読了

裏庭 梨木香歩3

裏庭

昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。
高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって絶好の遊び場だ。
その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、照美は、ある出来事がきっかけとなって、洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、声を聞いた―教えよう、君に、と。
少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。
少女自身に出会う旅に。

ずっと読もう読もうと思って先延ばしになっていた作品。
やっと読めました。
どんなストーリーかと思ったら、本当にファンタジーだったんですね〜。
びっくり。
でも、違和感なく読めました。
梨木さんらしいキレイな作品だなぁと思いましたね。
照美の心の闇に反応して、裏庭が開いてくれたのでしょうか。
顔も知らないおばあさんが照美に残したものは、言葉に出来ないほど素晴らしい宝だったんですね〜。
児童書みたいですけど、結構内容はハードです^^;
ラストが良かったですね。
やっぱり親子は言葉のコミュニケーションがないと。
私もこんな冒険、してみたいな。

〈理論社 1996.11〉H19.2.6読了

箪笥のなか 長野まゆみ4

箪笥のなか

親戚が必要のなくなった、古い紅い箪笥を譲り受けた。
自分の家に箪笥を運ぶ際、弟も気になるらしく、よく家を訪れるようになった。
弟は、人ではないもの、生きていないものが見えるらしい。
この箪笥も同様、数々の「非日常」を送り込んできた。

短編で、箪笥に関わる不思議な話が詰まってる。
どの作品も、不思議であったかい感じ。
長野作品では珍しく、少年が出てこない。
いつも高校生くらいの男の子が出てくるのに。
まぁ、妖しげな感じがないから素直に読めたかも^^あっても良いんだけどね。
また、弟がまた良いな〜
大人だけど、子供みたいな純粋な部分があるような感じがして。
ハトも可愛い。子どもが欲しくなる^^
長野さんの作品は久しぶりだったけど、この独特の雰囲気、好きですね〜。

〈講談社 2005.9〉H18.10.19読了

さくら 西加奈子3

さくら

長谷川薫は22歳。家族と離れて東京で暮らしている。
その家族から、手紙が来た。
「年末に帰る」という父の手紙。
薫は2年ぶりに、実家に帰る事になった。
実家に帰ると、12歳のおばあちゃんになった犬のサクラが待っていた。
サクラを散歩しながら、兄弟で過ごした時間を思い出す。

凄く評判になった作品ですよね?
泣いた。って言う言葉も聞いたのですが。
正直私は泣けませんでした。
確かにラストは家族が1つになろうとしている姿が見えて、感動的ではあるんです。
ですが、そこまではいかなかった。
イマイチ共感できなかった・・・のかなぁ。
まず、家族との再会の時、意味深で、兄が亡くなっているって言うのを伝えているのに、お兄さんが何故死んでしまったのか。
何故お父さんが帰ってくるっていう表現なのか、わかるまでにものすご〜〜〜く読んでいかないとわからないという^^;
それが読んでいて気になったし、両親や兄弟の特徴がありすぎて、リアリティを感じる事ができなかった。
だからなのかな・・・。
ど〜も妹が好きになれず^^;
お兄ちゃんが1番リアルだったかな。頑張り屋で。
兄弟が小さいころのことや、兄弟の青春時代?のことは結構好きだったんだけど。
学生時代に対する恋愛についてや、妹マキの性格や行動がリアルじゃないから、入り込めなかったのかなぁとも思う。
うちも兄弟3人だけど、全然違うしなぁ。
ずっと入り込むことが出来ずに終わってしまった感じです。残念。

〈小学館 2005.3〉H18.9.14読了

家守綺譚 梨木香歩4

家守綺譚

綿貫征四郎は、学生時代の親友高堂の家の守をする事になった。
高堂は学生時代にボート部に所属しており、ボートを漕いでいる最中に行方不明となった。
高堂の両親は、家を離れ子どもの世話になることになったが、この家をなくす事は出来ない。
そこで、綿貫に家の守を頼んだのだった。
物書きで食べている綿貫にとっては嬉しい頼みだった。
家には庭園があり、数々の草花が育っている。
ここへ住むようになってから、不思議な事が起こるようになった。
人ではないもの達が現れ、また床の間の掛け軸から、ボートを漕いで高堂も姿を現すようになったのだ。

たくさんの植物の事を交えて、綿貫の生活が描かれている。
情緒豊かで気品が漂う作品だな〜という印象。
高堂と綿貫の関係が好きだな。
お互いをちゃんと理解しているのがわかる。
周りの雰囲気も凄く素敵。
こんな植物に囲まれた日本家屋に住むって言うもの、いいかもしれない。
そして、「村田エフェンディ滞土録」で土耳古に研究に行っている村田と知り合いらしい。
話のつながりが面白い^^嬉しい発見でした。
2004年の本屋大賞でも、上位に入ってます。

〈新潮社 2004.1〉H18.8.10読了

エンジェルエンジェルエンジェル 梨木香歩4

エンジェル・エンジェル・エンジェル

コウコは寝たきりに近いおばあちゃんの深夜のトイレ当番を引き受けることで、熱帯魚を飼う事を許された。
夜、水槽のある部屋で、おばあちゃんは不思議な反応を見せ、少女のような表情でコウコと話をするようになる。
ある日、熱帯魚の水槽を見守る二人が目にしたものは、あまりにも無残な光景。
それにより、おばあちゃんの胸奥に眠る、少女時代の切ない記憶を呼び起こす。

短い作品だったけど、読み応えはありました。
コウコの今と、おばあちゃんの過去が交互に書かれていることで。2人の少女時代が似ているって言う事を伝えようとしたのかなぁと思ったけど、そんな簡単なものではなかったですね。
おばあちゃんがコウコをコウちゃんと呼ぶ理由や、エンゼルフィッシュが他の熱帯魚を殺してしまうことにはちゃんと意味があったんだね。
おばあちゃんはきっと、エンゼルフィッシュを自分に置き換えていたんだろうなぁ。
私がわかってないだけで、他にも2人の思いもたくさんかかれていたんだと思う。
梨木さんの作品は久しぶりだったけど、この独特の雰囲気、好きだなぁ。
あったかさや優しさがある気がする。

〈新潮社 1996.4〉H18.7.31読了

賢治先生 長野まゆみ3

賢治先生

賢治はどうしてこの汽車に乗っているのか、どこへ向かうのか分からずにいた。
汽車の中で、カムパネッラとジョバンナという少年達に出会う。
2人の少年もまた、何かを求めて汽車に乗っている。
宮沢賢治生誕100年記念作品。

最初読んでいてよくわからなかったのですが、主人公は宮沢賢治なのかな。
生誕100年って事は、私が小学校5年生の時に出版された作品なんですね。
ちょうど、国語の教科書に載っていて、今年が100年目だって先生が言ったのを覚えてる。
「雪渡り」という話を読んでいて、その内容好きで、すぐ宮沢賢治の文庫本を2冊かってもらった記憶がある。
でも、意味が分からなかったな〜^^;頑張って読んだんだけど。
今年って、111年じゃなかろうか。
これを気に、賢治作品を読んでみようかな。

〈河出書房新社 1995.10〉H15.3.12読了

ハルカ・エイティ 姫野カオルコ4

ハルカ・エイティ

ハルカは大正生まれの81歳。
見た目はハイカラで、化粧もばっちり。
10歳以上も年下の男達を虜にする。
ハルカの妹、時子の娘秋子は、ハルカと気が合い、よく会っていた。
今はそんな風貌のハルカだが、決して楽な人生ではなかった。
ハルカの半生を振り返る。
ハルカは英蔵とタキの間に5人兄妹の長女として生まれた。
明るく元気だが、繊細な心も持つ長女らしい性格。
友人の由里子、日向子、ちづるといつも一緒。普通の女学生だった。
20歳で2つ年上の大介と結婚し、一人娘、恵を授かる。

姫野さん初読でした。
すいすい読めて、あっという間に読んじゃいました。
ハルカは強いねぇ。
きっと何歳になっても気持ちが若くて、努力もしているんだろうなぁと思う。
でも、決して平坦な道ではなく、色々あったんだよね。
戦争もあったし。
にしても、氷室が許せない!女の敵よ!
っていうか、自分の事しか考えていないよね。最悪だわ。
昔、本を読んでいて、ちょっとでも浮気とか不倫とか出てきたら、私イヤだったんだ。
あ〜嫌だ。と思って、読まなくなってしまう。
でも、最近ちょっと変わってきました。
ちゃんと読んでいくと、気持ちが分かったり考えさせられたりする。
あ、だからってしてもいいってワケではないけれど^^;
だから、途中で投げ出す事はありませんでした。
ハルカと大介は、やっぱり深い絆で結ばれていたのかなぁと、思いました。
年をとってからの2人は、好きです。

〈文芸春秋 2005.10〉H18.5.12読了

女優X 夏樹静子4

女優X―伊沢蘭奢の生涯

日本の新劇界を支えて華々しく活躍し、そして忽然と逝った伊沢蘭奢の生涯を描いたもの。
蘭奢は、三浦シゲという名で島根県津和野町で生まれる。
家は5代続く紙問屋で、シゲは何不自由なく育てられる。
だが、祖父が亡くなってから店が傾き始め、生活が楽ではなくなった。
女学生になった時、叔父に縁談が持ち込まれる。

10年位前にドラマ化された、伊沢蘭奢の生涯を書いたものです。
何でこれを読んだかというと、V6の三宅君が17くらいの時に、息子の佐喜雄を演じていたから☆
そういう理由ばっかりだね・・・^^;すみません。
見てないんだよぉ。。。見たいんだよぉ・・・。
誰か持っていませんかね?
ここまで、夢に向かって一生懸命努力する姿は素敵だよね。
家族を捨てて、女優を目指すのは、気持ち的にも金銭的にも辛かったと思う。
だからこそ、もっと長く生きてもっと活躍してほしかったなぁと思う。
38歳なんて、若すぎるよね。

〈文春文庫 1996.4〉H13.12.20読了

鳩の栖 長野まゆみ4

鳩の栖(すみか)

「鳩の栖」
安堂操は2年ごとに転校をする転勤族。
今回もいつものように過ぎるものだと思っていた。
しかし、今回は助けてくれる男の子がいた。名前は、樺島至剛。
彼のお陰で、操は友達が出来、クラスに溶け込むことが出来た。
だが、至剛には、さけられない死が待っていた。
「夏緑蔭」
寧は血のつながりのない母親と暮らしていた。
夏期講習を受けている時に具合が悪くなり、その時に助けてくれたのは大学生の降矢崇だった。
彼の家で飲んだ莱果水には、何か懐かしさを感じさせた。
「栗樹」
乙彦は7つ年上の甲彦と2人兄弟。
しかし、2人には血縁上の兄弟で、養子にいっている乙彦の1つ上の兄、靖がいた。
乙彦は靖が苦手だった。
しかし、靖が高校受験のため、乙彦の家に住むと言う事を聞き、動揺する。
「紺碧」
浦里了は義理の兄と2人で暮らしている。
兄は、了の姉の婿だった。しかし姉は死に、両親のいない了は兄とそのまま一緒に暮らしている。
了は兄の来島との暮らしに違和感を持っていた。
「紺一点」
名門の一宮に合格し、下宿をしている真木と、義兄と暮らしている了。
高校に入学しても生活は変わらなかったが、真木がすこしずつ変化していた。

短編集です。
「紺碧」と「紺一点」はちょっと続編でつながっているけどね。
私は「鳩の栖」が好きかな。
至剛が素敵だと思った。
自分のことよりも人のことを考えていて、それが凄くせつなかった。
でも、どの作品も好きだよ。
長野さんの作品って、男性2人の関係を書くのが上手いなぁと思う。
妖しい方じゃなくてだよ^^

〈集英社 1996.11〉H14.1.24読了

行ってみたいな、童話の国 長野まゆみ1

行ってみたいな、童話(よそ)の国

「ハンメルンの笛吹き」
ある町へ行った商人の話だ。
ネズミ捕りをした商人に、町人はお金を支払わなかった。
次の日から、子供たちが消えていった。それは、なぜか。
「ピノッキオ」
シラカバの樹液を吸って生きていたピノッキオ。
シラカバが刈り取られ、離れ離れに。
ジュセッペじいさんに人形にしてもらい、ピノッキオはシラカバを探す旅に出る。
「にんじん」
3人兄弟の末っ子のにんじんは、1人だけ赤毛。
親に虐められ、兄弟や近所の子どもにもいじめを受ける。
そんないじめを受けられ続け、にんじんに変化が訪れる。

タイトルがとても可愛らしかったので、あまりのギャップに驚きました。
でも、帯にしっかり残虐童話って書いてましたね…でも知らなかったんですよ!
大人向けの作品ですね。
私は相性がよくなかったみたいです。

〈河出書房新社 1993.10〉H16.9.1読了

村田エフェンディ滞土録 梨木香歩4



村田エフェンディ滞土録

土耳古文化研究のため、招聘された村田は土耳古で、英国人のディクソン夫人や考古学者である独逸人のオットー。
発掘研究者のギリシャ人のディミトリス。
土耳古人のムハンマド。
そして、利口な鸚鵡。
彼らと共に過ごし、研究に没頭する。
様々な国の文化に触れ、土耳古での日々を過ごす。

全く異なる国や文化で育った人々の生活。
その空間にいることでだけでも、多くの経験が得られるんだろうなぁなんて、思った。
育った環境が違うから、衝突もなくもないけど、その分絆が深まっていくのがわかった。
最後が切なかったなぁ。
鸚鵡の声が何とも物悲しい。

〈角川書店 2004.4〉H16.8.20読了

若葉のころ 長野まゆみ4

若葉のころ

K大2年になった凛一は1年になった正午と2人で千尋の家の離れに暮らしている。
ある日、突然外国へ行ったはずの有沢が現れた。
有沢に惹かれていくが、氷川の事を消し去る事は出来ない。
しかし、氷川のフットボールの情報が他大学へ流出し、凛一が疑われる。
やはり、氷川に近づいてはいけない。
会ってはいけないのだと、離れようと考える。

完結編です。
凛一ってば、いろんな人に想われていいね。
って、何嫉妬してるんだ、自分^^;
氷川も有沢も、凛一への思い方は違えども、考えてるんだよね。
くぅ〜羨ましい話だ。
最後の氷川の言葉は良かったですね。

〈集英社 2001.11〉H15.9.19読了

彼等 長野まゆみ3

彼等

高3になった凛一は氷川の近くへ行きたいためにK大を受ける予定である。
かつて父の門下であった千迅が現れ、凛一の淹けた花をけなして彼をからかう。
そして、従兄弟の正午が心に傷を負い、凛一が巻き込まれる。
何もかも投げ出したくなる時に、凛一は逃げこめる大切な場所があった。

第3弾です。
これが1番良く分からず・・・。
享介と凛一は遠距離だしね^^;
展開がない分、物足りなかったです。
花の家元になるような人は千迅のような人間なのかなぁなんて、思ったりした。
正午が元気になってくれるといいなぁ。

〈集英社 2000.5〉H15.9.19読了

碧空 長野まゆみ3

碧空

凛一が享介とであって1年半の月日が流れた。
凛一は高2になり、享介はフットボールの強い京都の大学に進学した。
凛一は1つ年上の有沢改という人物に出会う。
彼は“普通”の男である。しかし、凛一に近づき、もてあそぶ。
そんな彼に、戸惑いながらも惹かれて行った。

2冊目から凛一があまり好きじゃなくなってきました。。。
純粋無垢な綺麗な男の子かと思ったら、意外とそうでもなくて・・・^^;
私はちょっと好きになれないかも・・・
誰を好きになっても良いと思うんだけど、どちらも諦められないというような感じがなんとも・・・
これからはどうなっていくのかしらと、気にはなったね。

〈集英社 1998.11〉H15.9.14読了

白昼堂々 長野まゆみ3

白昼堂々

家元を祖母に持つ原岡凛一。
身体が弱く、進級試験の日も体調を崩し、従兄弟の省子が変わりに受けた。
その事実を後で知り、省子に試験を受けた変わりに美術館の監視係を頼まれる。
そこで、氷川良介に出会う。
良介は凛一を省子と間違えていた。
凛一は、彼に恋をした。

う〜ん・・・こういう世界の本だったのね・・・という感想^^;
知らずに読みました。
しかも4冊続くと言う・・・ここまできたら全部読んでやろうじゃないかという気になり。
もどかしかったね〜読んでて。
ここで言いなさいよ!とか、考えながら読んでました^^;
でも、三浦しをんさんの「月魚」の方が好みかな。。。
なんて・・・
凛一も、良介も嫌いじゃないです^^

〈集英社 1997.9〉H15.9.13読了

兄弟天気図 長野まゆみ3



兄弟天気図

弟史には姉美、兄市という姉と兄がいる。
身重の姉が6歳の時に死んだ弟介という弟史にとっては兄がいる事を語った。
それから弟史は、兄市に似た学帽をかぶった少年を見かけるようになる。

これは、結構ほのぼのするのよ。
初めは展開が読めなかったんですが^^;
ラストがかわいかったです。
ちょっと切なさもあったしね。。。

<河出書房新社 1996.7> H15.5.10読了

西の魔女が死んだ 梨木香歩4



西の魔女が死んだ

まいは母方の祖母が危篤と聞き、母とともに祖母の家へ向かう。
車の中で、祖母と一緒に過ごした2年前のことを思い出していた。
まいは、どうしても学校へ足が向かなくなってしまい、登校拒否となった。
そこで、祖母の家へ療養も兼ねて住むことになった。
祖母はイギリス人だが、まいよりも日本のことを知っていた。
植物や虫について、多くのことを教えてくれた。
また、祖母は魔女の家系であるという。
魔女の血をもつまいは、祖母とともに魔女トレーニングを始める。
そこで、まいは祖母と約束を交わす。

感動した。おばあちゃんが凄く素敵な人だね。
おばあちゃんと過ごしたこと全て、まいの宝物になったと思うよ。
そして、ラストが感動。
おばあちゃんはまいと交わした約束を覚えていたんだね。
タイトルは衝撃的だったけど(笑)
この本を読んでよかったと思ったよ。

〈新潮文庫 2001.8〉 H14.3.10読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6を愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
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