今夜は癒やしの一杯で、自分にお疲れ様を。
麗しい女性バーテンダーと下戸の青年の想いを繫ぐカクテル、本音を隠した男女のオイスターバーでの飲み食い対決、父の死後に継母と飲み交わす香り高いジン、少女の高潔な恋と極上のテキーラ、不思議な赤提灯の店で味わう日本酒……。
大注目の5名の作家が「お酒」をテーマに描いた、心満たされる短編小説集第2弾!
お酒にまつわる5作品。どちらもバラエティに富んでいて面白かったです。
「きのこルクテル 青山美智子」この作品が1番好きでした。下戸のライター永瀬がピンチヒッターで行ったバーで出会った女性に一目ぼれして、彼女と菌友になるべくきのこを育てるお話(違う)永瀬はいづるとお近づきになりたいだけだったのに、きのこのことを調べて育てて、下戸なのにバーに通って健気だなぁと思いました。マスターのお兄さんもとても素敵。思わぬオチに驚きました。伏線回収にびっくり。
「オイスター・ウォーズ 朱野帰子」かつてSNSを炎上させて私の人生をめちゃくちゃにさせたこの男に復讐をしたいと牡蠣専門店へ連れて行く女。何だそれは(笑)SNSって怖いなぁ…と改めて思った作品でした。でもなんだかんだで似た者同士でタッグを組めば2人が敵だと思っているビジネスマンをぎゃふんと言わせる日が来るかもしれない^m^
「ホンサイホンベー 一穂ミチ」父の訃報により帰国し、16年ぶりに実家に帰ってきた彩葉。待っていたのは継母のホアン。2人が過去のことを話し出す。こちらもどういう展開になるのか予想がつかなかったけど、なんだか分かるような気がしたな。彩葉の想いも、ホアンの想いも。それにしても骨を捨てたら犯罪だけど砕いて粉々の状態になったら犯罪じゃないって言い方があれだけど面白くて不思議な話(「川っぺりムコリッタ」で知った)
「きみはアガベ 奥田亜希子」姪の凛子は母親の実家でもある圭一郎の家によく遊びに来る。ある日同級生が圭一郎の家にある植物を写生させてほしいとやってくる。私は男友達がいたことないから厳密には分からないけど、凛子の言い分はよく分かる。圭一郎と凛子の関係が優しくてとても好きでした。でも私は宮沢君はいい子だと思うけどなぁ(元も子もないことを言う)
「タイムスリップ 西條奈加」ふらりと降り立った駅の近くにあった居酒屋「十刻」一人で入った葉月は緊張しつつもおススメされる料理と日本酒を楽しむ。思い出すのは半年前に別れた彼のことだった。料理でもなんでも蘊蓄を聞くのは好きです。勉強になるから。葉月がふらりと立ち寄ったこのお店でモヤモヤを払しょくできてよかったです。最後の作品にふさわしかったです。
<双葉社 2023.5>2023.9.29読了