遊廓「墜月荘」で暮らす「私」には、三人の母がいる。日がな鳥籠を眺める産みの母・和江。身の回りのことを教えてくれる育ての母・莢子。無表情で帳場に立つ名義上の母・文子。ある時、「私」は館に出入りする男たちの宴会に迷い込む。着流しの笹野、背広を着た子爵、軍服の久我原。なぜか彼らに近しさを感じる「私」。だがそれは、夥しい血が流れる惨劇の始まりで……。
謎多き作家「飯合梓」によって執筆された、幻の一冊。
『鈍色幻視行』の登場人物たちの心を捉えて離さない、美しくも惨烈な幻想譚。
『鈍色幻視行』で登場人物たちが語っていた「夜果つるところ」ようやく読みました。
「私」目線で描かれる堕月荘にかかわる人々が描かれていく。
始めはなかなか物語に入っていく事が出来ませんでしたが、まあ「鈍色幻視行」の人たちもよく分かんなかったって言ってたしな…と開き直りながら読みました^^;
そもそも「私」は何者なのか。途中で告げられる切り札の意味は何なのか。こうやってたくさんの伏線を張って一気に回収するのが恩田さんですよねー。この世界は日本のことなのかそれとも違うどこかの世界の物語なのかそれすらも曖昧で。こちらも夢か現か分からなくなるような衝動に駆られました。
途中起きた事件は二・二六事件だろうか…と思ったけど何だか違いそうだし…
結局「私」の正体はなんだったのか。本当に良く分からないまま終わってしまったような気がします…。
発売順に読んだけど、私はこちらを読んでから「鈍色幻視行」を読んだ方が良かったような気がしました。残念…。
<集英社 2023.6>2023.9.27読了