あなたには、殺せません
石持 浅海
東京創元社
2023-07-10


「犯人だって、好きで犯罪に走ろうとしているわけではありません。必ず迷いがあります。その段階でうちに来てもらえれば、犯罪の発生を未然に防ぐことができます」――そのNPO法人には、罪を犯すか悩む人が相談にやってくる。相談員はそんな犯罪者予備軍たる人々から聞き出した犯行計画の穴を次々と指摘していく。不備を突かれた者たちの殺意は、果たして本懐を遂げるのか。犯罪発生を未然に防ぐ!?
「五線紙上の殺意」
高校時代の同級生とコンビで音楽活動をする有馬駿。その相方に裏切られた恨みを晴らすために相手を殺すと心に決めている。
「夫の罪と妻の罪」
夫が人を殺す瞬間を目撃した妻は、事件が発覚する前に夫を殺し「殺人犯の妻」となるのを避けようとする。
「ねじれの位置の殺人」
服部建斗は思いを寄せていた女性を水難事故で失った。彼女が増水した河川敷から逃げ遅れた原因が双子の姉にあると考えた彼は、復讐を誓う。
「かなり具体的な提案」
パートナーに暴力を振るわれていた英会話教室の講師を見捨てて死なせただけでなく、その責任を擦り付けてきた知人に、日下部渉は殺意を募らせる。
「完璧な計画」
同性の恋人が世間の目を気にしてお見合い結婚をすることになった目黒恵利。見ず知らずの男性に恋人を奪われる現実に耐えられず彼女の殺害を目論む。

人を殺したいと思っている人が訪れるNPO法人。そこで待つ相談員の男性。始めに「やめておいたほうがいいですね」と言いつつも実は完全犯罪が成し遂げられるようアドバイスをしているようにも感じる不思議な作品です。
いつもなぜ殺したかとかどう殺すかとか論議する作品が多い著者さんならではの作品だなと思いました(笑)
それでも完全犯罪というのは難しいものなのだなと思いました^^;
どのお話もオチがそう来た?と思うものばかりでしたが、1番そう思ったのは「かなり具体的な提案」かな。奥さんに気づかれるというくだりがその方向で来たかとびっくり。
犯罪を犯しても警察に捕まらない人もいる石持作品らしく完全犯罪をなしえた人もいましたね(言い方)まあそういう人もいないとNPO法人が成り立たなくなっちゃいますもんね。
どの作品も面白く読みました。

<東京創元社 2023.7>2023.8.27読了