謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。
撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――
恩田さんらしい作品だなぁと思ったのが第一印象です。
一つの出来事に対して関係者が語り合う感じが「木曜組曲」を思い出しました。真実が明らかになっているような更に闇に包まれていくような。そして語り合っていく中でちょっとホラーめいたことが起きるとか^^;懐かしさも感じました。
「夜果つるところ」の話も面白かったですが、映画監督や女優さんもいらしたからか映画の話をしているところも面白かったです。雑談になるんでしょうか。私は見ていない作品ばかりでしたが話を聞いているだけでも面白かった。
お話の中で原作の映像化の話になっていて、恩田さんの気持ちも入っているんだろうなと思ってちょっと胸が苦しくなりました(笑)私が初めて読んだ恩田作品は「ネバーランド」でドラマ化されるからというのが理由でした。読んでドラマを見たら全然違う!と思い、後々恩田さんが「なんで季節が夏なんだ!」ってエッセイで怒っていらして(笑)ただの一読者だけどすみません…と思った事を思い出しました^^;
過程が面白くて結末がおや?と思うことも割と多い恩田作品(笑)でも、結末というのは案外大したことではなくて、話し合った過程が面白いんだみたいなことが書かれていて、やっぱりそれが恩田さんの想いなんだなと思ったりしました。
皆さんで集まって雑談しているところも、個別に話を聞いているところもどちらも面白かったです。
「夜果つるところ」の話も飯合梓のことも何が真実なのかというのはしっかりとは分からなかったけど、物語にとってもその人にとっても供養になったんじゃないかなと思いました。
梢と雅春は、これからも兄弟のように仲の良い夫婦であってほしいなと思いました。私の言い方が子供っぽくてごめんだけど(笑)
「夜果つるところ」を読むのが楽しみです。
<集英社 2023.5>2023.8.18読了