長時間労働、政治家の資質低下、教師による体罰、女性差別、フェイクニュースの氾濫、なりすまし詐欺、若者の活字離れ……。
いずれも、昨今注目されているテーマである。現在の日本社会が抱える問題として、その解決が求められていることは言うまでもない。ただ、これらは決して「現在」という枠に収まるテーマではないことも事実である。実際、右記のテーマは、100年前の日本でも議論されており、その解決の必要性が叫ばれていたのだ。
本書は、現在の日本を歴史的視点から捉え直すことを目的としている。その際に視座を置いたのが100年前、すなわち大正時代である。
日本の近代について、明治から大正、昭和へと至る時代の移り変わりを、大雑把に「混乱期」から「発展期」、そして「安定期」への移行と捉えると、終戦から今日までの流れも同じように映る。漠然とした見方ではあるが、ここで言う安定期が今日の日本、そして約100年前の日本に相当する。
本書では、「安定期」という同じ歴史的局面にあたる二つの時代を対比させながら、現在の日本が抱えるさまざまな課題について考えていく。その手掛かりとして用いたのが、100年前の論者が遺した言葉である。彼らの言葉は100年後を生きる我々を意識して述べられたものではないが、本書ではそれらを現代人に向けたメッセージとして読み取っていく。そして、その言葉が発せられた当時の時代背景を現在に重ね合わせながら、各テーマについて考察していく。
杏さんのYouTubeチャンネルでこちらの本面白いですよとおっしゃっていたので気になって手に取りました。
始めは長時間労働について。でも働きすぎというわけではなくて、日本人は仕事と休みのオンオフの切り替えが下手だという指摘でした。海外では仕事中は私語を慎み脇目もふらず働き、休憩時間はしっかりと休む。そして定時に帰り、休みも取る。でも日本人は仕事中でも会話をし、長い時間働くこと、休まず働くことを良しとしている…みたいなことが書かれていてはっとしました。確かに。
教職員は今も本当に大変な仕事ですが、それは昔から変わらずブラックなままなんだなぁ…と思ったり。
活字離れが昔から言われていたのには少し驚きました。そうか、昔から活字離れが懸念されていたのか…じゃあ昔の人たちはどのくらい読んでいれば読んでいると思われていたのだろう^^;
昔にもオレオレ詐欺があって手段が電報って言うのが新鮮でした。なるほど電報…。
100年前の時代背景を知ることが出来て、面白かったです。
<新評論 2019.10>2023.7.14読了