不思議カフェ NEKOMIMI
村山早紀
小学館
2023-01-25


あなたの、ささやかな生には意味がある。
毎日こつこつと働き、余暇には本を読み、紅茶を淹れて音楽を聴く。つつましく生きてきた律子に人生の終盤、ある奇跡が訪れる。
人ならぬ身となり、黒猫メロディとともに空飛ぶ車に乗った律子は、旅先でいろんなひとや妖怪と出会ったり、時にはカフェを開いてお客様に料理やお茶をふるまったり…。2017年本屋大賞ノミネート作品『桜風堂ものがたり』や2018年同賞ノミネート作品『百貨の魔法』、そして「コンビニたそがれ堂」シリーズなど、ファンタジー小説の名手が贈る、ささやかな、小さな魔法の物語。

まず初めに、律子がまだ人であったときの丁寧な生き方がとても素敵だと思いました。
食べるもの、器、生活空間、全てが想像でしかないけどちょっと良いものを長く使っているような、ひと手間をかけて丁寧に作りだしているようなそんな印象を持ちました。人見知りであまり人と関わりを持たなかった律子だけど、私は律子のような生き方に憧れます。どうしても楽なほう楽なほうに行ってしまって、料理は簡単なものしか作らないし飲み物もそんなに丁寧には作らない。でもひと手間をかけて1秒1秒を大切に生きたいと思えました。
そして善い魔法使いになってからの律子も好きです。出会った人、動物、神(笑)たちの関わりが温かくて優しい。ひな人形と人の再開も、たぬきたちと人の再開も、読んでいて温かい気持ちになりましたし、ちょっとうるっとしてしまいました。
最後は戦争のことにも触れられていて、胸が締め付けられるような気持にもなりました。今日本では戦争は起きていないけど、それでも世界に目を向けると戦争が続いている。哀しみ苦しんでいる人がいる。哀しいです。そんな哀しさを包み込んでくれるような、優しい物語です。たくさんの人が触れてくれたらいいなぁ。

<小学館 2023.1>2023.2.28読了