戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。
天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。
しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。
生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!
本当に…長編でした…。
一人の女性の人生を読みつくした感じがあります。
石見銀山…世界遺産に登録されたときに初めて存在を知った気がします。すみません^^;北海道に住んでいる身としては山陰地方は遠いイメージがあって。
こちらの作品を読んで、シルバーラッシュに沸いていたであろう時代を垣間見ることが出来ました。
ウメは本当に「女性じゃなかったら」喜兵衛の跡を継ぐような山師になれたのではないかと思います。でも、女性だったからこそ、早死にすると言われるこの生業から離れ、子をなして生き切ることが出来たのだとも思います。
家族とは離れ離れになってしまったけど喜兵衛に拾われて、この地で生きることが出来て良かったのではないかと思いました。幸せだった、と簡単には言えないと思うけど…
幼い頃のウメ、女性の身体となり戸惑い始めるウメ、大人の女性になってからのウメ、成長するにつれて生まれてくる感情も周りの環境も移り変わっていき、年を重ねていく姿を読むことが出来てよかったです。非情な男たちが多かったけど、喜兵衛を始めヨキも隼人も龍もそれぞれ素敵だったな…。
終盤に知る喜兵衛がウメのためにしたことには涙が出そうになりました。
<新潮社 2022.9>2022.10.28読了