この3連休に坂本君の舞台を観に行ってきました。
今年は1月から6月まで毎月舞台を観に行っていたのですが^^;今回は久しぶりでしたね←
パルコ劇場は「薮原検校」以来かな。
始まったばかりなので隠しますね。

8日の夜はR列で全体を見渡せる席で、9日の昼はなんとB列!ちょっと端の方でしたが近かった…
栗山さん演出の舞台は初めて見た気がします。
十字架のように道が作られ、椅子が置かれているだけのシンプルな作り。
でも壁に映像を写したり何章って書かれた文字が写されたり上手いこと使われていました。文字が出てくるの分かりやすくて良かったな。
始めは杏ちゃん演じるアニータが登場。アメリカからイギリスへ旅立つシーン。何かに怯えて自分は大丈夫と唱えるように言い聞かせて。何に怯えているのか怖がっているのか病気なのか。
次に登場するのは長野さん演じるナンシー。始めは幸せな家庭で、だからこのあと起きる悲劇が辛くて哀しくて…。
最後は坂本くん演じるラルフ。「あったりまえ」と「口がすべったごめんあそばせ」が口癖のようだったけど、それも親とのことが関係しているのかな。ローナの声のかけ方とかやっぱりちょっと怖かったな…。左足を痛がっていたのは、かつて虐待を受けていた後遺症だったのかな…。
3人は一人一人登場する時もあれば交わるときもあって。2人のシーンはアニータとラルフが多かったけど、アニータはラルフのために動いているというよりは自分の研究材料のために動いている感じがしたな。でも、悪い印象はなかった。余裕がないような感じはあったけど。それは最後に多分明らかになるのだけど、その精神科医でありながらも抱えている様々な感情を表情に見事に出し切られてたなーと思いました。なんだか偉そうな言い方になってしまいますが。
長野さんもはじめましてだと思うのだけど、いや凄かったな…本当に凄かった。凄いという言葉しか出てこないのが申し訳ないくらい。娘がいなくなってしまって情緒不安定になってちょっと狂気を感じつつも冷静さも併せ持っている感じが、全てを受け入れて乗り越えようとしている鬼気迫る感じが表情と言葉からひしひしと感じて素晴らしかった。物語の中ではナンシーも素晴らしかったけど、もう一人の娘イングリットがいたからこそ乗り越えられたのかなとも思いました。イングリットも素晴らしい人ですね。20年間きっとナンシーは2人の娘のことを平等に見ることは出来ていなかった。イングリットはそれを受け入れてネパールかインドに行ってきっとその国の死生観のようなもので自分の腑に落ちるものを得たんだろうなと思いました。イングリットが助言しなければきっと、ラルフとナンシーが対面することはなかったと思う。
ラルフはシリアルキラーで良心の痛みなんてものは分からなくて、でもそれは彼のせいではなくて親のせい。直接身体的暴力、精神的暴力、性的暴力を加えたのは父親なのだろうけど、母親もきっと助けずにいて。何が正しくて何が悪いのかなんてきっとわからない。きっと全身にタトゥーを施したのも意味が隠されているのだろうと思う。天使と悪魔という言葉にも。ラルフは少女たちと遊びたかったのか愛が欲しかったのか、ただ殺したかったのか。どうだったのだろう。ただの凶悪犯とはやっぱり違うような気はする。でもだからと言って「疾病が起こした犯罪は症状」とは、私は言えないと思うけど…。
ナンシーとラルフの対面のシーンはすさまじかったですね。
ナンシーはきっと、全てを赦してなんていなかっただろうけど、それでもそれを、殺したいほど憎いはずの相手にそう言えるなんて凄い。家族写真をその相手に見せるなんて。
でも、自分が殺した相手の家族の姿を見たことで、自分の家族のこと、過去のことを思い出してしまったんですよね。ラルフが過去に父親に何をされたのか一人で演じているのによくわかりました。ラルフの隣に大きな男の人がいるように見えたしラルフは小さな怯えた子供に見えました。あのシーンは辛かったけど凄かったな。凄いっていう気持ちの方が勝っていたのかも。
過去を思い出してしまったから、家族というものを思い出してしまったから、自分がしてしまった過ちにようやく気付いてしまったんですよね。
言い方が正しいのかわからないけど、ラルフが胸が痛いと苦しむことが出来て良かったように思います。死んでよかったとは言えないけど、人間らしい気持ちを持って自分がした過ちに気づいたこと自体は良かったのかなと。でもそれは私が被害者側の気持ちに立っているということなのかな…よくわかりません。
あの死に間際の表情…怖かったな…凄かった。本当に、怖かった。
ナンシーとアニータの2人の最後のシーンもとても好きです。
ナンシーは多分過去と決別できたし、アニータは自分の罪を受け入れて生きていく事を決めた。
2人の表情が神々しくて綺麗でした。
本当に、素晴らしい舞台でした。
個人的に精神的に落ち込むことが最近多くて、ちゃんと見れるかなって心配だったんですけど、大丈夫でした。
やっぱり生の舞台って良いな。ありがとうございました。
どうか最後まで、怪我無くトラブル無く、駆け抜けていく事が出来ますように。