ショートケーキ。 (文春e-book)
坂木 司
文藝春秋
2022-04-08


星の数ほどあるケーキの種類のなかでも、不動の人気を誇る「苺のショートケーキ」。「和菓子のアン」シリーズなど、甘いものを描いた作品に定評のある著者による、誰しも思い出のひとつやふたつはあるだろうショートケーキをめぐる5篇の連作集です。
大学生の<ゆか>と<こいちゃん>はどちらも、母との二人家族。父が出て行ってから買えなくなったホールケーキを求めて、ふたりは<失われたホールケーキの会>を結成、切れていないケーキを楽しんでいる。ある時、離れて暮らす父親から、「大事な話がある」と連絡があり……。(「ホール」)
俺が働くケーキ屋では、残りがちなホールケーキを予約なしに買ってくれるお客さんを天使と呼んでいる。天使の中には常連もいて、女子大生と思しきその二人組が俺は気になっている。どうやら彼女たちは、丸いホールのケーキにこだわっているようなのだ。(「ショートケーキ。」)
ケーキ屋で働く私には、嬉しいことがあったときにひとりで行う「趣味」がある。ケーキを冒涜しているようで人には言えないのだが……。
(「追いイチゴ」)
ママになった瞬間からさまざまなことがままならなくなった。大好きなショートケーキをもう一度ひとりでゆっくりと味わいたい。その願望を実現すべく、<あつこ>は二人のママ友と互助会を結成する。(「ままならない」)
央介の口癖は「嫁に行きてえ」、何事にも受け身で生きてきた28歳の会社員だ。ある時、領収書の不備を指摘されたのをきっかけに、会社の経理担当の女性のことが気になり始める。弟の学費を捻出するために倹約弁当を続ける彼女だが、どうやら本当はショートケーキが食べたそうなのだ。 (「騎士と狩人」)

坂木さんが書かれるお菓子が絡むお話が大好きです。
今回もじわーっと癒されるお話ばかりでした。始めのゆかとこいちゃんのお話はとても可愛かったし、そこから繋がっているカジモト君の粋な行動に私も上田さんと同様にわきわきしました^^
カジモト君、良い子だね…。お姉さんのこともずっと心配していて。お姉さんの具合が悪い理由は私はすぐに察しましたけど^m^お父さんが言った「ひとつも!どこも!悪くない!」という言葉に私まで泣きそうになりました。皆様お幸せに…。
「騎士と狩人」はカジモト君のお姉さんが登場するのだけど、あれ?でもお相手って同じ会社じゃないよね?あれ?と思って読んでいたらやっぱりそうで。央介が失恋しちゃったなと思ったらまさかの騎士みたいなかっこいい女性が現れて(笑)なんか流れに流されて一緒になりそうですね^m^まあ嫁に行きたいと言っていたからちょうどいいのでは。
素敵な物語でした…癒された…

<文藝春秋 2022.4>2022.5.24読了