桜風堂ものがたり
村山 早紀
PHP研究所
2016-10-07


百貨店内の書店、銀河堂書店に勤める物静かな青年、月原一整は、人づきあいが苦手なものの、埋もれていた名作を見つけ出して光を当てるケースが多く、店長から「宝探しの月原」と呼ばれ、信頼されていた。しかしある日、店内で起こった万引き事件が思わぬ顛末をたどり、その責任をとって一整は店を辞めざるを得なくなる。傷心を抱えて旅に出た一整は、以前よりネット上で親しくしていた、桜風堂という書店を営む老人を訪ねるために、桜野町を訪ねる。そこで思いがけない出会いが一整を待ち受けていた……。
一整が見つけた「宝もの」のような一冊を巡り、彼の友人が、元同僚たちが、作家が、そして出版社営業が、一緒になってある奇跡を巻き起こす。

冒頭の万引き事件の顛末が哀しかったですねー…。なぜ一整が責められなければならないのか理解に苦しみました。渚砂が一整にかけた言葉がとてもかっこよくて救われました。書店に訪れたこともない、お客様でもない人の言葉なんかより、書店の従業員やお客様の言葉の方が大事。そうですよね…。それでも、自分のせいで同僚や百貨店の人に迷惑をかけていると思ったら、やっぱり辞めてしまうんだろうな…と思います。それにしても一整の境遇が哀しくて哀しくて…だから居場所だった銀河堂書店にいられなくなったというのは切なかったですね。
それでもネットを通して出会った書店を営む老人とのご縁で新たなる居場所を見つけられて良かった。そして「宝探しの月原」が見つけた「四月の魚」が思わぬ展開になっていって良かったです。それにしても、ただ見つけただけではなくて、一整のルーツから導き出して発掘された本なのだと思うとそれもまた切なくて…。最後はうるうるしながら読みました。
あたたかくて素敵な物語でした。こちらは続編が何冊か出ているようなので楽しみに読みたいと思います。
そして、本当に読みたいと思う本は、できるだけ本屋さんで買いたいなと思いました。

<PHP研究所 2016.9>2022.2.23読了