帝都・京橋区にある滝澤旅館の主人は、無口で無愛想な男、和恭。彼が時折、宿の中庭を眺めながら縁側でともに茶を飲むのは、しばらく前からこの宿に滞在している異国の青年サレハだ。
サレハは一年ほど前、遥か遠い砂漠の国から、主命により故郷の品を商うために帝都にやってきた。今は銀座の勧工場を借りて店を開き、故国の華麗な絨毯や優美な道具に囲まれて商売をしている。まるで人形のような美貌を持つサレハだが、意外にも人懐っこく話好きで、時間があれば故郷の風物や闇に沈む者たちの話を和恭に語って聞かせ、和恭も熱心に耳を傾けるのだった。
そんなふたりの周囲で、奇妙な出来事がたびたび起こり人々の心を惑わせる。人を若返らせる水差し、夜店の向こうにあるバザール、香りが消えた金木犀――山伏姿の警視総監・虚空に依頼され、サレハと和恭は、この地にやってきた異国の妖霊たちが関わっているらしき不思議な事件の謎を探ることに……。
人ならざるものを見る青年が帝都で語る、妖霊(ジン)たちの物語。
三木さんの書かれる男2人の物語が好きです。
そういえば異国の人と日本人という組み合わせも多いですね。
今回も舞台は日本で異国の青年サレハと旅館の主人和恭が巻き込まれる摩訶不思議な物語でした。
時代は明治か大正なのかな…。美男2人が厄介ごとに巻き込まれ解決していく。想像するだけでうっとりしてしまいます←きっと虚空様もイケオジに違いない(笑)
お話は連作短編集のようでした。ひとつひとつの物語に不思議な妖霊が絡んでいます。
特に金木犀のお話が好きだったな。以前著者さんの作品で金木犀が出てきたことがあったので尚更そう思ったのかも。あとは最後のお話が好き。ニヤニヤしちゃいます。
<小学館 2021.7>2021.12.9読了