余命一年、男をかう
吉川トリコ
講談社
2021-07-15


幼いころからお金を貯めることが趣味だった片倉唯、40歳。ただで受けられるからと受けたがん検診で、かなり進行した子宮がんを宣告される。医師は早めの手術を勧めるも、唯はどこかほっとしていたーー「これでやっと死ねる」。
趣味とはいえ、節約に節約を重ねる生活をもうしなくてもいい。好きなことをやってやるんだ! と。病院の会計まちをしていた唯の目の前にピンク頭の、どこからどうみてもホストである男が現れ、突然話しかけてきた。
「あのさ、おねーさん、いきなりで悪いんだけど、お金持ってない?」。
この日から、唯とこのピンク頭との奇妙な関係が始まるーー。

面白かった。一気読みでした。
唯の気持ち、凄く良くわかります。将来のことを考えてコツコツお金を貯めること。オシャレに興味がなくて自炊が苦じゃなくて遊びたいともあまり思わなくて。生きてて何が楽しいの?って、私も何度も言われたことがあります。別に我慢してそうしているわけじゃなくてそれが普通なのに。
余命がどのくらいなのかおおよそ分かってほっとした気持ちも分かります。将来のお金の面も不安はあるけど、どのくらい長く生きるんだろうっていう不安もあるんですよね。だから先が見えてほっとするっていうの分かる気がしました。
そこはリアルだけど、ピンク頭の登場と彼との関わり方はファンタジーだな…と思いました。それがダメなわけではないんです。リアルとファンタジーが折り重なっていて、読むのが楽しかったです。
瀬名も良い奴なんですよねー…。なんだかんだで唯のことをちゃんと気にかけているし。唯と出会ったことで生き方や考え方が良い方向へ変わった気がします。
2人の関係性はファンタジーなのに、唯が「奥さん」と呼ばれて4人分の食材をオススメされたり、良かれと思って安産祈願のお守りを渡されたりするくだりがものすごくリアルで、なぜか私がショックを受けました(なぜ)
なんだかんだいって、日本の固定観念って昭和の時と変わっていないんだよなーと思ったり。そんなことに負けずに唯たちは生きていってほしいです。個人的に唯の同僚のみずほが好きでした。推しがいる人だからか唯とは違う共感できる部分がたくさんありました(笑)
1番嫌いだったのは課長ですね。名前も言いたくない。クズですよクズ。クリスマスイブの前日に押し掛けるのとかマジでキモイ。勝手に勘違いな正義感を出してきてキモイ。あー気持ち悪い気持ち悪い。虫唾が走る。
余談ですけど、あらすじのピンク頭というくだりであの子を思い浮かべたんですけど、読めば読むほど芸人さんの方が頭に浮かんでしまったので、軌道修正が大変でした←
まあ思い浮かべる人は置いておいて映像化しそうな作品だな…とも思いましたけどね。

<講談社 2021.7>2021.9.3読了