星のように離れて雨のように散った
島本 理生
文藝春秋
2021-07-28


幼い頃に失踪した父、書きかけの小説、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。大学院生の春は、父との記憶を掘り起こすうちに、現在の自分の心の形が浮き彫りになっていき…。「私」をめぐる旅の物語。『別册文藝春秋』掲載を単行本化。

この本を読み終えてHP等を拝見して知ったのですが、失踪した父というくだりは島本さんの実体験と重なっていたんですか…?知らなかったです。
私は島本さんと真逆で、宮沢賢治の作品は好きでした。小学校5年生の時に「雪渡り」を習い、「どんぐりと山猫」を先生が朗読してくれて、面白い物語だなと思ったのが最初の記憶です。その年がちょうど宮沢賢治が生誕100年の年だったので、大きくスペースを設けている書店も多かったんですよね。それで親に頼んで買ってもらったのですが、大人用の文庫だったので小学生が読むには難しく、しばらく放置していたのも今となってはいい思い出です^m^
なので、宮沢賢治について書かれているというこの作品を楽しみにしていました。「銀河鉄道の夜」に関する考察も多く描かれていてとても興味深かったです。私は正直に言うと島本さんの書かれる女性ってあまり好きではないんです←多分私が恋愛体質じゃないからだと思います。なので基本的に恋愛小説は読まないのですが島本さんの作品は新刊が出ると読みます。恋愛だけではない様々なテーマが興味深くて引き込まれるからだと思います。
父親のこともそうだけど、春は母親のことも子供ながらに見限っていたんですよね。親戚は敵だし。だから大人に嫌われないように自分を殺して生きていくしかなかった。分かるなんて言ったらおこがましいけど、その気持ちは少しだけ分かりました。私も自分を出すのは苦手。多分人に嫌われたくないから。それは大人になってだいぶ改善された気がしますけど。人に嫌われまくっているような気がしますけど^^;まあそれはそれとして。春は自分を見つめなおして自分と向き合えてよかったのだと思います。亜紀との関係もどうなるんだろうと思いましたけど、何とかなりそうで良かった。2人は離れないでほしいなと思っていたので。2人で自分の正直な気持ちを少しずつ打ち明けながら幸せになっていってほしいなと思います。
個人的に気になったのが春と父親が一時期一緒に過ごしていたという山梨県のとある場所。主人公と世代は合わないけど、島本さんとは同世代なので山梨県で宗教関係…今は無きあの村を思い出しました。多分その村がモデルですよね。当時悪い形で有名になって、子供ながらに可哀そうだなぁと思った記憶があります。90年代を思い出した作品でした。

<文藝春秋 2021.7>2021.8.13読了