烏百花 白百合の章 (文春e-book)
阿部 智里
文藝春秋
2021-04-26


人気キャラクターたちの秘められた過去や、知られざる思い。本編では描かれることのなかった珠玉のエピソード。
「オール讀物」に掲載された「あきのあやぎぬ」「ふゆのことら」「なつのゆうばえ」「はるのとこやみ」「ちはやのだんまり」「おにびさく」のほか、「かれのおとない」、さらに書下ろしを加えた全8編を収録。

前回読んだ新章が衝撃的過ぎて、こちらの外伝を読んで懐かしさを感じました。
「かれのおとない」茂丸の妹、みよし目線のお話。茂丸が泣くなった直後の家族の話が描かれています。分かっていても読んでいて辛かったな…。そして兄と同じく大好きだった雪哉が変わってしまったこともショックだよね…。どうかどうか、嫁ぎ先で幸せに暮らしていけますように。
「ふゆのことら」市柳の物語…えーと、誰だったっけ?って言ったらものすごく怒られますね^m^でも、コテンパンにやられて目が覚めて良かったですよ。良くも悪くも自分の立場が分かって良かったと思います。多分ずっと雪哉には勝てないんでしょうけど。
「ちはやのだんまり」タイトル通り、千早が完全に頑固おやじと化していて笑っちゃいましたね。明留も最初は結とシンの交際は認めていなかったけど、見た目とは裏腹に根性があることに気づいていきます。ホント、素直な良い子でしたよ。千早の代わりに傷だらけになっちゃった明留は不憫だけど、その分なんだか友情が芽生えてそう。最後は丸く収まってよかったよかった。
「あきのあやぎぬ」真赭の薄と明留の兄顕彦の物語…え?本当に兄弟ですか…?っていうくらい性格が違いますね^^;18人?19人?の側室?とびっくりしましたけど、ちゃんと意図があったんですね。呑気な感じしか垣間見えませんでしたけど、きっとそれだけじゃない部分があるんですよね…きっと…きっと…←
「おにびさく」「鬼火灯籠」を作る職人の物語。初めて登場した人かな?師匠を突然亡くし、一人の職人として懸命に努力する姿は素敵でした。
「なつのゆうばえ」大紫の御前の少女時代の物語。このシリーズでは敵ですが、こういう少女時代があったのか…と思うとまた見方が変わってきますよね。好きにはなれないですが^^;
「はるのとこやみ」あせびの母、浮雲の話。いやー…この親にしてこの子ありっていう親子ですね。これは翻弄された人たちが本当に不憫でなりません…。報われたかと思いきや最後に放たれた一言。恐ろしすぎる…
「きんかんをにる」奈月彦と紫苑の宮が金柑を煮るお話です^m^紫苑の宮が本当に可愛い!想像するだけで可愛い!雪哉も顔がほころんでしまうのが分かります。奈月彦と浜木綿と紫苑の宮、3人の暮らしに仲睦まじさが垣間見えてほっこりしたのだけど…。6歳なのに紫苑の宮はなんて聡い子なんでしょうか。3人が幸せに暮らせる日が1日も早く来ることを願ってやみません…来ないのかな…
どうして数十年後に雪哉がああなってしまったのか、気になって仕方がないです。
と同時に「烏に単衣は似合わない」を読み返したくなりました。

<文藝春秋 2021.4>2021.7.6読了