臨床の砦
夏川草介
小学館
2021-04-23


現役医師としてコロナ禍の最前線に立つ著者が
自らの経験をもとにして克明に綴ったドキュメント小説。
2009年に第十回小学館文庫小説賞を「神様のカルテ」で受賞し、シリーズ(既刊5冊で累計337万部)を書き継いでいる夏川草介氏は、現役の内科医でもあります。コロナ禍の最前線で多くの患者さんと向き合う日々が、一年以上続いています。本書は、著者が2020年末から21年2月にかけて経験したことを克明に綴った、現代版『ペスト』ともいえる記録小説です。

私はコロナ禍になってから、ワイドショーなどで繰り返される新型コロナについての報道はほとんど見ていません。私は弱いので、内容に一喜一憂したり、腹が立ったり不安になったりするとわかっているからです。自分が出来る最大限の感染対策をして日々を過ごしているつもりです。
夏川さんの作品が大好きで、だからこそこの作品は読まなければならないと思いました。
私は医療従事者ではないので、大変な状況なのだろうと思いつつも、病院等の緊迫した雰囲気はわかってはいないと思います。
この作品を読んで、感染症の最前線で働く医療従事者の方々がどんなに気を配って自分の身を削って患者のために手を尽くしているのか、改めて知ることが出来ました。
しかも2021年1月から2月の第三波が来た頃の話です。大晦日に東京で初めて1000人を超えましたよね。こちらの舞台は長野県ですがこの時期はどこでも感染者が増えていました。
感染者の増加、介護施設のクラスター、院内感染、新型コロナウィルスにおける様々な問題点と病院の試練が細かく描かれています。この作品は小説ですがフィクションではありません。
著者さんが間近で見て体験して闘っているドキュメントだと思います。
初めての感染症。医療側も保健所も行政もそれ以外の人たちもみんな初めて経験すること。
それでも特に医療従事者はその未知のウィルスと闘っていかなければならない。
医療従事者も人間です。いろんな人間がいて、いろんな思いと決意をもって闘っているのだと思いました。
私たちが出来ることは感染しないこと、そのためにしっかりと感染予防をすること、自分の身を守ること。そうすることで医療従事者の手を煩わせないようにすること。今までやってきていることではありますが、これからも引き続き行い続けなければならないと改めて思いました。
著者さんも現場に立ち忙しい中、私たちに分かりやすくまっすぐに伝えてくれてありがとうございますといいたいです。

<小学館 2021.4>2021.6.25読了