めぐりんと私。
大崎 梢
東京創元社
2021-04-21


三千冊の本を載せて走る移動図書館「本バスめぐりん」との出会いは、屈託を抱えた利用者たちの心を解きほぐしていく。家族の希望で縁もゆかりもない土地で一人暮らすことになった規子の、本と共に歩んできた半生を描く「本は峠を越えて」や、十八年前になくしたはずの本が見つかったことを引き金に当時の出来事が明るみに出る「昼下がりの見つけもの」など5編を収録。めぐりんが本と人々を繋ぐ移動図書館ミステリ、シリーズ第二弾。

前作も大好きだったのですが第2弾が出てくれるとは!嬉しい!前作から4年以上経過していることも信じられない…
今回は連作短編集。どのお話も好きだったなー。最初のお話から引き込まれました。
最初の旦那さんに関しては腹が立ってしょうがなかったけど、そのあとの出会いが素敵で。お互いに自分のことだけじゃなくて子供たちのことを考えているのが本当に素敵だなと。子供たちも節子のことが本当に大切なんだということも伝わってきて、家族は血で繋がっているだけじゃないんだなと本当に思います。
そして最後の「未来に向かって」私も今まさに直面している問題でもあって。移動図書館に対する想い、図書館への想い、司書への想い、たくさんの人の熱い思いが伝わってきて、私も頑張ろうと思いました。
癒されました。素敵な物語でした。

<東京創元社 2021.4>2021.5.28読了
 本は峠を越えて
家族の希望で縁もゆかりもない土地で一人暮らすことになった節子。慣れない町で移動図書館を見かけた事をきっかけに、本と共にあった彼女の半生を回想していく。
ほかのお話にも共通して言えるのですが、これまで自分が読んできた本がたくさん出てくるので、そのたびに嬉しくなってしまいます。特にこの話では、一人の人生を振り返るので色々な年代の人に刺さる作品が登場します。

 昼下がりの見つけもの
偶然にも失くしたはずの十八年近く前に図書館で借りた本を見つけた優也。なぜこんなものが家にあるのか……ふと「めぐりん」で疑問を口にしたことをきっかけに、当時の出来事が明らかになっていく。

 リボン、レース、ときどきミステリ
派遣社員として働きつつ、趣味の手芸に力を入れている佳菜恵は、二週間に一度の「めぐりん」の巡回日を息抜きにしていた。ある日見知らぬ男性社員に声を掛けられ、一緒に食事をすることになる。彼はミステリ好きで、佳菜恵のこともミステリが好きで「めぐりん」に通っていると勘違いしているようだが……?

 団地ラプンツェル
めぐりんのステーションで60年ぶりに友人と再会を果たした征司。次の巡回日にまた会おうと約束したものの、友人は現れなかった。連絡先を聞かなかったことを後悔する征司だったが、そこへ二人の小学生が「あのおじさんの部屋を知ってる」と話しかけてきて……。

 未来に向かって
小学生のころの移動図書館「ほんまる」と担当司書との出会いがきっかけで司書を志した典子。紆余曲折を経て司書になった彼女は、「ほんまる」の廃止とそれにかつての担当司書が関わっていることを知る。そして、「ほんまる」廃止について調べていくうちに、その担当司書の思惑も明らかになっていく。