灰の劇場
恩田陸
河出書房新社
2021-02-16


大学の同級生の二人の女性は一緒に住み、そして、一緒に飛び降りた――。
いま、「三面記事」から「物語」がはじまる。
きっかけは「私」が小説家としてデビューした頃に遡る。それは、ごくごく短い記事だった。
一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたというものである。
様々な「なぜ」が「私」の脳裏を駆け巡る。しかし当時、「私」は記事を切り取っておかなかった。そしてその記事は、「私」の中でずっと「棘」として刺さったままとなっていた。
ある日「私」は、担当編集者から一枚のプリントを渡される。「見つかりました」――彼が差し出してきたのは、一九九四年九月二十五日(朝刊)の新聞記事のコピー。ずっと記憶の中にだけあった記事……記号の二人。
次第に「私の日常」は、二人の女性の「人生」に侵食されていく。
新たなる恩田陸ワールド、開幕!

この作品の中で起きた「事件」は実際にあった事件なんですかね…
小説家である私と、事件の当事者である2人が交互に語っているので、途中どちらがどちらか分からなくなる時もありましたが、それが狙いだったのかな。最後に交錯しましたよね。
物語の中でも登場しましたが、この小説全体が舞台のようでした。
実際に戯曲も書かれていましたよね?
女性2人はなぜ投身自殺を図ったのか。その真相は誰にもわかりませんが、恩田さんが書かれたような真相もありえる気がしました。特に1994年という時代ならなおさら。今よりも女性は働きにくくて仕事に対してや未来に対して絶望することもたくさんあったと思います。今は今でまた絶望することがたくさんありますけど。だからこそ、今を生きる私もこの2人の女性に共感できる部分があったのかなと思います。
2人が迎えた最期の日のやり取りがとてもリアルでした。生ごみは残さないようにした。鍵をかけるかかけないか。未来に絶望しつつも錯乱しているわけではないから細かい配慮があるところがよりリアルさを感じてさすが恩田さんだなと思いました。
まさに恩田陸ワールドでしたね。よくもわるくも^^;

<河出書房新社 2021.2>2021.3.30読了