夜明けのすべて
瀬尾まいこ
水鈴社
2020-10-22


職場の人たちの理解に助けられながらも、月に一度のPMS(月経前症候群)でイライラが抑えられない美紗は、やる気がないように見える、転職してきたばかりの山添君に当たってしまう。山添君は、パニック障害になり、生きがいも気力も失っていた。互いに友情も恋も感じてないけれど、おせっかい者同士の二人は、自分の病気は治せなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる―。生きるのが少し楽になる、心に優しい物語。

いいなー。凄くいいな。2人の関係がとても良かったです。
多分お互いに良い感情を持っているのだけど、それは恋愛とは違う好きなのかなと。
お互いに長い付き合いになる病気を持っていて、お互いに病気の事は分からないけど辛いのは分かる。だからお互いに助けになることを考える。第三者の意見って大事だと思うから、2人の支え合い方はとても良いなと思いました。
美紗は日頃、人の顔色をうかがうことが多いのに、山添君に対してはかなり不躾で言いたいことをはっきり言ってしまうのが面白かったですね。山添君も言われてるから同じように言い返すし。2人の言葉の掛け合いが面白かったです。
瀬尾さんがパニック障害を患っていたなんて知りませんでした。本屋大賞を受賞されて露出や取材が増えて、お子さんもいらっしゃって大変でしたよね…。だからこそ、山添君の苦しみがとてもリアルに伝わってきました。
1人で悩んでいた時は見えないトンネルの中にいるような感じだったと思うけど、特に山添君はみるみる変わっていきましたよね。美紗が入院して退院するまでの気遣いがハンパなくて、出来る子や・・・と思いました。あのテレビのカードのくだりは唸りましたよね。
今は第三者の目で読んでいたけど、もしかしたら自分もそうなってしまうかもしれない。
この作品を読めて良かったです。

<水鈴社 2020.10>2020.11.20読了