店主の急死により、閉店フェアをすることになった幸本書店。そこに現れたのは、故人の遺言により幸本書店のすべての本を任されたという都会から来た高校生・榎木むすぶ。彼は本の声が聞こえるという。その力で、店を訪れる人々を思い出の本たちと再会させてゆく。いくつもの懐かしい出会いは、やがて亡くなった店主・幸本笑門の死の真相へも繋がってゆく―。“本の味方!”榎本むすぶが繋ぐ本と人のビブリオミステリー。
文学少女シリーズ以外で野村さんの作品は初めてでした。
長い間地元の本屋さんとして愛されてきた幸本書店。店主が亡くなったことでお店は閉めることになり、様々な思い出を抱えてたくさんのお客様がやってきます。
『ほろびた生き物たちの図鑑』『野菊の墓』『かもめ』『緋文字』『かいけつゾロリのなぞのうちゅうじん』『幸福論』『長い長い郵便屋さんのお話』たくさんの物語が出てきます。私は特に「野菊の墓」のお話が好きかな。じれったすぎるなぁもう。でも、長い時を超えてまためぐり逢って、多分その時間を埋めるように愛を育んでいくんじゃないかなぁと思ったら何だかこちら迄嬉しくなっちゃいますね。
著者さんの本への熱い想いがひしひしと伝わってきました。私も本を読んでいて勉強になったこと、助けられたこと、たくさんあります。この作品で登場した作品も読みたいですし、もっとたくさんの本を読んでいきたいと思いました。
先代も含め、店長さんはたくさんの人を救ってきた人なんですね。みんな早くに亡くなっているのが悔しいけど…
この作品は対になっている作品があるんですよね。そちらも読んでみたいです。
<KADOKAWA 2020.6>2020.11.10読了
この作品、読んでいてまず、自分の田舎の書店が頭に浮かびました。
幸本書店ほどの規模ではないですが、地元の歴史などを綴った本とか、ちょっと前に出た本だけど良作と言われる小説だったり、はたまた、そんなに売れるとは思えないけれども、科学雑誌だったり……と、こだわりのある本棚を作っている書店です。
私は、大学進学以降、東京住まいで、高校時代はチェーン店の書店などもありましたが、今、残っているのはそこだけです。それだけ、地元の人々から愛される書店なのだろうな、というのを本作を読んで感じました。
対というか、同時刊行された『外科室の一途』は、むすぶが主人公で、本の話を聞くことが出来る、という形で話が進むのでちょっとカラーが違いますが、やはり、書籍の内容をベースにした話で面白かったです。
ちなみに、今月末に、シリーズの3作目も刊行されますよ。