すみれ荘ファミリア (富士見L文庫)
凪良 ゆう
KADOKAWA
2018-07-14


トイレ、風呂、台所共有、朝食夕食付きのおんぼろ下宿すみれ荘。大家代理兼管理人をしている一悟は、古株の青子、TV制作マンの隼人、OLの美寿々ら下宿人と家族のように暮らしていた。そこに、芥一二三と名乗る新しい入居者がやってきた。作家だという芥は、マイペースで歯に衣着せず、攻撃的ではないけれども思ったことを平気で口にする。そのせいか、平穏なすみれ荘の住人たちの今まで見えなかった顔が見えてきて―。一つ屋根の下の他人、そして家族の再生ものがたり。

凪良さんの作品が続きます。
血のつながりはないけど、みんなが長く一緒に住んでいるから何だか家族のような関係になっているすみれ荘の人たち。凪良さんがあとがきで書かれていましたが、血のつながりがない人とも一緒に暮らすような環境で育ったそうで、だからこういう作品が書けるのかなーと思いました。
あらすじを読んでいて、芥が下宿人の関係をかき乱すのかと思ったけどそうではなかったですね。みんなが今まで言わなかったことを口にすることで改めてみんなの内面が見えてくる。それはそれでよかったのかなと思いました。隼人は嫌いだと思ったけど、それ以上の真相があって、感情がむき出しの分かりやすい隼人はまだましなのかなと思ったり。美寿々も「負けるもんか」と闘志むき出しの感じが好きでした。青子に関しては何となく予想していたこともあったけど、ちょっと怖い。ただ、怖い要素以外の青子の性格は似ているところもあって、だからこそ怖かったかもしれません^^;
愛ってなんだろう血の繋がりってなんだろう家族ってなんだろうって読んでいる間ずっと考えていました。芥も別に自分が可哀想な境遇だとは思っていなくて、兄はどんなもんだろうと思って見に行ったら妻を事故で亡くし、まともな会社勤めが務まらない極端な虚弱体質から娘も義父母に連れていかれたという寂しい境遇であることを知る。
全ては手遅れのように感じたけど、そうではなかったですね。全部を失ってからまた新しく始まっていく感じが良かったです。義父母の態度は最初から最後まで嫌でしたけど。
とにかく1番は、兄弟が何だかいい関係になって良かったということです。24年という長い月日をこれから埋めて言ってくれたら良いなぁと思って読み終えました。

<KADOKAWA 2018.7>2020.10.30読了