誰でも無料で気軽に利用できる近代的な図書館は、20世紀ごろ、欧米の図書館制度を参考にして誕生したといわれている。ところが、『万葉集』の時代、太宰府の書殿はすでに図書館として機能していた。
私設の図書館を作っていた聖徳太子が過ごした斑鳩宮の一室や、中国の経典を所蔵した経蔵の貸出システムなどからは、日本独自の図書館の起源がみえる。
また、明治時代の自由民権運動や青年会運動を背景に全国各地で起きた会員制図書館の潮流は、近代の公共図書館づくりの原型になった。
そのほか、20世紀初期に図書館づくりに携わった佐野友三郎の奮闘や、同じ頃にアメリカの図書館用品メーカーが日本の図書館づくりに与えた影響からは、現代の図書館が登場するまでの道のりが浮かび上がる。
図書館史に精通した3人が、古代から近代までの時代を貫いて、膨大な資料を丁寧にひもときながらかつての図書館を掘り起こし、現代の図書館につながる豊かなイメージを鮮やかに描き出す。
今までにない図書館の視点で書かれていて面白かったです。一つ一つのテーマが長くないので読みやすかったのも良かったです。
図書館の歴史なのに最初が聖徳太子についてだったので更に興味がわきました。
唐招提寺の蔵が日本最古の図書館ではないかというお話も面白かったです。現存しているのかな…み、見てみたい…。
山口県立図書館の館長となった佐野友三郎さんはもちろん存じていましたが、晩年に自殺されていたことは知りませんでした。図書館を発展させるために奮闘し、非難も浴びていたなんて知らなかった…。そう言った過去があって今があるんですよね。知ることが出来て良かったです。
<青弓社 2019.11>2020.3.3読了