同じ車両の誰かの、今日はかけがえのない一日。きっと毎日、そうなんだ――。恋と作文に悩む小学生も、夫を亡くしたおばあちゃんも。日本を訪れたポーランド人夫妻も、人気急上昇中の落語家も。故郷に帰る激務のサラリーマンも、熱狂的な阪神ファンも。人生の大切な瞬間、笑うときも泣くときも、気づけばいつも列車があった。忘れられない出会いや別れ、あなたの大切な記憶が溢れ出す五つの物語。

越谷さんの新刊です。
5つの短編集なのですが、内容はバラエティに富んでいるのですがどれも温かくて優しい物語でした。
越谷さんらしさが満載でしたね〜。
「やまびこ」故郷へ向かうサラリーマンが新幹線の中で家族と過ごした時間やブラック企業に勤めていた時の事などを回想していきます。そして故郷へ帰り、父に言われた言葉。凄く心に残りました。
「タイガースはとっても強いんだ」可愛いタイトルですが主人公の風貌も想像すると可愛いです。ポーランド語を話せる青年がたまたまポーランド人の夫婦と出会い交流していく話です。彼女になりそうな女性も含め、みんな素敵でした。
「二十歳のおばあちゃん」自分がかつて乗っていた電車が愛知県にあると知り、祖母と孫の2人旅が始まります。幻想的な素敵な物語でした。お孫ちゃんはとてもいい子でした。
「名島橋貨物列車クラブ」小学生時代の甘酸っぱい思い出なんですかね。もう一人の男の子は何かしらの障害のある子だったのかな。3人の会話が可愛かったです。
「海を渡れば」落語家のお話。何だか切なくなりましたけど、真面目に一生懸命生きてきたからこその今なんですよね。良いお話でした。

<新潮社 2019.11>2020.1.21読了