Iの悲劇
米澤 穂信
文藝春秋
2019-09-26


一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣。日々舞い込んでくる移住者たちのトラブルを、最終的に解決するのはいつも―。徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!そして静かに待ち受ける「衝撃」。これこそ、本当に読みたかった連作短篇集だ。

帯を見て甦り課の3人の特徴を知って読み始めたために、始めは先入観にとらわれていた気がしますが、何となく違和感のようなものは生じてきましたよね。やる気がなさそうでいつも定時に退社する課長の鋭さとか、新人っぽい無邪気さがあるけど頭の回転が早い観山とか、出世が望みだけどそれだけではなさそうな万願寺とか。
その違和感が最後の出来事でほころびが出来て、そして最後に答え合わせ。見事でしたねー。流石米澤さんです。
ミステリとしても面白かったですが、地方自治の過酷さもリアルに描かれた作品だったと思います。
一度死んだ村を甦らせて人を集める。それで本当にその地域は、都市は復活の兆しが見えるのか。そうとは言い切れいないというか、無理ですよね。ただでさえお金が無いのにそんなところにお金をかけて。もっと違うところに使うべきことがたくさんあると読んでいても感じました。
イチ地方公務員としても読んでいて胸が痛くなる場面がありました・・・。
万願寺は全てを理解して、これから何を選択するのでしょうか。
出世だけが目的だと思っていたけどちゃんと人の気持ちも意図も組める優秀な人だと思います。
その優秀さを今後どこに向けるのか。せめて前向きであってほしいと思います。

<文藝春秋 2019.9>2019.11.13読了