死んでしまいたい、と思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(『健やかな論理』)。
家庭、仕事、夢、過去、現在、未来。どこに向かって立てば、生きることに対して後ろめたくなくいられるのだろう。(『流転』)。
あなたが見下してバカにしているものが、私の命を引き延ばしている。(『七分二十四秒めへ』)。
社会は変わるべきだけど、今の生活は変えられない。だから考えることをやめました。(『風が吹いたとて』)。
尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が映されているような気がした。(『そんなの痛いに決まってる』)。
性別、容姿、家庭環境。生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(『籤』)。
現代の声なき声を掬いとり、ほのかな光を灯す至高の傑作。
辛い・・・辛い・・・辛い・・・。
この作品はメンタルが強くないと読めないです^^;読んだ後にずしんと心にのしかかるような感じがしました。
どの作品も後味が悪くて救いがあるようなないような・・・。
その後味の悪さが現代社会の世相を表しているからとてもリアルで実際にこういう人たちがいそうでだから尚更ずしっときます。
SNSのつぶやきと自殺や事故のニュースを交互に記録していたり、契約社員として働いて突然切られてしまったり、夫婦関係と子供について悩んでいたり・・・。
最後のお話はひどすぎますね。子供に障害があるかもしれないと分かったとたん、生まれてもいないのに自分は不倫をしていて最低の男だ見たいなことを言って逃げるとか何なんだろうか・・・。
こういう作品は朝井さんだから書けるんだろうなと思うし、朝井さんしか書けないのではないかとも思ってしまいます。
平成を生きた人から生まれる心の闇。それがとてもうまく書かれていると思います。
辛いけど素晴らしい作品でした。
<幻冬舎 2019.10>2019.11.8読了
時事ネタも多く、まさに現代人の心の闇を描いているという感じですね。
とくに最後のお話はひどかったです。
朝井さん、エッセイはあんなに楽しいのに小説になるといっきに黒くなるんですよね・・・
でもまた読んでしまうと思いますが(^^;)