クジラアタマの王様
伊坂 幸太郎
NHK出版
2019-07-09


製菓会社に寄せられた一本のクレーム電話。広報部員・岸はその事後対応をすればよい…はずだった。訪ねてきた男の存在によって、岸の日常は思いもよらない事態へと一気に加速していく。不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。打ち勝つべき現実とは、いったい何か。巧みな仕掛けと、エンターテインメントの王道を貫いたストーリーによって、伊坂幸太郎の小説が新たな魅力を放つ。

前情報が無い状態で読み始めると、最初に登場する挿絵の意味が分からなくてどういうことだろうと思いながら読み進めていったのですが、分かり始めると面白かったです。こうつながっているのか!と分かるので。
現代と夢の話。夢の中の闘いで勝つと現実でも良い事が起き、闘いに負けると悪い事が起きる。
アイドルの小沢ヒジリや県議会議員の池野内は夢と現実が繋がっていると仮定して話を進めるけど、夢を覚えていない岸は何となく信じられない。途中、夢なのか現実なのか分からないような出来事があったり読んでいて突然夢の話になったりしてその混乱させる具合がたまらなかったです←
3人の様に夢と現実の関連性を考えながら読むよりも何も考えないで読んでいった方が読む側としては楽しめるかなと思いました。それでも、夢の中で多分出会ったからこそ製菓会社の社員とアイドルと政治家が出会って対等におしゃべりをするようになったんですからそれは何だか楽しそうだななんてのんきなことを思いました。
それにしても最初から最後までだと15年くらい経過しているわけですが夢の中でずっと戦い続けているのだと思うとちょっとぞっとします^^;
ハシビロコウ、何となくイメージは沸いたのですが実際に検索してみてこういう鳥だったかと思い出しました。画像でのハシビロコウと目が合って、ちょっと怖かったです←
最近の伊坂作品は悲しい結末になることが多くて今回もドキドキしていたのですが、帯の言葉の通りノンストップ活劇エンターテインメントな終わり方で^m^良かったです。皆さん個性的で魅力的な人たちでしたね。岸の奥さんも子どもも、栩木さんも息子さんも。あと最後に出てくる岸と行動を共にする2人も。
あとがきがありましたが、伊坂さんの郷土愛を改めて感じました。岸や小沢ヒジリの名前の由来が分かった時に思わずニヤリとしてしまいました。

<NHK出版 2019.7>2019.10.16読了