森があふれる
彩瀬 まる
河出書房新社
2019-08-08


作家の夫に小説の題材にされ続けた主婦の琉生はある日、植物の種を飲み発芽、広大な森と化す。夫婦の犠牲と呪いに立ち向かった傑作。

凄く難しい内容でした。ファンタジーのようであり、夫婦の問題はとても現実的であり…
小説家の埜渡徹也と妻の琉生を取り巻く人たち目線で書かれた連作短編のようなのですが軸にあるのはこの2人。琉生自身が発芽して部屋の中は森になっていく。周りは琉生が出ていったと噂するけど、実際は森の中で生きている。
私は結婚してないから夫婦というものは分かりません。でも、この作品で登場する夫婦たちはみんな夫婦である事に対してあきらめのようなものを感じました。惰性というかなんというか。若い白崎夫婦はまだ希望がある気がしたけど、他はどうだろう・・・。
徹也は琉生を好きではあると思う。でも、その好きというのは何だか他の人より薄っぺらい。プライドは誰よりも高くてどこかみんなを見下してる。私は決して好きになれる人種ではなかったけど。でも、琉生は好きなんですよね。そんな男だけど、好きなんですよね。
互いに寄り添い合うこと、互いに言葉を交わし合うこと。言わなくても分かるじゃなくて、言わなければ伝わらないということを言葉にして紡いでいったらまた変わっていくんじゃないかな。
白崎夫婦はまさにちゃんと話して希望が見えた気がしますし。
犠牲と呪いという言葉がぴったりな気がします。
最後は衝撃というか唐突というかびっくり。この夫婦が変わることはあるのでしょうか。

<河出書房新社 2019.8>2019.9.24読了