「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
作家の〈わたし〉は年上の友人・喜和子さんにそう提案され、帝国図書館の歴史をひもとく小説を書き始める。もし、図書館に心があったなら――資金難に悩まされながら必至に蔵書を増やし守ろうとする司書たち(のちに永井荷風の父となる久一郎もその一人)の悪戦苦闘を、読書に通ってくる樋口一葉の可憐な佇まいを、友との決別の場に図書館を選んだ宮沢賢治の哀しみを、関東大震災を、避けがたく迫ってくる戦争の気配を、どう見守ってきたのか。
日本で最初の図書館をめぐるエピソードを綴るいっぽう、わたしは、敗戦直後に上野で子供時代を過ごし「図書館に住んでるみたいなもんだったんだから」と言う喜和子さんの人生に隠された秘密をたどってゆくことになる。
喜和子さんの「元愛人」だという怒りっぽくて涙もろい大学教授や、下宿人だった元藝大生、行きつけだった古本屋などと共に思い出を語り合い、喜和子さんが少女の頃に一度だけ読んで探していたという幻の絵本「としょかんのこじ」を探すうち、帝国図書館と喜和子さんの物語はわたしの中で分かち難く結びついていく……。
知的好奇心とユーモアと、何より本への愛情にあふれる、すべての本好きに贈る物語!
タイトルに惹かれて手に取りました。
上野で出会った喜和子さん。喜和子さんが語る図書館の歴史。とても興味深かったです。
帝国図書館の歴史、なかなか波乱万丈でした。
今もそうですけど、図書館という施設はいつでもどこでも、真っ先に削減される候補になるんですね…
永井荷風の父親が図書館のためにこんなに奔走していたなんて知りませんでした。そしてその努力が生きている間に報われなかったのも辛かったです…。
喜和子さんの過去も辛く悲しいものでした。昔に結婚ってそんなものだったんですよね。
それでも上野で出会った時の喜和子さんはきっと自分らしく生きていたのだと思います。そういう時間があったことはとても幸せなことだったのではないかと思います。
そしてたくさんの有名作家さんが登場しました。
個人的に宮沢賢治が登場したのが嬉しかったです。そして「銀河鉄道の夜」について書かれていたのも良かった。カムパネルラとジョバンニは、賢治とトシと考えると何だか違和感を感じることがあったんですよね。2人がモデルなら兄弟に設定すればよかったのにと思っていたのですが、別にモデルがいたんですね。それがまた切なかったなぁ…
喜和子さんの事、喜和子さんと一緒にいた2人の男性の事、次第に真相が明らかになっていくのに読む手が止まりませんでした。でも、内容が重厚で時間がかかりましたが^^;
最後まで喜和子さんが願った通りになってきっと喜んでいますよね。
国立国会図書館の歴史も分かって面白かったです。
<文藝春秋 2019.5>2019.7.3読了
図書館の成り立ちの歴史というテーマがとても興味深く面白かったです。喜和子さんの人生とシンクロさせていく構成がさすが中島さん!と思いました。ふたりの男性の真相が明らかになる終盤は、私も読むの止められませんでしたね。
やっぱり中島さん好きだーって思いましたよ〜