アンソロジー 嘘と約束
アミの会(仮)
光文社
2019-04-17


破られない約束はない。ばれなければ嘘ではない。
これは、人生のスパイス。様々なアレンジで、お目に掛けます。
誰かのための約束。自分のための嘘。忘れてほしい約束。見破られても構わない嘘。祈るような約束。呪うような嘘。小さくて大切な約束。些細だけど切実な嘘。嘘みたいな約束。ほんとみたいな嘘。生きたいからする約束。消え去る前についた嘘。
多様多彩に趣向を凝らした、名手たちの全6編。

「自転車坂 松村比呂美」内容が私が今やってる仕事だったりして読んでいて辛いところもありましたが^^;自動車事故を起こしてしまった阿久津とぶつかってしまった自転車に乗っていた高校生の省吾の関係が素敵でした。怒りが無かったらこういう関係が生まれたりもするんですよね。
「パスタ君 松尾由美」パスタ君が嘘を付いていたことも気になるけど、トモキの両親の離婚原因も気になる。何となく夫婦間の不穏な感じは分かったけど…。お父さんの方が悪いみたいだけど、私もトモキとお父さんの会話を聞いていたらお父さんが悪い人とは思えない…と思ってしまうのは甘いのかな。
「ホテル・カイザリン 近藤史恵」鶴子の境遇は可哀相すぎるけど、だからと言ってやっていいわけがない。重罪だと思わなかったというのがなんだかんだでお嬢様育ちだということなのかな…と思ったり。と思ったら最後にまさかの展開に驚きました。流石すぎます。
「青は赤、金は緑 矢崎存美」このなぞなぞを作った雪穂ちゃんは聡明な子ですね。渚も真面目にずっと答えを探していました。良い人だってことは認められてたんじゃないかな。深理も少し予測して渚に猫を預けたんだと思います。少し切ないけど温かくて優しいお話でした。
「効き目の遅い薬 福田和代」感想から言うと望田がバカな男だったってことですよねー(身もふたもない)どうして惚れ薬が本物だと信じ込んじゃったのか…理系なのに。話す内容に困って女友達の話ばかりするとかそりゃ相手は怒るでしょうよ…。まあ、色々偶然が重なった悲しい事故…なのかなぁ。それにしてもどうして望田はあんなことをしたのか…アンクルの事が好きだと思ったのかな。どうなのかな。もう答えは決して出ないけど。
「いつかのみらい 大崎梢」結局誰が誰でどうなったんだと混乱しましたが^^;ミステリだけど温かい優しい物語でした。大崎さんの作品はやっぱり良いですね。晴美の境遇は今まで辛かっただろうけど、晴美を大切に思っていてくれていたおばさんと、いつか会えると良いなと思います。

<光文社 2019.4>2019.5.28読了