作家の人たち
倉知 淳
幻冬舎
2019-04-11


「押し売り作家」
しつこい持ち込みで、大手出版社の文芸編集者たちを辟易させている「倉ナントカ」という、冴えない中堅のミステリ作家。果たして、彼の正体は―—?
「夢の印税生活」
「くれぐれも会社は辞めないように」。苦節十年、念願の新人賞を受賞した川獺
はそう編集者に忠告されたが、「背水の陣」とあっさり会社を辞めてしまう。1年目の収入は846万円あまりだったが……。
「持ち込み歓迎」
大々的に持ち込み原稿募集のキャンペーンを張った地球出版。直接面談方式をとったのだが、24歳のフリーターから70過ぎの老人まで、誰も原稿を持たず、頭の中の“物語”を語り始め……。
「悪魔のささやき」
「明日の〆切を延ばしてほしい」(ベテラン作家)。「書評家に誉められたい」(中堅エンタメ作家)。「超売れっ子の原稿がもっとほしい」(中間小説誌の編集者)。悪魔は願いを叶えてくれたが……。
「らのべっ!」
隆盛を誇るライトノベル界でヒット連発の雷神文庫副編集長・祐天寺。矢継ぎ早にパッショネイトにスマートに流麗に仕事をこなす、彼のような編集者に業界は支えられているのだ。
「文学賞選考会」
築地の老舗料亭“泥田坊”で行われている植木賞選考会。“大家”と“売れっ子”揃いの5人の選考委員による選考は白熱した。2作に絞られたのは、文學春秒社と赤潮社の本。栄冠はどちらに……。
「遺作」
俺の本は売れない。もうどうにもならない。絶望し、飛び降り自殺を図った作家の身体が落下の途中、なぜか宙に止まった。彼の脳裏にみじめな人生が蘇った後、素晴らしい“新作”のプロットが浮かんだが……。

今作は倉知さん初の「ミステリじゃない」1冊だそうです。
最初このタイトルを拝見した時はアンソロジーかもしくはエッセイかと思いました^^;
倉知さんの作品で、内容もフィクションの小説でした。
でも内容は出版社業界や小説家さんのお話なのでリアルな部分もきっとたくさんあるんでしょうね。業界の裏側らしきものもたくさん垣間見えましたし、ファンタジーのような部分もあって面白かったです。
中でも私が好きだったのは「悪魔のささやき」ですね。ホラーまではいかないですけど、悪魔が何も引き換えにせずに願いをかなえてくれるというのは裏があるだろうなと思い、どういう展開になるのかドキドキしながら読みました。
「押し売り作家」や「夢の印税生活」はきっとリアルな部分もたくさんあるんだろうなぁと思って読みました。特に印税だけで生活するというのは大変なんだろうなぁと改めて思いましたね。
以前芥川賞作家の羽田さんが、テレビに出演する理由は自分が書いた小説が売れてほしいから宣伝のため。だから小説がプリントされているTシャツなどを着てテレビに出ているのに顔や名前は知られるが同じように小説が売れるわけではなかったとおっしゃっていたのが結構印象的で。そこまでしても売れないのかと本好きとしてはちょっと暗澹たる気持ちになりました。だからと言って私もバンバン買っているわけではないのでごめんなさいなのですが。
本に関するテレビ番組も減ってきていて、本という媒体が好きな身としてはもっともっと世に出てほしいのになぁと思います。

<幻冬舎 2019.4>2019.5.4読了