カムパネルラ版 銀河鉄道の夜
長野まゆみ
河出書房新社
2018-12-14


長野まゆみデビュー30年記念小説。表紙絵にも箔がキラキラ光る特殊仕様!
ジョバンニの旅は終わってもカムパネルラの旅は続く…あの「銀河鉄道の夜」を今夜、カムパネルラが語りなおします。
これまで、ジョバンニこそ作者の化身と考えられてきた物語を、もう一人の主人公であるカンパネルラが語りなおしたのがこの物語だ。
カムパネルラは、ケンタウリ祭の夜、友人ザネリを助けに川に入り、溺死したのだ。銀河鉄道の乗客がみなさみしいのは、ジョバンニを除いて、誰も片道切符しか持っていないからだ。
本作では、カムパネルラの目から、銀河鉄道の旅を辿り直す。すると、そこに現れるのは、これまで妹トシに隠れて見えてこなかった、賢治の秘められた恋だ。医師と結婚してアメリカに渡り、異国で早逝した恋人への強い思いがあったのだ。
いつしか物語には賢治自身もあらわれ、少年と対話する。メビウスの帯の、裏と表のように、けっして交わらない。でも、すぐ近くにいる存在。それがジョバンニとカムパネルラの旅なのだ。

タイトルに惹かれて手に取りました。長野さんの作品、久しぶりだなぁと思ったらアンソロジーで読んだのをのぞいたら9年振りでした^^;びっくり。
長野さんは今までも宮沢賢治にまつわるたくさんの物語を書かれていますよね。デビュー30周年記念作品としてはふさわしいのではないかと思いました。
でも、想像していたのと違いました。タイトルの通り銀河鉄道の夜の物語がカムパネルラの視点で書かれるのかと思ったらカムパネルラがその時の思い出を聞き手に語る…みたいな感じでした。しかも途中で中原中也が登場したりして。それはそれで面白かったです。2人の書かれた詩も考察ということで沢山引用されていました。
「カムパネルラの恋」はすなわち賢治の恋。
賢治が入院していた時に看護師さんを好きになって結婚したいと父親に言ったら反対されたというのは何となく覚えているんですけど、銀河鉄道の夜や春と修羅の中に賢治の恋が散りばめられていたんだなと考えたら何だか不思議です。若くして亡くなっているし人のために尽くしていた人だったので若干聖人君子的な扱いになっているような気がしなくもないんですけど、1人の男の人だったんですね。まあ「銀河鉄道の父」を読んでいる身としてはわがままなお坊ちゃまの顔もある事が分かりますけども^^
カムパネルラがジョバンニの事をどう思っていたのか、それをあくまで賢治はこう考えたのではないかという推察ではあるけど語られていたのも良かったです。
賢治は銀河鉄道の夜を完成させずに亡くなりましたけど、今まで何度も何度も書き直していて、この作品の中でも書かれていましたが、40歳、50歳、60歳と生きていたら、もっと違う物語になっていたのかもしれませんね。その物語を読んでみたかった気もします。

<河出書房新社 2018.12>H31.2.5読了