直木賞受賞第一作!
すれ違う大人の恋愛を繊細に描く、全六篇の作品集。
「あなたは知らない」……私を「きちんと」愛してくれる婚約者が帰ってくる前に、浅野さんと無理やり身体を離して自宅までタクシーでとばす夜明け。ただひたすらに「この人」が欲しいなんて、これまでの人生で経験したことがない。
「俺だけが知らない」……月に一、二回会う関係の瞳さんは、家に男の人がいる。絶対に俺を傷つけない、優しく笑うだけの彼女を前にすると、女の人はどれくらい浮気相手に優しいものなのか、思考がとまる。
同じ部屋で同じ時を過ごしていながら、絶望的なまでに違う二人の心をそれぞれの視点から描いた1対の作品。他の収録作品に「足跡」「蛇猫奇譚」「氷の夜に」「あなたの愛人の名前は」など。
タイトルが強烈だったので、ドロドロなお話なのかと思ったのですが、短編集だったんですね。そして6編がどこか繋がっているのが良かったです。
「足跡」同じ団地の幼馴染と結婚した主人公。どこか満たされない気持ちでいる中友人から既婚者のみが行くことが出来る治療院があると紹介を受け真白という男性と出会う。この2人の関係は不倫ではないと思う。むしろ真白という人物は夫婦間を上手くいかせるためのきっかけというか…。難しいところですけど。それでもこの夫婦はこれがきっかけで更に夫婦愛が育まれそうで安心しました。可愛らしい夫婦でした。
「蛇猫奇譚」チータという猫目線で描かれる飼い主夫婦の話。新婚夫婦に子供が出来たのですが、母であるハルちゃんの様子がおかしくなっていきます。
「あなたは知らない」「俺だけが知らない」結論としてどっちもどっちって思ってしまう私はダメなのかな^^;最後は何となくそうなるんだろうなと思ったけど瞳さんが頑張って創り上げたものを「趣味」じゃなくて「仕事」としてくれる人の元に行くのが1番だったんじゃないかなと思います。
「氷の夜に」私はこの物語が1番好きです。お互いを想い合う優しさ、愛しさ、不器用さ。それがたまらなく愛おしかったです。30代後半で自分以外の人に好きな人がバレバレなんて可愛すぎやしませんか^m^私もこんな人に愛されたいなー。
「あなたの愛人の名前は」フリーターとニートを繰り返す「私」が半ば強引にマカオへ旅することになり、そこで家族について回想していきます。両親の問題については同情するしかないけど、それでもマカオに旅したことによって明らかに変化が生まれているのが分かって面白かったです。
帰国してすぐの会話が良いですね。何だか良い展開が生まれそうな予感を募らせて終わる感じが良かったです。
<集英社 2018.12>H31.1.8読了