おもかげ
浅田 次郎
毎日新聞出版
2017-11-30


「忘れなければ、生きていけなかった」浅田文学の新たなる傑作、誕生――。定年の日に倒れた男の〈幸福〉とは。心揺さぶる、愛と真実の物語。商社マンとして定年を迎えた竹脇正一は、送別会の帰りに地下鉄の車内で倒れ、集中治療室に運びこまれた。今や社長となった同期の嘆き、妻や娘婿の心配、幼なじみらの思いをよそに、竹脇の意識は戻らない。一方で、竹脇本人はベッドに横たわる自分の体を横目に、奇妙な体験を重ねていた。やがて、自らの過去を彷徨う竹脇の目に映ったものは――。「同じ教室に、同じアルバイトの中に、同じ職場に、同じ地下鉄で通勤していた人の中に、彼はいたのだと思う」(浅田次郎)

いやー…胸がいっぱいになりました。カッちゃんの言葉を借りるならまさに「できすぎた」人生だったと思います。
そんなにうまくいくか…。じゃなくて、本当に努力して努力してものにした人生なんですよね。「頑張った」という言葉だけじゃ足りないくらい。親を知らず、養護施設で育った正一。結婚して節子という伴侶を得て、茜という娘も生まれた。65年の人生の中でいろんな岐路に立たされつつもブレずに生き抜いた人なのかなと思いました。
融通が利かなくて人当たりが良いわけではないと言いつつも送別会では多くの人が訪れ、また、倒れた後もひっきりなしに見舞客がやってくる。人望があったんだと思います。
娘婿が、おやじ、おふくろって呼んでいるのが良いなと思いました。同じように親に恵まれなかった武志が本当に信頼しているのがふたりの人柄の良さを感じました。
正一が出会った女性たち。私は最初に登場した2人は同一人物なんじゃないかなーと思っていたのですが、もっと深いカラクリがありましたねー。こうなったらカッちゃんとの出会いもすべて必然な気がします。正一の出生の秘密、避けてきた過去、そして真実。全てを理解した上でまた生まれ、生きていってほしいです。

<毎日新聞出版 2017.11>H30.12.20読了