密室がある。糸を使って外から鍵を閉めたのだ。これが、トリックです。本来ネタバレ厳禁の作中トリックを先に公開してミステリを書くという難題に、超豪華作家陣が挑戦! 鍵と糸――同じトリックから誕生したのは、びっくりするほど多彩多様な作品たち。日常の謎あり、驚愕のどんでん返しあり、あたたかな感涙あり、胸を締め付ける切なさあり……。5人の犯人が鍵をかけて隠した5つの“秘密”を解き明かす、競作アンソロジー。

「このトリックの問題点 似鳥鶏」似鳥さんが初めに密室というトリックの内容は同じと書かれていて、そこから5人の作家さんによる5つの物語が描かれています。似鳥さんはミス研の部長の家から消えたミステリの原稿の謎。あらかじめ犯人が分かっている状態で物語は進んでいくのですが少し意外な展開でした。動機は浅はかというかバカだなぁ…みたいな感じですかね^^;
「大叔母のこと 友井羊」あまり接点のなかった大叔母。ただ、親戚はみんな私に似ていると言っていた。大叔母が長い間悔やんでいた出来事。亡くなった後でもちゃんと解決できて良かったです。良いラストでした。
「神秘の彼女 彩瀬まる」SNSで好きになった名前も顔も知らない女性を探す話。その女性の正体は今時な感じでしたけど、面白かった。密室トリックが使われたものに関してはあれですね、気の持ちようってことなのかな。
「薄着の女 芦沢央」主人公の駆け出しの女優が犯人であることは最初から分かって話は進んでいきますが、オチに笑いました。
「世界にただひとりのサンタクロース 島田荘司」このお話に登場する御手洗さんはシリーズで登場する方ですよね?私は島田さんの作品を失礼ながら未読で、でもこの名字は聞いたことがありました。時代がこんなに昔だったんですね…。お話はもうただただ切なかったです。事件の真相は分かったけど、みんな幸せになってくれれば良いなと思って読み終えました。

<新潮社 2018.9>H30.12.14読了