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先週末、東京へ行く機会がありそのタイミングでこちらの舞台を観られることが分かり、急いでチケットを購入しました。買えてよかった!観たいと思っていた舞台を観ることができて良かったです。
円谷さんが亡くなられて、今年で50年だったんですね。生きていたら77歳。現在の後期高齢の皆さんは若くて元気です。その中に円谷さんがいても全然おかしくありません。それなのにいない…。
円谷さんに関しては多少は知っているつもりでした。
それでもやはり舞台となると円谷さんを始め畠野コーチや君原さんや高橋コーチなど周りを取り巻く人たちの感情の機微まで垣間見えた気がして、今まで知っていたことなんてほんの一握りだったんだなと思います。
円谷さんが東京オリンピックで銅メダルを獲得したことは割と想定外の事だったことは初めて知りました。期待されていたのはむしろ君原さんの方だったんですね。
冒頭の東京オリンピック前の練習での畠野コーチと円谷さんの会話は本当に素朴で純粋で少しおのぼりさんで。それがとても可愛かったです。ちゃんと練習しつつ、畠野コーチと国民のために走ると言いつつも、やっぱり本命はアベベですかねー。一緒に走れるなんてすごいですねー。なんて言う会話が本当に可愛かった。当時はマラソンを始めて1年ちょっとだったんですね。どちらかというとトラック選手だったということも知りませんでした。
そして東京オリンピック男子マラソンがスタートし、本命と言われた君原さんが8位、円谷さんが番狂わせの3位で銅メダル。この結果が2人の人生の明暗を分けたんですね。
メダルを獲ったまでは良かった。畠野コーチと抱き合い喜んでいた円谷さん。本当に良かったと思いました。
一方で君原さんは実業団に退部届を提出し引退を決意します。
円谷さんは「自分は民衆と畠野コーチのお陰でメダルが獲れた。マラソンは一人では走れない」といい、
君原さんは「自分は24時間ずっとマラソンの事を考えている。コーチと過ごす時間はほんの数時間。自分は一人で走っている。失敗も成功も自分の責任」といいます。
2人は本当に正反対でした。そして走る環境がその正反対の意見とも繋がっていきます。
知ってはいました。聴いてはいました。それでも本当にそんなことが起きたのでしょうか?本当に信じられません。
円谷さんはオリンピック後ヒーロー扱いされ、次こそは金メダルともてはやされ、しばらく練習をすることができませんでした。でも、講演会などに呼ばれて自分の仕事をちゃんとこなしていきます。そんな中、円谷さんは人生の伴侶となる人を見つけ、結婚しようと決意します。畠野コーチは陸上選手は結婚していた方が良い。自分でもコーチでも気づかないことを気づいてくれる場合もある。健康管理をしてくれる人も必要。そう言って結婚を歓迎してくれました。それなのに、円谷さんが所属する自衛隊体育学校の上官は結婚を認めず、メキシコシティオリンピックで金メダルを獲ることに専念するように通告します。そして結婚を認めるように意見をした畠野コーチを北海道へ左遷させ、円谷さんは唯一無二だった健康管理をし、陸上メニューを考えてくれる大切な人を失います。そして代わりに来たコーチはハンドボールのコーチ…おかしいですよね。オリンピックで金メダルを獲るように言っているのに円谷さんに与えている環境はどんどん劣悪になって行っています。それでメダルを獲れということがおかしい。この記事を書いているだけでも憤りを感じます。そして円谷さんは信頼できる人を実業団によって、国によって奪われて行き、孤独になっていきます。
一方で君原さんは陸上から離れるも1通のファンレターにより走ることの楽しさを思い出し、再び走り始めます。そして実業団に復帰し、伴侶を得て記録も伸びていきます。
「一人では走れない」といった円谷さんが孤独になっていき、「一人で走るもの」といった君原さんが人に助けられ成長していく。なんという皮肉でしょうか。
国はメダルという名誉に憑りつかれてしまったんですね。戦後とはいえ一国民の幸せを奪う権利なんて企業にも国にもありません。それなのに、すべてを奪われてしまった。
もしも畠野コーチが傍にいてくれたら、もしも結婚が認められていたら。
ここまで身体だって心だって壊れたりしなかったはずです。それが辛い。
真面目で純粋で素朴な円谷さんには、純粋にただ楽しく走ってほしかったです。畠野コーチとわちゃわちゃしながら、記録を伸ばして「やったー!」って抱き合って素直に喜び合う、そんな環境で。
実業団に所属しているから、そればかりではやっていけないとは思うけど…それでも。
辛くて悲しい物語だったけど、笑えるところもたくさんありました。
特に和田さんと高橋さんが素晴らしかったですね。畠野コーチと円谷さんがわちゃわちゃしているところは千穐楽だからかいつも以上に気合が入っていたらしく、円谷さん役の宮崎さんが小さく「気合が凄い…」とつぶやいていました。そして和田さんが「最後だからな」なんて言っているのも何だか舞台慣れしている感じがよかったです。
最後に。
「光」とは何だったのでしょうか…。
円谷さんにとっての「光」とは。君原さんにとっての「光」とは。
君原さんにとっての「光」とは、円谷さんのことかな…と思います。
メキシコシティオリンピックでの銀メダル。マラソン人生で1度も後ろを振り返ったことなどなかったのに、この大舞台で振り返り、そして振り切り、銀メダルを獲得した。ご本人も円谷さんが伝えてくれたのではないかと語っているそうですね。
それでは円谷さんにとっての「光」とは。君原さんのこと…の様にも思いますが、何だか違うような気もします。今でもその答えが分からず、考えているところです。
円谷さんはどこかで楽しく走っているのでしょうか。今の男子マラソンの選手たちの活躍を、どう思っているのでしょうか。所属されていた自衛隊体育学校は、未だに実業団があり、後輩たちがたくさん所属しています。私が応援している好きな選手もいます。円谷さんは今の実業団の後輩たちの事をどう思っているのでしょうか。
私が考えるのもおこがましいんですけどね^^;
本当に本当に観て良かったです。ちゃんと知ることができて良かったです。
絶対に忘れちゃいけないです。2020年に再び東京でオリンピックが開催されます。
たくさんの日本人が日の丸を背負って闘うことになると思いますが、こういう歴史があったことを、決して忘れてはいけないと思いました。
ありがとうございました!