不在不在
著者:彩瀬 まる
KADOKAWA(2018-06-29)
販売元:Amazon.co.jp

長らく疎遠だった父が、死んだ。「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」。不可解な遺言に、娘の明日香は戸惑いを覚えたが、医師であった父が最期まで守っていた洋館を、兄に代わり受け継ぐことを決めた。25年ぶりに足を踏み入れた錦野医院には、自分の知らない父の痕跡が鏤められていた。恋人の冬馬と共に家財道具の処分を始めた明日香だったが、整理が進むに連れ、漫画家の仕事がぎくしゃくし始め、さらに俳優である冬馬との間にもすれ違いが生じるようになる。次々現れる奇妙な遺物に翻弄される明日香の目の前に、父と自分の娘と暮らしていたという女・妃美子が現れて――。愛情のなくなった家族や恋人、その次に訪れる関係性とは。気鋭の著者が、愛による呪縛と、愛に囚われない生き方とを探る。喪失と再生、野心的長篇小説!

あらすじから、平穏だった生活に父の死と、父と暮らしていたという女性が現れたことでドロドロする展開なのかなと思ったら違いました^^;安易すぎる。
明日香は屋敷を引き継ぐことになり、屋敷の掃除をしつつ回想していきます。
始めは特に不穏さを感じなかったけど、だんだん明日香が何かにイラついているような感じが伝わってきました。誰に対してもイライラしていて自分の思い通りにいかないと気が済まないような。
若い編集者に対しての態度も何だかなぁ。売れっ子なんだとは思うけど上からな感じが嫌だし。冬馬との関係も最初は普通に可愛いカップルだなと思っていたけど、だんだん私が養ってやっているんだぞ感が露骨になってきていて、嫌になってきたし。冬馬の方が大人でしたね。
それでも屋敷を片付けていくことで情緒不安定になりつつも自分と向き合えたのかなぁ。
妃美子や佳蓮との関係も良い意味で意外な展開でした。
明日香と冬馬はもう恋人としては戻らないかもしれないけど良い同志としてなら、良い関係をこれから築いていけるんじゃないかなと思いました。
それにしても死んだ父親が何を考えていたのか、結局のところは分からなかった気がするなぁ。

<KADOKAWA 2018.6>H30.7.18読了