ファーストラヴファーストラヴ
著者:島本 理生
文藝春秋(2018-05-31)
販売元:Amazon.co.jp

夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。

面白かったです。内容的にこの表現はふさわしくないかもしれないけど、面白かった。引き込まれて続きが気になって一気読みでした。事件の全貌を明らかにするために、臨床心理士の由紀と弁護士の迦葉が環菜の抱える闇に迫っていきます。
娘が父親を殺した。事実はそうなのかもしれない。それでも環菜が少しずつ過去を語り出し、周りの人たちに話を聞き、分かってきた真相。
環菜が無罪であるとは言いません。でも、この事件は環菜だけが起こした事件とは思えませんでした。幼少期から抱えていた想いが可哀想すぎました。子供でも心を大人にしなければならなかった、演じなければならなかった少女が切なくて。生きていくためには仕方がなかったのかなとも思います。
そして由紀の過去。迦葉との過去。2人の関係も兄弟のようでしたけど、それを丸ごと包み込んでいる我聞さんも素敵すぎました。
環菜も、最後にちゃんと自分を出すことが出来て良かったです。

<文芸春秋 2018.5>H30.6.27読了